ベートーヴェン:交響曲第7番
指揮:フェレンツ・フリッチャイ
管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1960年10月、ベルリン、イエス・キリスト教会
LP:MH 5068(2548 107)
ベートーヴェンの第7交響曲は、ワーグナーが”舞踏の聖化”と呼び、「メロディーとハーモニーは、あたかも人体組織のごとく活気あるリズムの形象をもって淀みなく流れ・・・」と評したように、全体に躍動感が漲った名曲である。このことは、1814年2月27日の初演当時から評判となり、楽聖の名を一層高めることになった。しかし、ベートーヴェン自身は、耳の悪化に加え、ナポレオン軍のウィーン攻撃に脅かされていたわけで、状況は決して良いわけではなかった。ベートーヴェンは、むしろ対に書かれた第8交響曲の方が気に入っていたようで、第7番の人気に戸惑いを見せたとも言われている。これは第7番が時代を先取りし、現代にも通じる感覚を纏っていたからほかあるまい。そのベートーヴェンの第7交響曲を、名指揮者フェレンツ・フリッチャイ(1914年―1963年)がベルリン・フィルを指揮したのがこのLPレコードである。フェレンツ・フリッチャイは、ハンガリー、ブダペスト出身。ブダペスト音楽院でコダーイ、バルトークらに指揮と作曲を学ぶ。卒業後、ブダペスト国立歌劇場、ハンガリー国立交響楽団(現ハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団)の音楽監督を歴任。1949年からはベルリン市立歌劇場の音楽監督およびRIAS交響楽団の首席指揮者に就任。1956年バイエルン国立歌劇場の音楽監督に就任。1958年から、白血病の症状が現れ、長期の休養を余儀なくされるが、ベルリン放送交響楽団(RIAS交響楽団から名称変更)の首席指揮者に復帰。1962年に白血病の症状が悪化し、1963年2月20日、スイスのバーゼルの病院で48歳の若さで他界した。フリッチャイは、いつもは躍動感たっぷりに情熱的に演奏する指揮者なので、このLPレコードでもそうなのかと聴いてみると、確かに躍動感を充分に秘めた指揮ぶりなのではあるが、ここではむしろ内面に向かうかのような、心の中の音楽として第7交響曲を演奏している。これは、フリッチャイの死の3年前の録音なので、体調が優れなかったことが何か影響していたのであろうか。しかし、このことは、逆にこの録音をさらに価値あるものしていると私は思う。これほどまでに陰影に富んで、精神性に深みがある第7交響曲の演奏は、そう滅多に聴かれるものではない。フリッチャイは、自分の心と対話しながら指揮をしているようでもある。その意味からこれは、不世出の名指揮者フリッチャイが残した貴重な録音であるとも言える。(LPC)
最新の画像[もっと見る]
-
◇クラシック音楽LP◇グリュミオー&ハスキルの名コンビによるモーツァルト:ヴァイオリンソナタ選集 3ヶ月前
-
◇クラシック音楽LP◇ブルーノ・ワルター晩年の名盤 ブラームス:ドイツ・レクイエム 3ヶ月前
-
◇クラシック音楽LP◇バリリ四重奏団らによるモーツァルト:弦楽五重奏曲第3番 3ヶ月前
-
◇クラシック音楽LP◇ヨゼフ・カイルベルト指揮ベルリン・フィルのブラームス:交響曲第2番/大学祝典序曲 3ヶ月前
-
◇クラシック音楽LP◇ワレーズ&リグットによるシューマン:ヴァイオリンソナタ第1番/第2番 4ヶ月前
-
◇クラシック音楽LP◇名指揮者オイゲン・ヨッフム指揮バイエルン放送交響楽団員のモーツァルト:「13楽器のためのセレナーデ」 4ヶ月前
-
◇クラシック音楽LP◇クリスタ・ルートヴィッヒのマーラー:さすらう若人の歌/亡き子をしのぶ歌 4ヶ月前
-
◇クラシック音楽LP◇バレンボイム指揮イギリス室内管弦楽団のシェーンベルク:浄夜/ワーグナー:ジークフリート牧歌/ヒンデミット:ヴィオラと弦楽合奏のための葬送音楽 4ヶ月前
-
◇クラシック音楽LP◇クララ・ハスキルのドメニコ・スカルラッティ:ソナタ集 4ヶ月前
-
◇クラシック音楽LP◇ワルターの名盤 モーツァルト:交響曲第40番/第41番「ジュピター」 4ヶ月前