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文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

羅針盤の殺意 天久鷹央の推理カルテ

2024-06-05 10:01:10 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)


 本書は、名医というより名探偵と言った方が相応しい?天医会総合病院の副院長兼統括診断部長の若き女医・鷹央先生の活躍する「推理カルテ」シリーズの一つ。本書に収められているのは、次の三作。すなわち「禁断の果実」、「七色の猫」、「遺された挑戦状」である。このうち最後の「遺された挑戦状」が本書の半分以上を占めており、2つの短編と1つの中編というのが相応しいだろう。

 この「遺された挑戦状」では鷹央の学生時代の師匠だった人が出てくる。当時の帝都大総合病院の教授で今は御子神記念病院の院長である御子神氷魚という人物だ。鷹央は、診断の技術は神がかっていると言っていいほど天才的であるが、対人関係はさっぱりだ。前々からそのような設定ではないかと思っていたが、本書にはその辺りがはっきり書かれている。鷹央は「かってはアスペルガー症候群と呼ばれ、今は自閉症スペクトラム障害のひとつとされている特性を持っている」(pp37-38)とある。そして氷魚も同じような特性を持っているのだ。その氷魚が、不審な死を遂げる。これに挑戦するのが鷹央先生という訳だ。これは主として「遺された挑戦状」で扱われているが、「禁断の果実」では毎年定期的に肝炎を起こす高校生の話、「七色の猫」では、身体に色を塗られた猫の謎。

 作者は現役の医師でもある。だから医学的知識は豊富である。これをうまく活かした医学ミステリーではないかと思う。
☆☆☆☆








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ホーンテッド・キャンパス 黒い影が揺れる

2024-01-25 17:34:11 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 このシリーズももう21巻目。この出版不況の中で21巻も出版されるというのだから、如何に人気が高いか分かるというものだ。第1巻が出版されたのが2013年1月だから、それからもう10年以上も人気シリーズであり続けたことになる。

 内容は、雪国にある雪越大のオカルト研究会(以下オカ研)のみんなが怪異な事件に挑むというもの。本巻に収録されているのは次の短編。「ショコラな恋人たち」、「あなたのマグネット」、「かどわかしの山」の3つだ。オカ研部員の中には、3人ほどいわゆる「視える人」がいる。ただし、彼らは視えるだけで、浄霊するような力はない。

 そんな彼らがどうやって、怪異な事件を解決するのかというと、そういった現象が起きる原因を調査して、もし認識が間違っていればこれを正すのである。以下に収録されている話を簡単に紹介すると、

〇ショコラな恋人たち
 ショコラトリー&カフェー「KUKKA」に起きる不気味な事件。明らかになった事実を通じて、クズのような男たちの存在が分かる。

〇あなたのマグネット
 八神森司と鈴木瑠依は、元銀行支店長の大河内鉄朗を助ける。彼は霊を引き付ける体質だったが、亡き妻が守っていた。

〇かどわかしの山
 雪越大OBの香月朔(はじめ)は30年前に行方不明になった伯父を探そうとして、オカ研に相談を持ち掛けた。伯父は46年前、婚約者の井桁鏡子といっしょに実家近くの鷺羽山に行ったが、鏡子はそれっきり行方不明。伯父は保護されたが、それ以来おかしくなってしまい、とうとう30年前に行方不明になってしまった。そして最後にはとんでもない真実が明らかになる。

 そしてもうひとつのこの物語のキモは、八神森司と灘こよみのラブコメである。高校の同窓生で先輩・後輩の間柄なのだが、森司は1浪して雪越大に入り、こよみは現役で入ったので、大学では同級生なのだが、なぜかこよみは森司のことを先輩と呼ぶ。登場人物の紹介に二人は「両片思い中」と書かれていたが、正にその通り。要するにヘタレということである。オカ研部員たちも二人が好き合っているのは知っているので温かい目で見ているが、やっと手を繋いだり、森司がこよみの額にキスしたりという仲になったようだ。思えば長かったなあ。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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銭形平次捕物控 306 地中の富

2023-12-10 09:24:58 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 今回の話は、インチキ修験者の話だ。名前を大膳坊覺方という。火事と喧嘩は江戸の華という位、昔の江戸は火事が多かった。銀行制度もない。だからお宝があれば地中に埋めて隠したはずだ。金なら錆びることはないので、地中に埋めて小判などを隠すのはそれなりに理にかなっているといえる。金持ちの大町人は、財産を地中に隠したに違いない。だから江戸の街の地中には、沢山の金が埋まっているはずだ。

 そこで出てきたのがを大膳坊覺方という怪しげな修験者。なにしろ、金がかくしてあれば分かるという触れ込みである。事実これまでもたくさんの金を掘り出した実績があるらしい。おまけに出た金の1/3は大膳坊覺方の取り分で、彼はそれをすべて貧しい人々への施しにするという。

 今回の事件の舞台は、傳馬町にある両替屋の越前屋。なんと大膳坊は1万両の金があるというのだ。うさん臭さを感じた平次だが、この事件は八五郎に任せる。八五郎に手柄を立てさせてやろうという親心だ。

 結果は、大膳坊と越前屋の内儀が殺されるといったものだ。しかし、大膳坊はインチキながら、最初に金を掘り当てたときに、どんなトリックを使ったのかよく分からない。人が掘ったのか、それとも自分で掘ったのか?

 もうひとつ、なんだかこの話はホームズの「赤毛クラブ」を連想してしまったのは考えすぎか。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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銭形平次捕物控 171 偽八五郎

2023-11-10 10:46:24 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 


 この話にも八五郎の容姿が出てくるが他の作品と矛盾している。「銭形平次捕物控 015 怪伝白い鼠には、思いもよらぬ大男――しかも、あまり人相のよくないと書かれている。でもこの作品には、少し柄は小さいが、三十前後の面長な良い男で――ウフ、その邊は八五郎にそつくりだな―と書かれている。いったい八五郎は大柄なのか、小柄なのかはっきりして欲しい。まあ、良い男ではないというのは平次が笑っていることから推察できるのだが。

 さて、今回の事件は、江戸の下町を騒がす、良家の綺麗な女の子を狙った誘拐事件。大抵は、身分に応じた金をとって親元に戻すのだが、中には戻らない子もいた。そして、女の子を裸にして骨組みや身體を念入りに見たり、高いところから突き落したり、梁へぶら下げたりするらしい。

 その誘拐犯は、誘拐した女の子の身代金を受け取るとき平次の子分の神田の八五郎」と名乗っていたらしい。もちろん騙りだが、ヘボ探偵三輪の万七は、八五郎を疑っていたようだ。平次も八五郎をからかうネタにするくらいで、もちろん、そんなことを信じちゃいない。与力の笹野も笑って聞き流しているという。

 そのうち殺人事件が起きる。両国で人気の「足藝のお紋」の小屋の軽業師の磯五郎が柳橋の下に舫った船の中で船頭の金助とともに死体で発見されたのだ。二人は、いかにも相打ちという風であった。

 平次は、この事件を見事に解き明かすのだが、明らかになったのは驚くような真実。もちろん八五郎は犯人なんかじゃなかった。
☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

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吸血鬼の原罪 天久鷹央の事件カルテ

2023-10-29 18:06:59 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 知念実希人さんによる天久鷹央シリーズの最新巻。東久留米天医会総合病院の副院長兼統括診断部部長という肩書の女医・天久鷹央が統括診断部の医師小鳥遊優と研修医の鴻ノ池舞の3人で一見不思議な事件に挑むという医療ミステリーである。ちなみに小鳥遊は空手、舞は合気道をやっており、かなり強い。仲でも舞の合気道は達人級で、小鳥遊はいつも関節技でやられているというイメージである。鷹央は天才的な診断技術を持っているが、戦闘力はさっぱりであり、他人とのコミュニケーションは苦手である。

 今回の事件は、吸血鬼による殺人。被害者は、ほぼすべての血液が抜き取られており、首筋には2つの痕跡。まるで、吸血鬼に血を吸われたように。このシリーズ、大体は珍しい病気だったというオチであり、今回の吸血鬼についても一応こういう病気だと診断がついているが、あれまだ全部の伏線を回収してないんじゃないと思ったら、もう一つ奥があった。それも鷹央が見事に解決している。

 もうひとつ、本書のテーマは外国人技能実習生制度に関する闇といったものか。本来、日本に技能を学びに来ているはずが、単なる安価な労働力とみなして違法にこき使っているのだ。こういうのは、加害者に対しては罰則を強化し、被害者には救済制度を充実させることが解決に結びつくのではないだろうか。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

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銭形平次捕物控 015 怪伝白い鼠

2023-10-11 09:37:37 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 この話では珍しく平次の投げ銭の技が見られる。もうひとつ、ガラッパチこと八五郎の容姿が出てくるのだ。なんでも大男であまり人相も良くないらしい。一言で言えば結構強面な感じなのだ。私の記憶によれば、テレビドラマでお馴染みの八五郎とは大分感じが違う。

 今回事件が起こるのが本町三丁目にある糸物問屋の近江屋である。この近江屋では、主人が亡くなり、母親も死んで、今は主人の弟に当たる番頭の友二郎が支配人として店の一切を取り仕切っていた。主人の直系として、娘のお雛と四つになる弟の富太郎がいるのだが、女中のお染、下男の六兵衛といっしょに、根岸の寮で暮らしていた。ちなみにお雛には、先代の決めた重三という近江屋で手代をやっている許嫁がいる。

 この富太郎が夜中にお化けが出るという。それも決まって友二郎が泊まった時に鍵えってである。お雛の御飯に石見銀山の鼠捕りが入っていたこともあるという。その他にも色々と不審なことが起こるという。

 とりあえず八五郎が寮に泊まったが、仏壇の位牌の前に鬼女の顔が現れる。魔が悪いことに、富太郎は八五郎を見て、引付を起こして倒れてしまう。そして富太郎が行方不明になり、なぜか死体となって元の床の中にいた。

 八五郎は平次にお出ましを願うのだが、平次は事件より朝飯優先のようだ。飯を食わなきゃ、戦ができないとかのんきなことを言っている。

 それでも、平次は事件を解決してしまうのだ。平次の名推理と観察眼によるのだろう。

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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銭形平次捕物控 128 月の隈

2023-10-05 10:24:35 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 お馴染み銭形平次シリーズである。事件は、神田鍋町の呉服屋翁屋の支配人孫六が殺されたというもの。そして死に際に「よその人だ、あの男だ」という言葉を残す。孫六は暮れの支払いのためにかき集めた1000両を蔵に仕舞っていた。この金が狙われたという訳である。でもこの金がないと支払いができないので、店がつぶれるかもしれない。

 この作品にも、へっぽこ探偵役の岡っ引きが出てくる。八五郎に言わせれば三河島のおびんずる野郎という金太という岡っ引きだ。ちなみに、びんずるというのは、お釈迦様の弟子で十六羅漢の第一である賓頭盧尊者のことである。日本ではなで仏として有名である。

 ちょっと脱線したが、この金太、へっぽこ中のへっぽこだろう。何しろ犯人が外に逃げた形跡がないのに、普段孫六と仲が悪いというだけで、大した証拠もなく町内の万屋茂兵衛を縛るくらいだ。今だったら裁判所が絶対に逮捕状を出さないレベルである。しかしこの金太、よくクビにならないな。いくら江戸時代でも、こんなむちゃくちゃをやっていれば、十手目召し上げのうえ何か罰がありそうなものだと思うのだが。

 平次は最初はこの店の若主人・半次郎を犯人と見ていた。この半次郎道楽者で先代の主人(親)から潮来に追いやられていたのだ。それを先代が死んだときに孫六が呼び戻して家督を継がさせたという。平次は自分の考えに固執することなく、証拠と推理により事件を解き明かすのだ。しかし最後はの真犯人をつきとめる。もっともこの半次郎にも大きな道義的責任があるのだが。

 最後に平次の名言?が来る。

「思いつめる女より、思いつめさせる男の方が罪が深い。八、お前なんかもつまらない罪をつくるんじゃないぜ」


 いや八五郎君、そんな心配はまずないと思う。まあ平次も揶揄っているんだろうが。

 この話でもやはり銭を投げるシーンはないが、犯人はちゃんとつかまえている。さすがにこれでは平次も同情の余地はなかったのだろう。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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銭形平次捕物控 213 一と目千両

2023-09-26 10:09:39 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 これも銭形平次シリーズのうちの一つだ。タイトルの一と目千両というのは、一と目見ることに千両の値打ちがあるという美女を例えたものだ。もちろんこの話を持ってきたのはおなじみ八五郎。東両国で人気の見せ物軽業の小屋に出ているお夢というのが、ものすごく美人で一と目見れば千両の価値があるのに、それがたったの木戸銭の十六文で見ることができるというのだ。

 ところが、このお夢が殺されそうになる。お夢が寝ていると、顔の上に二階から大火鉢が投げられたというのだ。おまけにその火鉢には煮えたぎる鉄瓶が掛けられていた。

 幸いお夢は風邪気味で布団を深くかぶって寝ていたので、軽いやけどだけで済んだとのことだが。

 この事件に興味を引かれた平次は、行ってみようという。これは平次には珍しいことだ。何しろものすごい無精者。その平次が自分から動こうというのである。これには八五郎、思わず「しめたツ」

 今度は、お夢と二枚看板であるお鈴という娘が狙われる。お鈴は美人ではないが17歳の可愛らしい娘である。お鈴は軽業専門で、張り渡された綱の上で飛んだり跳ねたりするのだが、綱の結び目のところに抜身の匕首が挟んであり、お鈴が軽業をすると切れるようになっていた。おかげでお鈴は右足を折ってしまい、直っても生涯曲芸は出来ないかもしれないという。

 この事件を平次は解き明かすのだが、実はお夢の事件とお鈴の事件は別の犯人によるものであった。この話を読むと「外面如菩薩内心如夜叉」という言葉が頭に浮かんだ。

 さてこの話の顛末だが、平次は誰も縛らなかった。犯人に同情したわけではない。今の刑事ドラマなら、絶対に逮捕しているのだろうが、平次は罰を天に任せたのだ。そして犯人の一人は行方知れず、一人は物乞いに落ちぶれ、しっかり罰を受けている。銭形平次にはこういった話が多い。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

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化け者手本

2023-09-17 15:46:52 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 舞台は文政年間の江戸。主人公は田村魚之助(ととのすけ)という元女形。元というのは、数年前に贔屓の客に足を切られて、第一線から退いているためである。そしてその相棒が藤九郎(信天翁)という鳥屋。基本は、主としてこの二人が、怪奇な事件に挑むというストーリーである。つまり魚之助をホームズに例えるなら、藤九郎はワトソンといったところか。なお、鳥屋とは、鳥専門の江戸時代におけるペットショップのようなものである。

 こう書けば、普通のミステリーのようだが、二人が解き明かすのは、怪異の絡んだ事件。ミステリーよりは、ホラー要素の方が強いだろう。

 事件の方は、江戸一番の芝居小屋中村座の座元から小屋で起こった事件の調査を頼まれる。芝居が跳ねたあと、客席に死体が転がっていたというのだ。その死体は首がおられたあげく、死後に両耳に棒が差し込まれていたという。そして、こんどは口の中に鈴が入れられた死体が見つかる。果たして犯人は。

 今でこそ、歌舞伎はなんだか高尚なもののように思われているが、この時代の芝居は庶民の楽しみであった。でも風紀を乱すということで、為政者による規制のために、男しか舞台には上がれなかった。しかし、芝居には女役がつきもの。そこで男が女役をやるようになった。これを女形という。ただ当時は、ホルモン療法も性的合手術もなかったので、女形の人たちには女性より女性らしくなるために、色々な苦労があったようだ。

 当時のお化粧は、よく時代劇でみるように白塗りが基本だったので、元の顔がどうであれ結構ごまかせたんだろう。しかし、あの白塗りで美女とか言われても現代人の目から見ると違和感ありありなのだが。江戸時代の人はあれが美女に見えていたのだろうか。

 ためになったのは、名前だけは知っているお軽、勘平が忠臣蔵と関係があったこと。そして、助六が曾我兄弟の仇討物語と関係があること。これは知らなかった。

 またこれにも違和感がある。メルヒオール馬吉だ。長崎遊女とオランダ人との間に生まれたという設定だが、自分のことを「める」と呼んでいるのである。人から呼ばれるのなら分かるが、いい大人が自分のことを「める」なんて呼ばないだろう。「あっし」とか「馬吉」と言うと思うのだが。それに吉原の人気花魁の名前が蜥蜴なのだ。さすがにこんな名前は付けないと言う気がするが、もしかすると本当にいたのだろうか。

 タイトルに「化け物」とあるように、この作品では「化け物」が大きな役割を果たす。そして「化け物」とは人がなるもの。そういったメッセージが込められているように思える。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

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銭形平次捕物控 194 小便組貞女

2023-09-07 10:49:57 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 江戸時代は、妾は社会的に認知された職業だった。それも、給金も待遇もよかったので人気の職業であった。しかし中には不心得者もいたようで、わざと寝小便をして、お払い箱になり、支度金をせしめる連中がいたようだ。どんな美女でも寝小便をされると、特殊な性癖がある人でない限りは、百年の恋も冷めるというもの。こういった女たちを小便組といっていたらしい。

 さて事件の方であるが、若松屋という浅草三間町の材木屋の裏の路地で御朱印の傅次郎という悪が殺された。なぜ、「御朱印の」と名乗っているかというと、傅次郎の唯一の自慢が、御朱印船に乗ったことがあるということだからだ。

 この若松屋には小便組の一人「お扇」という妾がいた。若松屋の主人敬三郎は、2年前に本妻を亡くし、何かと不自由だというので、「お扇」を妾として雇い入れたのだ。若松屋には、傅次郎が殺される前から、嫌がらせのような出来事が続いていた。そして事件が起きてからは「お扇」も行方知れずになっていた。

 これに乗り出したのがお馴染み三輪の万七。もちろん迷探偵役としてだ(笑)。万七は最初お扇を犯人と決めつけていたが、実際にお縄にしたのはお扇の妹のお篠。もちろん誤認逮捕である。これに乗り出して、見事に事件の真相を暴いたのが平次という訳だ。しかし本当に悪いのは傅次郎とばかり、あえて真犯人をつかまえようとせず、評判のいいお扇を妾から本妻にするように勧める始末。平次は事件の真相次第では、見て見ぬふりをするというところがある。何がなんでも犯人をお縄にして手柄を挙げようというタイプではない。この辺りが平次の一番の魅力だろう。なお、この話でも投げ銭は行わない。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

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