中国が金融危機に直面する可能性を警告した少数の「中国弱気派」を一流の金融アナリストたちがかつてあざ笑っていました。しかし、過去1年で不良債権のツケを巡るリスクは通説になりました。中国政府には金融システムを下支えするリソースがあるが、融資拡大による経済刺激策の継続で中国の経済的・政治的苦境は複雑化しています。
最近警鐘を鳴らしたのは、スイス・バーゼルの国際決済銀行(BIS)です。最新の四半期国際与信統計によると、中国の国内総生産(GDP)に対する総与信ギャップは現在30.1%となっています。同ギャップは与信伸び率と長期トレンドとの乖離(かいり)を示す指標で、10%を超える数字は通常、危険信号とみなされています。
どの国にも問題を生じさせる具体的な債務水準はが、借入残高が急増していれば、危機が到来する予兆となり得ます。つまり、融資が高いリターンという幻想を生み出し、それが借り入れを正当化するバブル状態を示しています。米国の総与信GDP比率ギャップが10%を超えたのは、住宅バブルがはじける直前の2007年です。ゴールドマン・サックスは今年に入り次のように警告しています。「債務が急増した主要国はいずれも金融危機を経験しているか、GDP成長率の停滞が長引いている」と。
中国の借り入れは驚異的なペースで増えました。世界的金融危機の影響が中国に及ばないよう、中国政府が与信を拡大したためです。中国の対GDP比債務残高は2007年末の150%弱から2015年末には250%超に拡大しました。ちなみに日本は資料が古いですが、2008年は171.1%です。ギリシャは118.6%です。
しかも、中国政府が昨年、無駄な投資の抑制と供給サイド改革に乗り出したにもかかわらず、対GDP比債務残高は増え続けています。これは非常に気掛かりなことです。中国政府は国有銀行に継続的な信用供与をやめさせ、苦境に陥った銀行に返済資金を新たに融資させないようにすると約束しました。そのようなゾンビ銀行は破綻するはずだったのです。しかし、中国ではデフォルト(債務不履行)はほとんど起きていません。
中国政府には慎重になる政治的理由があるのです。改革の実施は成長を減速させることになる上、改革を行うたびに社会不安は高まります。広東省烏坎村では景気が減速した2011年に抗議運動が発生しましたが、今年に入って再びデモが起きています。
中国政府は過去数カ月、政策銀行3行に国有企業の新規投資に融資するよう促しています。銀行は住宅ローンブームをあおり、不動産価格を高騰させてもいます。中央銀行は金利や預金準備率は引き下げていませんが、公開市場操作を通じて銀行にさらに流動性を与えています。
政府統計によると、銀行の不良債権比率は2%という11年ぶりの高水準に近づきつつあります。しかし、当局者でさえ実際の数字がはるかに高いことを認めているのです。銀行アナリストのシャーリーン・チュウ氏は、22%に達する可能性があると予想しています。だとすれば、中国政府は2000年代初めのように銀行システムの資本再編を行う必要があります。
ただし、影の銀行の誕生によって、今回の金融システムの是正は一段と厄介になる可能性があります。国営銀行は普通預金よりも高い利回りを売りにした「理財商品」を抱えており、それらは複雑に入り組んでいます。チュウ氏によると、理財商品は昨年、1兆1000億ドル(約112兆円)増え、総信用伸び率の40%近くを占めるに至っています。
これら短期負債で長期資産の資金を賄っており、この不整合が危機をあちこちで悪化させています。しかも買い手の多くは他の金融機関です。これは2008年の米国の住宅ローン担保証券(MBS)市場をほうふつとさせるものです。預金者はリスクを理解しておらず、理財商品が破綻したときは、銀行が彼らの元本の返済を余儀なくされています。これら投資に対する取り付け騒ぎが起きれば深刻な社会不安が引き起こされ、政府に対する中流階級の信頼が損なわれかねないのです。
中国政府は、金融や財政刺激策に依存した経済が市場主導でレバレッジを解消できるかじ取りするという難題に直面しています。政治的副作用は避けられず、その管理は経済リスクと同じくらい危険な可能性があります。(ソースWSJ)
最近警鐘を鳴らしたのは、スイス・バーゼルの国際決済銀行(BIS)です。最新の四半期国際与信統計によると、中国の国内総生産(GDP)に対する総与信ギャップは現在30.1%となっています。同ギャップは与信伸び率と長期トレンドとの乖離(かいり)を示す指標で、10%を超える数字は通常、危険信号とみなされています。
どの国にも問題を生じさせる具体的な債務水準はが、借入残高が急増していれば、危機が到来する予兆となり得ます。つまり、融資が高いリターンという幻想を生み出し、それが借り入れを正当化するバブル状態を示しています。米国の総与信GDP比率ギャップが10%を超えたのは、住宅バブルがはじける直前の2007年です。ゴールドマン・サックスは今年に入り次のように警告しています。「債務が急増した主要国はいずれも金融危機を経験しているか、GDP成長率の停滞が長引いている」と。
中国の借り入れは驚異的なペースで増えました。世界的金融危機の影響が中国に及ばないよう、中国政府が与信を拡大したためです。中国の対GDP比債務残高は2007年末の150%弱から2015年末には250%超に拡大しました。ちなみに日本は資料が古いですが、2008年は171.1%です。ギリシャは118.6%です。
しかも、中国政府が昨年、無駄な投資の抑制と供給サイド改革に乗り出したにもかかわらず、対GDP比債務残高は増え続けています。これは非常に気掛かりなことです。中国政府は国有銀行に継続的な信用供与をやめさせ、苦境に陥った銀行に返済資金を新たに融資させないようにすると約束しました。そのようなゾンビ銀行は破綻するはずだったのです。しかし、中国ではデフォルト(債務不履行)はほとんど起きていません。
中国政府には慎重になる政治的理由があるのです。改革の実施は成長を減速させることになる上、改革を行うたびに社会不安は高まります。広東省烏坎村では景気が減速した2011年に抗議運動が発生しましたが、今年に入って再びデモが起きています。
中国政府は過去数カ月、政策銀行3行に国有企業の新規投資に融資するよう促しています。銀行は住宅ローンブームをあおり、不動産価格を高騰させてもいます。中央銀行は金利や預金準備率は引き下げていませんが、公開市場操作を通じて銀行にさらに流動性を与えています。
政府統計によると、銀行の不良債権比率は2%という11年ぶりの高水準に近づきつつあります。しかし、当局者でさえ実際の数字がはるかに高いことを認めているのです。銀行アナリストのシャーリーン・チュウ氏は、22%に達する可能性があると予想しています。だとすれば、中国政府は2000年代初めのように銀行システムの資本再編を行う必要があります。
ただし、影の銀行の誕生によって、今回の金融システムの是正は一段と厄介になる可能性があります。国営銀行は普通預金よりも高い利回りを売りにした「理財商品」を抱えており、それらは複雑に入り組んでいます。チュウ氏によると、理財商品は昨年、1兆1000億ドル(約112兆円)増え、総信用伸び率の40%近くを占めるに至っています。
これら短期負債で長期資産の資金を賄っており、この不整合が危機をあちこちで悪化させています。しかも買い手の多くは他の金融機関です。これは2008年の米国の住宅ローン担保証券(MBS)市場をほうふつとさせるものです。預金者はリスクを理解しておらず、理財商品が破綻したときは、銀行が彼らの元本の返済を余儀なくされています。これら投資に対する取り付け騒ぎが起きれば深刻な社会不安が引き起こされ、政府に対する中流階級の信頼が損なわれかねないのです。
中国政府は、金融や財政刺激策に依存した経済が市場主導でレバレッジを解消できるかじ取りするという難題に直面しています。政治的副作用は避けられず、その管理は経済リスクと同じくらい危険な可能性があります。(ソースWSJ)