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文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

銭形平次捕物控 022 名馬罪あり

2023-09-01 11:13:54 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 銭形平次と言えば、その卓越した推理力で難事件をバッサバッサと解決していく名探偵というイメージがあるのだが、どうも碁だけは、下手の横好きのようで、子分の八五郎にも負けるくらいなのである。八五郎に碁の才能があるかどうかはよく分からないが、

「・・・手前などは、だらしのあるのは碁だけだらう」

と、一応平次に言わせている。

 ある日この二人は碁で、もし平次が負けたら1日親分子分を交代するという賭けをした。そんな平次のところに客が来た。十八九の武家風の娘で8000石の大身の旗本、大場石見の用人相澤半之丞の娘だという。

 大場家には、家宝ともいえる東照宮からの御墨附があった。しかし房州にある領地で苛斂誅求の訴えがあったため、一旦若年寄預かりとなり長期間留め置かれたが、この度返却されることになった。それを受取りに行ったのが、相澤半之丞という訳である。タイトルに「名馬」とあるが、この時に乗ったのが、大の馬好きである主人・大場石見が貸してくれた東雲という名馬である。ところが、相澤半之丞は生まれつきの馬嫌い。見事に落馬したうえ、大事な御墨附の入った文箱もいつの間にかすり替わっていた。このままでは大場家は改易になる。実は大場石見は、本来の大場家当主ではなく、本来の当主の後見人だったはずが、家督を譲らなかった。そして悪政で領民から恨みを買っていた。

 平次はこの事件を見事に解決して、大場家の家督を本来の当主に戻し、石見を失脚させる。平次の魅力は、今の刑事ドラマのように何が何でも犯人をつかまえるようなものではなく、その背景まで考慮して、落ち着くところに落ち着かせるというところだろう。もちろんこの話でも平次は銭を投げない。それにしても八五郎と1日親分・子分を交代したはずが、とてもそうとは思えないところがなんとも面白い。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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天久鷹央の推理カルテⅢ: 密室のパラノイア

2023-08-26 16:22:46 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 現役の医師による医療ミステリーの第3弾。収録されているのは中短編の3つの話。ヒロインは天久鷹央という天才的な診断技術を持つ女医。天医会総合病院副院長兼統括診断部長である。本人曰く27歳のレディらしい。ただものすごく不器用かつ人付き合いが大の苦手なので、彼女をサポートしてくれる人材が不可欠。その役割をするのが、純正医大から派遣されている小鳥遊優(ちなみに慎重180㎝のごっつい男)。鷹央は傍若無人だが、姉の真鶴には頭が上がらない。

 この巻に収録されているのは3つの中短編。もっともどこまでが短編でどこからが中編になるのかはよく分からない。調べてみるとおおよその目安はあるが、色々と変動があり、明確なものはないらしい。そこで私の感覚で分けると2つの短編と1つの中編ということだろうか。収められているのは次の3つ。「閃光の中へ」、「拒絶する肌」、「密室で溺れる男」である。このうち3つ目の作品が334頁で構成された本書の半分以上を占めており、最初の2つが70頁程度である。

〇閃光の中へ
 線路に飛び込んで自殺を図ったとされる木村真冬は「呪いの動画」を双子の姉の真夏と視ていた。

〇拒絶する肌
 銀行に勤める岡崎雅恵は、女子校育ち。男性に触れられると体に異常が出るという。

〇密室で溺れる男
 鷹央と小鳥遊のコンビが解消の危機に。その原因が小鳥遊の先輩になる桑田清司が殺人の最有力容疑者となったので診療ができなくなり、その代わりに小鳥遊が純正医大に呼び戻されることになったからだ。事件は、清司の鼻つまみ者の兄・大樹が密室で溺死したというもの。その部屋には水気は一切なかった。

 いずれも、著者の医学知識を活用して、うまく医学ミステリーに落とし込んでいる。あまり、その方面に詳しくない人でも、こういった可能性もあることを知っておけば、レアケースと言えども、万が一の場合には役立つのではないだろうか。最初の二つは、鷹央の研修医時代の指導医だった精神科部長の黒田女史が関わっている。鷹央は研修医時代に、歯に衣着せぬ勢いで、黒田の間違いを正したことから、二人の関係は最悪のようだ。しかし、患者の目線で視れば、誰かのメンツより、正しい診断をしてくれる方が大切だろう。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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銭形平次捕物控 179 お登世の恋人

2023-08-16 09:38:47 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 この作品も、銭形平次シリーズのひとつだ。ただし、テレビドラマのように銭は投げない。いや銭を投げるときもあるのだが、圧倒的に投げない作品の方が多いのである。この作品でも銭は投げていない。ドラマでは銭を投げる方に注意が行っているが。むしろ前面に出ているのは平次の推理力。そうこの作品は江戸時代を舞台とした、名探偵の物語なのだ。それに、平次は貧乏なので、銭を投げることに抵抗があるんだろう(笑)

 さて、事件の方だが、本所御船蔵前で老舗の煙草問屋を営んでいる常陸屋久左衛門が、自分の部屋で不思議な殺され方をする。この辺りは平次の縄張りではないが、石原の利助親分の娘であるお品に要請されて乗り出したという訳だ。平次と利助の間にはいろいろあったようだが、結構お品に頼まれて乗り出すことも多い。平次は女性に甘いのか? ちなみに、常陸屋はその名の通り、水戸藩御用達の煙草問屋である。

 夜は、常陸屋では厳重な戸締りをしているので、怪しいのは内部の人間である。お登世というのは、二十歳前後の常陸屋の可愛らしい一人娘だ。果たしてそのお登世の恋人が、同事件に絡んでくるのか。その人物とはいったい誰か。そして、事件の真相はいかに。

 平次は、これらの謎を見事に解き明かすのだが、驚くのは八五郎の強さ。テレビドラマの林家珍平さん(初めの頃は佐々十郎さんがやっていたようだが)のイメージからは、とても強そうには見えないのだが、この作品にこういう記述がある。犯人に攫われたお登世と、それを助けようとしたお登世の恋人が犯人と戦っている場面だ。

幸ひ驅け付けた八五郎が間に合つて、その猛烈な戰鬪力を役立たせ



 要するにテレビドラマのイメージから、原作を判断してはいけないということだろう。銭をあまり投げないこととか、八五郎は実は強かったといったような、ドラマと原作の違いを楽しむのも面白いと思う。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ホーンテッド・キャンパス

2023-08-08 10:10:31 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 このシリーズは、これまで21巻ほど発行され、映画化やコミカライズも行われているという人気作品だ。これはその1巻目にあたる作品。ヒロインは灘こよみという、整いすぎるほどの容姿の美少女。あえて難点を挙げれば、目が悪いためいつも眉間にしわが寄っているというところだろうか。このシリーズの売り上げには、表紙イラストのこよみの可愛らしさもかなり寄与しているように思える。ただし、さすがにイラストのこよみには眉間のしわは描かれてはいないのだが。

 この物語は、彼女の高校時代の先輩に当たる八神森司とこよみとのラブコメを縦糸に、心霊オカルト事件を横糸にして織りなされる心霊オカルトラブコメとでも呼べば良いのだろうか。舞台は、名前からしていかにも北国らしい雪越大学。この大学、モデルは作者の出身地にある新潟大学だろうか。シリーズの中で、医歯学系のキャンパスが分かれているような設定だったことからもそれが伺える。

 1浪したために、大学ではこよみと同級生になった森司(ただしこよみは高校時代からの習慣で、相変わらず八神先輩と呼んでいる)は、こよみが所属しているオカルト研究会(通称オカ研)に入ることになる。このオカ研に、学生たちがオカルティックな話を持ち込んできて、これをオカ研のみんなが解決していくというエピソードを積み重ねながら、森司とこよみが次第にいい関係になっていくというのが基本的な内容だ。

 傍から見ていると、こよみは明らかに森司に好意を持っているのだが、草食系で自分に自信のない森司は、頑なまでに自分の片思いだと思い込んでいる。このちぐはぐさが作品の面白さのひとつでもある。

 オカ研部員には霊を祓う力はない。ただ「視える」だけなのだ。おまけに、オカ研のメンバー5名中、「視える人」は、森司ともうひとり黒沼泉水の二人だけ。それではどうやって霊の起こした事件を解決できるのか。彼らは霊の話を聞いて、霊がこの世にひっかかっている原因を解決していくのである。

 この第1巻に収録されている5つのエピソードをざっと紹介しよう。①引っ越しても、引っ越しても壁に若い女の顔が浮かんでくるという男子学生の話、②繰り返し同じ夢を見るという男子学生の話、③女子学生二人が住み始めた格安のヤバい物件で起きる怪奇現象の話、④自分と同じ容姿の人間を見るという男子学生の話、⑤中学生の妹が、友人自殺以来引きこもりになっているという話といったようなものだ。いずれも、人間の「思い」や「妄念」の哀しさ、怖さを描き出しているような話だ。なかには、怖いのは霊ではなく人間だというようなものも見受けられる。

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

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銭形平次捕物控 014 たぬき囃子

2023-07-16 11:58:31 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 江戸では不思議な泥棒が出没していた。大家の雨戸を、切破って盗みを働くのだ。この盗人、とうとう6件目で殺人を犯した。被害者は、本所番場町の両替、井筒屋清兵衛。しかし本所は石原の利助という岡っ引きの縄張り。最初平次は遠慮していたのだが、利助の一人娘のお品の頼みで、事件に乗り出すことになる。現場を見て平次は、番頭に、雨戸に大穴が鋸であけられているのに、誰も気が付かなかったのかと問うと、昨夜は狸囃子がひどくてなかなか寝付けなかったからとの答え。
 
 本所七不思議といわれるものがあり、狸囃子もその一つだ。狸囃子というのは、太鼓と笛で馬鹿囃子そっくりだが、あちらと思えばこちらから聞こえ、遠いような、近いような、どこから聞こえるのかはっきりしない現象らしい。

 しかし平次、石原の利助の子分10人ばかり狩り集めて、狸狩りをやっているが、引き揚げるときに、一人1分渡している。1分といえば1/4両である。10人いれば2.5両になる。庶民は一生小判をみることがなかったことも多いらしいから、結構な金額だ。そもそも平次は貧乏暮らしのはず。よくそんな金があったものだ。きっとお静さんの着物が何枚も質屋に・・(以下略)・・・。

 狸囃子の謎を平次は解いて事件を解決するのだが、もちろん本物の狸がやっているわけではない。平次は狸囃子の謎を解き明かして、犯人を特定する。さすがは平次である。

 この話でも平次のトレードマークによる投げ銭の場面は出てこない。利助の子分に渡した金が結構でかかったので、ビタ銭といえど節約したのかな?

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

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銭形平次捕物控 180 罠

2023-06-26 14:05:22 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 銭形平次というと、テレビドラマでは毎回投げ銭をしているので、いつも銭を投げているイメージがあるが、原作を読んでみると、たまに投げ銭をすることもあるが、多くの話では、銭は投げていない。この話でも、投げ銭の場面はない。

 さて事件の方だが、六本木の大黒屋清兵衛のせがれ清五郎が殺された。大黒屋清兵衛というのは、香具師(やし)から身を起こし、今では地主や高利貸を営んでおり、土地の顔役になっている男だ。

 この大黒屋清兵衛のところに、恩や義理のある香具師仲間の大親分星野屋駒次郎の忘れ形見のお北、お吉という二人の娘が掛り人として暮らしていた。本来なら、この二人の娘はお客様扱いで大切にされるはずだが、姉のお北が美人だったため、清兵衛の女房のお杉が嫉妬し、今では女中以下の待遇をされているという。

 とことで清五郎の殺され方だが、二人の寝ている二階の窓の下で、修復用の足場の真下で、胴から首へ長脇差で貫かれていたという。

 平次は、このままでは、姉のお北が大黒屋の家のあたりを縄張りにしている中ノ橋の金太という岡っ引きに縛られてしまうという妹のお吉の訴えで事件を調べ始めるのだが、いつも通り腰が重い。平次は岡っ引きのくせにかなりの出不精で、なかなか腰を上げないのだ。しかし、可愛らしい娘の訴えに思い腰を上げたという訳である。

 ところで銭形平次で迷探偵役というのは、テレビドラマではもっぱら、三ノ輪の万七の役割だが、この話では、中ノ橋の金太というわけである。

 そうこうしているうちに、大黒屋清兵衛も殺されるのだが、平次は、見事に事件の謎を解き明かす。平次の特徴は、「真犯人はおまえだ」とか「真犯人を捕まえるのが俺の仕事だ」とかいうような、いかにも今の刑事ものの登場人物が言いそうなセリフを言わないことだろう。どこまでやるかは彼なりの美意識があるようで、この作品でも、ほどほどのところで事件から手を引いている。刑事ものやミステリーの多くでは、たとえどんな訳があろうと真犯人を捕まえるのだが、平次は事件の真相は解き明かすものの、事情次第では見逃したりする。これも平次の魅力だろう。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

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甦る殺人者: 天久鷹央の事件カルテ

2023-05-27 08:55:36 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 現役の医師でもある著者による医療ミステリー。天医会総合病院副院長兼統括診断部長である天久鷹央が名探偵役を務めている。ちなみに鷹央は、中学生にも見えるくらいの童顔だが、本人は立派な大人のレディだと言っている。御年28歳のアラサー女子なのだが、それを指摘すると怒ること怒ること(笑)。

 今回の事件だが若い女性を狙う連続絞殺魔事件だ。4年前に犯行を繰り返していたが、その後なりを潜め、最近また犯行を繰り返すようになった。犯行現場に残されたDNAから同一犯人であると推測された。

 犯行現場から採取されたDNAにより、辻章介(旧姓春日)と言う男の兄弟であることが推定された。しかし、彼の唯一の兄弟は4年前に亡くなった春日広大だけ。母親が変な新興宗教に凝っていて、教祖は死者を蘇らせることができるという。そして、他に兄弟がいたという記録は全く見つからない。果たして、辻には、記録に残っていない兄弟がいるのか? それとも本当に死者が蘇ったのか?

 このシリーズ、著者の強みを活かして、病理的な種明かしがつきものだ。かなり特殊な病気もあり、恐らく読者も初めて聞いたというものも多いだろうと思う。かなり医学に詳しくないと推理は難しいのではないだろうか。だからミステリーを読んで、謎解きを趣味にしている人にはちょっとつらいかもしれない。でも、こういう病気もあるんだと知れて、なかなか興味深い。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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幻影の手術室: 天久鷹央の事件カルテ

2023-05-09 11:53:07 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 現役の医師でもある著者の天久鷹央シリーズの一つ。この巻では、小鳥遊の天敵?の研修医、鴻ノ池舞がもう少しで逮捕されるところだった。

 舞が清話総合病院で虫垂炎の手術をしたのだ。なぜ、舞が自分が働いている天医会総合病院にかからなかったかというと、もし婦人科系の病気だったときに、知り合いに婦人科の診察を受けるのが恥ずかしかったらしい。天真爛漫、傍若無人に見える舞だが、そういった感情はあるようだ。普通は虫垂炎の手術は、日本では普通腰椎麻酔で行われるが、穿孔して、腹腔内が汚染されている可能性もあるということで全身麻酔で行われた。

 ところが、その手術が行われた第八手術室で、麻酔科医の湯浅春也が殺される。手術室には湯浅と舞しかいなかった。そして湯浅が殺される直前透明人間と格闘しているような姿がモニターに映されていた。湯浅はなぜか舞に筋弛緩剤を投与しようとしていた。

 舞が犯人とされたのは、湯浅と舞以外に手術室には誰もいなかったこと。湯浅が舞の元彼だったこと、そして舞が血だらけのメスを持っていたころからだ。しかし、全身麻酔から覚めたばかりの患者が、果たして殺人なんかできるだろうか。

 日本のミステリーには一つのパターンがある。警察が頓珍漢な決めつけをして誤認逮捕をするか、しようとする。専門家に意見を聞けばいいのに、プライドばかり高く、思い込みだけで無茶苦茶なストーリーを作って、無実の人間を罪に落とそうとする。そういったとき、正義の味方の名探偵役が現れ、見事事件を解決に導くのである。その名探偵役が鷹央と小鳥遊という訳だ。もちろん舞は無実。

 面白いのは、事件を捜査するため、小鳥遊が天医会をクビになって、スパイとして清和総合病院に送り込まれること。いつも鷹央に振り回されている小鳥遊だが、お守りも大変だねえ。まあ頑張れとしか言いようがないが(笑)。

 著者の持ち味である医療知識を取り入れた、医療ミステリーだろう。ミステリーマニアには、トリックを推理するのが楽しみと言う人がいる。でも、余程医療関係の知識がないとこのシリーズに出てくるようなトリックは見抜けないのではないだろうか。裏を返せば、そういうこともあるのかといい刺激になると思う。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

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半七捕物帳 21 蝶合戦

2023-04-03 13:25:42 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 この話も半七捕物帳に収録されているものだ。他の作品と同じように、明治になって、半七老人が、語り手である「私」に、思い出語りをするという形式になっている。

 この話の冒頭にこんな文が出てくるのだが、それならお伊勢参りに行った人なんかは、もう江戸っ子ではないということかな(笑)。

<江戸っ子は他国の土を踏まないのを一種の誇りとしているので、大体に旅嫌いである>

 それはさておき、今でも変な宗教がはびこったりしているが、江戸時代にも、しばしばばやり神というものが現れた。当時の人々は迷信深かったので、あの神様や仏様はご利益があるという噂が広がれば、それを求めて参拝者がひきもきらずという状態になったらしい。まあ、その根底には、自分がご利益にあやかりたいという欲があったのだが。

 ところでタイトルにある蝶合戦だが、他にも雀合戦、蛙合戦、蛍合戦というのがあるらしい。蝶の場合は詳細に書いてあり、これから判断すると、別に蝶が合戦をする訳ではなく、話を読むと白い蝶の大量発生のことらしい。しかし、誰かが「合戦」というと、当時の人はそう呼ぶようになるのだろう。

 小さな生物は、なぜか大量に発生することがある。代表的なのはバッタが大量発生する蝗害だろう。私も子供のころ、ノコギリカミキリの大量発生を見たことがある。

 先にも行ったが、昔の人は迷信深い。だから蝶合戦のような常には見られないような現象が生じると、大災厄の前触れではないかと思ってしまう。しかし、終わってみると、まったく蝶合戦は関係がなく、単に破戒坊主と、色ボケした女たちの話だった。
☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

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天久鷹央の推理カルテII―ファントムの病棟―

2023-03-25 09:50:21 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 本書は、天久鷹央シリーズの第二弾となる。主人公は、天才的な診断能力を持つ女医天久鷹央だ。何しろ27歳にして、東京都東久留米市にある天医会総合病院の副院長兼統括診断部長なのだ。ただし父親がこの病院の理事長で、叔父の大鷲が院長なのだが、叔父とは敵対関係にある。

 診断能力は天才的なのだが、人の感情や場の空気を読み取るのが大の苦手。そしてこれも天才的なくらい不器用である。だから部下の小鳥遊(たかなし)がついていないと患者の処置もできない。童顔で体も小さいことから、子供から「子供の先生」と呼ばれることもある。真鶴という美人の姉がおり(天医会総合病院の事務長をやっている)、鷹央のことをなにかと心配しているが、鷹央は姉のことが苦手なようだ。

 敬語が使えないので、人からは傍若無人と思われているが、案外メンタルは弱く、仲の良い子供の患者の死で落ち込んだりする。

 この巻に収録されているのは以下の3編。
〇甘い毒
 事故を起こしたトラック運転手の香川は、コーラを飲んだ後意識が遠のいたので、何等かの毒物が入っていると主張するが、毒物は一切検出されなかった。

〇吸血鬼症候群
 天医会総合病院の近くにある療養型の倉田病院で、輸血用の血液が盗まれるという事件が連続する。

〇天使の舞い降りる夜
 小児科に入院している悪ガキ3人組が、退院を目前にしてそろって容態が急変する。彼らの容態が変わったのは、病棟に「天使」が現れるようになってからだという。

 著者は現役の医師である。ミステリー仕立てなのだが、謎解きを行うにはかなりの医学知識がないと無理だろう。そういった意味で、著者が医師であるというアドバンテージをよく活かした作品だと思う。

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

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