ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」
指揮:フェレンツ・フリッチャイ
管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
独唱:イルムガルト・ゼーフリート(ソプラノ)
モーリン・フォレスター(アルト)
エルンスト・ヘフリガー(テノール)
ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
合唱:聖ヘトヴィッヒ大聖堂聖歌隊
発売:1974年
LP:ポリドール(HELIODOR) MH 5006
「おお、友よ、このような音ではない!もっと心地のよい、もっと喜びに満ちた歌をうたおうではないか!」(フリードリッヒ・フォン・シラー:「歓喜の頌歌」より、渡辺譲・訳)で始まる、「第九」の第4楽章の独唱&合唱を毎年、暮れに聴かないと年が明けないという人が、日本には少なからずいる。この現象は、どうも日本だけのようだが(ベルリン・フィルだけは毎年、大晦日に「第九」の演奏会をやっているようだが)、年の締めくくりと、来たるべき年を迎えるには、やはりベートーヴェンの「第九」をおいてほかにはない、と考える人が日本にはとりわけ多い。ベートーヴェンの交響曲は、全てが「頑張って生き抜こう」という人生の応援歌の精神に貫かれているが、とりわけこの「第九」にはその傾向が強く、正月を神聖なものとして迎える多くの日本人にとっては、誠に相応しい曲といえよう。今回のLPレコードは、数ある「第九」の中でも、取って置きともいうべき録音を紹介したい。49歳という若さで急逝したハンガリー生まれの名指揮者フェレンツ・フリッチャイ(1941年―1963年)がベルリン・フィルを指揮したもの。フェレンツ・フリッチャイは、ドイツを中心にヨーロッパやアメリカで活躍し、ハンガリー国立交響楽団音楽監督、ヒューストン交響楽団音楽監督、ベルリン・ドイツ交響楽団首席指揮者、ベルリン・ドイツ・オペラ音楽監督、バイエルン国立歌劇場音楽総監督などを歴任した。ここでのフリッチャイの指揮ぶりは、深みのある大きな空間の創造と同時に、フリッチャイ独特のリズム感を持った演奏を聴かせており、ベートーヴェンの独唱と合唱を伴ったこの前代未聞の交響曲を演奏するのには正に適役だ。フリッチャイの指揮は、フルトヴェングラー(深遠さ)とトスカニーニ(明快さ)とを足し合わせたかのような指揮ぶりは、現在の指揮者のルーツと言っても過言でないように思われる。それと日本にも馴染深かったスイスのテノールのエルンスト・ヘフリガー(1919年―2007年)、ドイツのソプラノのイルムガルト・ゼーフリート(1919年―1989年)、日本でも絶大なる人気を誇り、惜しくも2012年5月に亡くなったドイツのバリトンのディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ(1925年―2012年)、それにカナダのアルトのモーリン・フォレスター(1930年―2010年)と、豪華な顔ぶれの独唱陣が、魅力的な歌声を披露してくれているのも、何とも懐かしも嬉しいことではある。
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