久しぶりに放送大学のシステムWAKABAを覗いてみると、10月の17,18日で受講した面接授業「厳島神社史の不思議探訪」の仮判定に「合」マークがついていた。これで、自専攻の専門科目は残り3単位。でも放送授業の方は、自専攻の専門科目を履修していないので4回目の卒業は来年度以降となる。今更あまり卒業にこだわる必要もないので、のんびりと興味の赴くままに、面白そうなものがあれば履修していくつもりである。それより、山になっている積読本の方をなんとかしないと・・・。
![]() | 悪魔の降誕祭 (角川文庫) |
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角川書店 |
横溝正史による、金田一耕助シリーズの短編3作を収録した「悪魔の降誕祭」(角川文庫)。収められている作品は以下の通りだ。
○「悪魔の降誕祭」
殺人が起こるかも知れないと相談に来た女が、金田一の事務者で毒殺される。女は志賀洋子といい、ジャズシンガー関口たまきのマネージャーだった。金田一事務所のカレンダーが、降誕祭である12月25日まで引きちぎられており、この日に次の事件が起こることが暗示されていた。その暗示の通りたまきの夫の服部徹也が刺殺された。ところが関係者には全員アリバイがある。いったい誰が犯人なのか。
ヒロインが売れっ子のジャズシンガーだったりと、全体的には昭和のノスタルジックな香りが漂う。この雰囲気が横溝ファンにはたまらない。犯人は、金田一の思惑に乗って馬脚を現してしまったが、これは、金田一の手柄というよりは自滅に近いだろう。しかし犯人の異常さはいかにも横溝ワールドらしい。
○「女怪」
金田一の記録係という「先生」が、語り手となった作品だ。二人の関係は、内田康夫の浅見光彦シリーズにおける内田センセと光彦の関係に似ている。金田一が惚れた女の話なのだが、内容は男たちに翻弄され追い詰められた哀しい女の逆襲と言ったところ。仕組まれていたどんでん返しとも言える真相には驚く。もちろん金田一の恋は成就しない。
○「霧の山荘」
金田一が静養していた高原で巻き込まれた事件。耕助の許を、江馬洋子という美女が訪ねてくる。伯母で映画スターだった紅葉照子が、昔の未解決事件のことで相談があるというのだ。ところがその照子が殺害されてしまう。耕助が解き明かした真相は驚くべきものだった。狼が来たと悪戯を繰り返していたら、本当に狼が来てしまったというようなところか。
どの作品にも、犯罪に「女」が絡んでいる。1作目と3作目は女の怖さ、2作目は女の哀しさが感じられ、全体として女の2面性というものが描かれたミステリーということなのだろう。それにしても青酸カリが簡単に殺人や自殺の手段として使われているが、戦後のこの時期はそんなに簡単に入手できたのだろうか。
☆☆☆☆
※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。
(追伸)
このレビュー、かなり昔に書いて、他の本との兼ね合いでアップが後回しになったのだが(掲載は原則2日に1冊と決めているので)、内容がさっぱり思い出せない(笑)。まあ、再読の楽しみがあると思えば良いのだが、自分の記憶力の貧弱さには愕然としてしまう。