現役の医師による医療ミステリーの第3弾。収録されているのは中短編の3つの話。ヒロインは天久鷹央という天才的な診断技術を持つ女医。天医会総合病院副院長兼統括診断部長である。本人曰く27歳のレディらしい。ただものすごく不器用かつ人付き合いが大の苦手なので、彼女をサポートしてくれる人材が不可欠。その役割をするのが、純正医大から派遣されている小鳥遊優(ちなみに慎重180㎝のごっつい男)。鷹央は傍若無人だが、姉の真鶴には頭が上がらない。
この巻に収録されているのは3つの中短編。もっともどこまでが短編でどこからが中編になるのかはよく分からない。調べてみるとおおよその目安はあるが、色々と変動があり、明確なものはないらしい。そこで私の感覚で分けると2つの短編と1つの中編ということだろうか。収められているのは次の3つ。「閃光の中へ」、「拒絶する肌」、「密室で溺れる男」である。このうち3つ目の作品が334頁で構成された本書の半分以上を占めており、最初の2つが70頁程度である。
〇閃光の中へ
線路に飛び込んで自殺を図ったとされる木村真冬は「呪いの動画」を双子の姉の真夏と視ていた。
〇拒絶する肌
銀行に勤める岡崎雅恵は、女子校育ち。男性に触れられると体に異常が出るという。
〇密室で溺れる男
鷹央と小鳥遊のコンビが解消の危機に。その原因が小鳥遊の先輩になる桑田清司が殺人の最有力容疑者となったので診療ができなくなり、その代わりに小鳥遊が純正医大に呼び戻されることになったからだ。事件は、清司の鼻つまみ者の兄・大樹が密室で溺死したというもの。その部屋には水気は一切なかった。
いずれも、著者の医学知識を活用して、うまく医学ミステリーに落とし込んでいる。あまり、その方面に詳しくない人でも、こういった可能性もあることを知っておけば、レアケースと言えども、万が一の場合には役立つのではないだろうか。最初の二つは、鷹央の研修医時代の指導医だった精神科部長の黒田女史が関わっている。鷹央は研修医時代に、歯に衣着せぬ勢いで、黒田の間違いを正したことから、二人の関係は最悪のようだ。しかし、患者の目線で視れば、誰かのメンツより、正しい診断をしてくれる方が大切だろう。
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