★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ウィリアム・ベネットのフルートとグリュミオー・トリオのモーツアルト:フルート四重奏曲全曲(第1番~第4番)

2023-11-09 09:38:27 | 室内楽曲


モーツァルト:フルート四重奏曲全曲(第1番~第4番)

フルート:ウィリアム・ベネット

弦楽三重奏:グリュミオー・トリオ

       アルテュール・グリュミオー(ヴァイオリン)
       ゲオルク・ヤンツェル(ヴィオラ)
       エヴァ・ツァコ(チェロ)

発売:1979年

LP:日本フォノグラム(フィリップスレコード) 13PC‐45

 モーツァルトは、4曲のフルート四重奏曲を書いたが、このLPレコードには、その4曲が収められており、フルート四重奏曲の全貌を通して聴くことができる。演奏も、フルートのウィリアム・ベネットと弦楽のグリュミオー・トリオとの息がピタリと合い、この4曲の演奏で、これ以上は望めないほどの見事な仕上がりの演奏を聴かせる。4曲ともいかにもモーツァルトらしい軽快感に満ちたもので、聴いていてわず心が弾むような気持ちにさせられる。この4曲を聴く時は、心が落ち込んでいる時は避けた方が無難かもしれない。屈託がなく、そこらじゅう幸福感に満ち溢れた音楽に仕上がっているからだ。まあ、見方によれば貴族のお遊びの音楽ということもできるかもしれないが、モーツァルトの天分は、そんな俗な見方を遥かに凌駕して、音楽の純粋な喜びに溢れた曲にまとめあげており、曲も短めで、緊張感もほどほどあり、室内楽のビギナーが聴くのに、これほど適した曲はあるまい。昔は、ラジオからこれらのモーツァルト:フルート四重奏曲は、しょっちゅう流されていたが、最近は聴く機会が少なくなっているように思う。どうも最近のクラシック音楽放送は、小難しい大曲だけを重視して、小品の名曲を軽視する傾向があるのではないか。このモーツァルト:フルート四重奏曲第1番~第4番を聴いてそんな思いに駆られた。それに、このような室内楽の小品こそ、LPレコードの音質の特徴であるビロードのような柔らかさがよく合うのだ。フルートのウィリアム・ベネット(1936年―2022年)は、イギリス、ロンドン出身。ロンドンでジェフリー・ギルバートに、フランスではジャン=ピエール・ランパルとマルセル・モイーズに学ぶ。 ロンドン交響楽団、アカデミー室内管弦楽団やイギリス室内管弦楽団ほか多くのオーケストラの首席奏者を歴任した。ソリストとしても国際的に広く活躍をし、イ・ムジチやイギリス室内管弦楽団との共演・録音は世界的に極めて高い評価を得た。1960年代後半に、他のイギリス人のフルート奏者とイギリスのフルートメーカーと協力して、音程を改善した「ベネット・クーパー・スケール」を開発。このスケールは現在世界のフルートの標準になっている。1995年には女王エリザベス2世より、その音楽への貢献に対して名誉大英勲章第4位(O.B.E)を受章。このLPレコードのおいてウィリアム・ベネットは、モーツァルトの曲想にぴったりと合った、フルート特有の美しい音色によって、リスナーを魅了して止まない演奏を披露している。(LPC)

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