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文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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書評:連続殺人鬼カエル男

2015-10-27 19:26:21 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
連続殺人鬼 カエル男 (宝島社文庫)
クリエーター情報なし
宝島社


 いかにもギャグ小説然としたタイトルと表紙イラストにすっかり騙された。「連続殺人鬼カエル男」(中山七里:宝島社文庫)だ。まさかこんな、すごい内容だったとは。

 舞台は埼玉県飯能市。この街で猟期的な殺人事件が続く。なにしろ、被害者は、フックで吊るされたり、車のトランクに入れられたままプレスで押しつぶされたり、解剖されたり、火あぶりにされたり。アイウエオ順に犠牲となった人々は、犯人からカエルに見立てられ、この事件は、市をパニックに陥れる。そして、連続殺人鬼は、「カエル男」と呼ばれた。

 この作品のテーマは、刑法第39条、すなわち「心神喪失者の行為は、罰しない」ということに対しての問題提起だろう。殺人をしても責任能力がないと判断されれば、今の日本の法律では無罪になってしまう。しかしそれでは、被害者の遺族は納得できない。この作品は、そこに焦点を当てて、ミステリーという体裁を借り、それでいいのかと言っているように見える。

 本作は、かなりタチの悪い作品だ。叙述トリックで、読者をミスリードさせる罠が仕掛けられているうえ、解決したと思われた事件の結論がどんどんひっくり返っていくのだから。イヤミスという言葉があるが、この作品は、事件が、真相に近づけば近づくほど、どんどん嫌な気分が増大してくる。間違いなくイヤミスの代表作と言えるだろう。

☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ、「風竜胆の書評」の写です。

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