米フェイスブックが政治広告からの収入で、今年中にアルファベット傘下のグーグルを越える可能性がある――。金融大手シティーグループはこう予測しています。献金やボランティアを得るには今もサーチエンジンを使った広告が絶大な力を持っていることを考えると、この逆転の意味は大きいと言えます。
理由はフェイスブックの巨大なリーチ力と、より細かい相手を対象に広告を投入できる同社のツールのおかげです。「マイクロ・ターゲット」と呼ばれるこの方法は、有権者からの支持を拡大し、彼らを投票場に向かわせたい選挙陣営にとって天からの恵みといえます。そして一般的な広告と同様、今は政治の世界でもこの手法が広範かつ緻密に使われています。
政治におけるデータ分析が「過大評価されている」としていた共和党の大統領候補ドナルド・トランプ氏でさえ、その可能性に注目しています。トランプ氏のデジタル戦略の責任者を務めるブラッド・パースケイル氏によると、トランプ陣営は8月にフェイスブックで広告を展開し、選ばれた利用者らに対して10万にもおよぶウェブサイトへのリンクを送信。パースケイル氏によると各ページは利用者それぞれに合わせた内容だったとしています。民主党ヒラリー・クリントン候補の陣営も同じような戦略を展開しているといいます。
選挙戦略に詳しいジャーナリストのサーシャ・イッセンバーグ氏は、もし可能であるならば選挙陣営は国内全ての有権者を調査し、まだ投票先を固めていない人を抜き出し、彼らから支持を得られるような政策を練り、自らへの1票へと結びつけようとするだろう話しています。まだそこまでは実現できていないものの、細分化はそれに近い状況を作り出しているといえます。
消費傾向や銃所有の記録と照らし合わせる方法も
有権者の投票心理などに関連するデータ分析を行うケンブリッジ・アナリティカは、共和党予備選挙ではテッド・クルーズ上院議員の陣営に協力していましたが、今はトランプ氏と組みます。データに関する最高責任者のアレキサンダー・テイラー氏によると、同社は米国成人2億2000万人のデータベースを所有し、それぞれに対して4000から5000にもおよぶデータ要素を習得しているというのです。ケンブリッジ・アナリティカはこのデータベースを他社の大量のデータとつなぎます。情報サービス会社のエクスペリアンやアクシオムなどから得られる有権者登録の情報、購買パターン、そして銃所有の記録などと照らし合わせるといいます。
フェイスブックでもクレジットカードさえあれば同様のサービスを受けられます。利用者の政治思想に対して同社が持つ影響力についてはさまざまな意見がありますが、フェイスブックの選挙広告における影響力についてはまだあまり注目されていません。
「2008年がフェイスブックの選挙だったと言う人もいますが、個人的には今年こそがフェイスブックの選挙だと感じる」と話すのは、2012年の大統領選に出馬したミット・ロムニー氏の陣営でデジタル戦略を担当したザック・モファット氏です。「ひとつのプラットフォームで全人口の4人に3人を見つけることができるのえす。フェイスブックの価値は、その大きさと規模だ」です。
デジタル広告費は前回の大統領選から3倍
広告を打つ側が狙ったオーディエンスに的確にメッセージを届けられるよう、フェイスブックもいくつかのツールを提供しています。例えば「カスタム・オーディエンス」と呼ばれるツールを使えば、候補の支持者グループのリストに含まれたユーザーのみに広告を届けることができます。2012年の大統領選でロムニー氏やオバマ大統領も利用したツールです。
フェイスブックでは地域ごとのキャンペーンなどのためでも、ケンブリッジ・アナリティカが行っているように他のデータ会社から得た情報も併用して使うことを許可しています。また「ルックアライク・オーディエンス」は、一定のグループと似たような特徴を持つ人を狙って広告を打つことを可能にしています。再生された曲から自動的に音楽を勧めてくれるスポティファイなどのサービスのように、ユーザーの特徴から支持者になりうる人を推薦してくれるツールです。
広告調査を行うキャンター・メディアによると、今回の選挙期間中にはテレビ向けの広告費用として44億ドルが使用されます。調査会社ボレル・アソシエーツによればデジタル広告は約10億ドルなので、その差はまだ大きい。しかしデジタル広告は、前回2012年の大統領選から実に3倍の伸びています。
フェイスブックを使った狙い撃ち広告と多額な広告費に対しては、不安の声もあがっています。不明瞭なアルゴリズムがすべてをコントロールすることの危険性について「ウェポンズ・オブ・マス・デストラクション(原題)」を執筆した作家のキャシー・オニール氏もその1人です。
「選挙陣営は、グーグルやフェイスブックのどの利用者にどの情報を伝えるのが効率的かを考えるようになる」とオニール氏は言います。「しかし選挙陣営にとって効率がいい話であっても、民主主義にとってはそれは不都合だ」ということもあります。
クリントン陣営の関係者はマイクロ・ターゲットを利用した戦略が重要だと認識する一方、候補者のメッセージそのものが最重要であることは変わらないし、友人や近隣の人と交わす会話の方がSNSで得られる情報よりも影響力があると指摘しています。
しかし選挙を控えた政治家やその側近らは、新たな手法に一気に流れ込みます。ケンブリッジ・アナリティカのテイラー氏は、「これまでの政治的な知恵は破壊され、データ科学や事実に基づいた情報に取って代わった」と主張すると言っています。
ジャーナリストのイッセンバーグ氏も、ターゲットを絞り込むことで選挙戦をより効率的に展開できる点は大きいと話す。仮にクリントン氏がデジタル広告に1億ドルを使う場合、ターゲットを絞り込めばそのうち1000万ドルの無駄を削減できるし、ボランティアや陣営の時間を他の課題に回せるメリットも出てきます。接戦の選挙では、そのような小さな差が激戦州において数千票の違いになり、最終的に選挙結果に影響を与えることすら考えられるのです。(ソースWSJ)
理由はフェイスブックの巨大なリーチ力と、より細かい相手を対象に広告を投入できる同社のツールのおかげです。「マイクロ・ターゲット」と呼ばれるこの方法は、有権者からの支持を拡大し、彼らを投票場に向かわせたい選挙陣営にとって天からの恵みといえます。そして一般的な広告と同様、今は政治の世界でもこの手法が広範かつ緻密に使われています。
政治におけるデータ分析が「過大評価されている」としていた共和党の大統領候補ドナルド・トランプ氏でさえ、その可能性に注目しています。トランプ氏のデジタル戦略の責任者を務めるブラッド・パースケイル氏によると、トランプ陣営は8月にフェイスブックで広告を展開し、選ばれた利用者らに対して10万にもおよぶウェブサイトへのリンクを送信。パースケイル氏によると各ページは利用者それぞれに合わせた内容だったとしています。民主党ヒラリー・クリントン候補の陣営も同じような戦略を展開しているといいます。
選挙戦略に詳しいジャーナリストのサーシャ・イッセンバーグ氏は、もし可能であるならば選挙陣営は国内全ての有権者を調査し、まだ投票先を固めていない人を抜き出し、彼らから支持を得られるような政策を練り、自らへの1票へと結びつけようとするだろう話しています。まだそこまでは実現できていないものの、細分化はそれに近い状況を作り出しているといえます。
消費傾向や銃所有の記録と照らし合わせる方法も
有権者の投票心理などに関連するデータ分析を行うケンブリッジ・アナリティカは、共和党予備選挙ではテッド・クルーズ上院議員の陣営に協力していましたが、今はトランプ氏と組みます。データに関する最高責任者のアレキサンダー・テイラー氏によると、同社は米国成人2億2000万人のデータベースを所有し、それぞれに対して4000から5000にもおよぶデータ要素を習得しているというのです。ケンブリッジ・アナリティカはこのデータベースを他社の大量のデータとつなぎます。情報サービス会社のエクスペリアンやアクシオムなどから得られる有権者登録の情報、購買パターン、そして銃所有の記録などと照らし合わせるといいます。
フェイスブックでもクレジットカードさえあれば同様のサービスを受けられます。利用者の政治思想に対して同社が持つ影響力についてはさまざまな意見がありますが、フェイスブックの選挙広告における影響力についてはまだあまり注目されていません。
「2008年がフェイスブックの選挙だったと言う人もいますが、個人的には今年こそがフェイスブックの選挙だと感じる」と話すのは、2012年の大統領選に出馬したミット・ロムニー氏の陣営でデジタル戦略を担当したザック・モファット氏です。「ひとつのプラットフォームで全人口の4人に3人を見つけることができるのえす。フェイスブックの価値は、その大きさと規模だ」です。
デジタル広告費は前回の大統領選から3倍
広告を打つ側が狙ったオーディエンスに的確にメッセージを届けられるよう、フェイスブックもいくつかのツールを提供しています。例えば「カスタム・オーディエンス」と呼ばれるツールを使えば、候補の支持者グループのリストに含まれたユーザーのみに広告を届けることができます。2012年の大統領選でロムニー氏やオバマ大統領も利用したツールです。
フェイスブックでは地域ごとのキャンペーンなどのためでも、ケンブリッジ・アナリティカが行っているように他のデータ会社から得た情報も併用して使うことを許可しています。また「ルックアライク・オーディエンス」は、一定のグループと似たような特徴を持つ人を狙って広告を打つことを可能にしています。再生された曲から自動的に音楽を勧めてくれるスポティファイなどのサービスのように、ユーザーの特徴から支持者になりうる人を推薦してくれるツールです。
広告調査を行うキャンター・メディアによると、今回の選挙期間中にはテレビ向けの広告費用として44億ドルが使用されます。調査会社ボレル・アソシエーツによればデジタル広告は約10億ドルなので、その差はまだ大きい。しかしデジタル広告は、前回2012年の大統領選から実に3倍の伸びています。
フェイスブックを使った狙い撃ち広告と多額な広告費に対しては、不安の声もあがっています。不明瞭なアルゴリズムがすべてをコントロールすることの危険性について「ウェポンズ・オブ・マス・デストラクション(原題)」を執筆した作家のキャシー・オニール氏もその1人です。
「選挙陣営は、グーグルやフェイスブックのどの利用者にどの情報を伝えるのが効率的かを考えるようになる」とオニール氏は言います。「しかし選挙陣営にとって効率がいい話であっても、民主主義にとってはそれは不都合だ」ということもあります。
クリントン陣営の関係者はマイクロ・ターゲットを利用した戦略が重要だと認識する一方、候補者のメッセージそのものが最重要であることは変わらないし、友人や近隣の人と交わす会話の方がSNSで得られる情報よりも影響力があると指摘しています。
しかし選挙を控えた政治家やその側近らは、新たな手法に一気に流れ込みます。ケンブリッジ・アナリティカのテイラー氏は、「これまでの政治的な知恵は破壊され、データ科学や事実に基づいた情報に取って代わった」と主張すると言っています。
ジャーナリストのイッセンバーグ氏も、ターゲットを絞り込むことで選挙戦をより効率的に展開できる点は大きいと話す。仮にクリントン氏がデジタル広告に1億ドルを使う場合、ターゲットを絞り込めばそのうち1000万ドルの無駄を削減できるし、ボランティアや陣営の時間を他の課題に回せるメリットも出てきます。接戦の選挙では、そのような小さな差が激戦州において数千票の違いになり、最終的に選挙結果に影響を与えることすら考えられるのです。(ソースWSJ)
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