★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇シゲティの近代ヴァイオリンソナタ選集

2023-11-02 10:00:40 | 室内楽曲(ヴァイオリン)

 

~近代ヴァイオリンソナタ選集~

バルトーク:ヴァイオリンソナタ第2番
アイブス:ヴァイオリンソナタ第4番「野外集会の子供の日」
ドビュッシー:ヴァイオリンソナタ
オネゲル:ヴァイオリンソナタ第1番

ヴァイオリン:ヨゼフ・シゲティ

ピアノ:ロイ・ボーガス

録音:1959年3月、ニューヨーク

発売:1979年

LP:日本フォノグラム(フィリップスレコード) 13PC‐95

 これは、ハンガリー出身の大ヴァイオリニストのヨゼフ・シゲティ(1892年―1973年)が、バルトーク、アイブス、ドビュッシー、オネゲルのヴァイオリンソナタを1曲づつ録音した記念碑的LPレコードである。シゲティは「シゲティの前にシゲティなし、シゲティの後にシゲティなし」と言われたほどのヴァイオリンの大家である。シゲティ以前のヴァイオリン演奏においては、如何にヴァイオリンの音色を美しく、浪々と奏でるかで、そのヴァイオリニストの評価されていた。これに対し、シゲティの演奏は、ヴァイオリンから美音なんて出すことは考えずに、荒々しい奏法を使ってでも、直接曲の本質に迫るという、それまでのヴァイオリン奏法と真逆な手法を取り入れたのである。このためバッハの曲でもベートーヴェンの曲でも、従来のヴァイオリニストが表現できなかった、その曲が本来持つ本質を抉り出すことに成功したのである。これは到底余人の及ぶ所でなく、“孤高の芸術家”とも評された。シゲティの奏法の特質は、それまであまり演奏されることがなかった近代作曲家の作品にも光を当てることにも繋がった。その成果の一端がこのLPレコードに収められている曲である。例えば、ドビュッシー:ヴァイオリンソナタは、今でこそ多くのヴァイオリニストがリサイタルで取り上げ広く知られているが、この曲が広く知られる前からシゲティは、リサイタルで盛んに取り上げ、そのことが後になってドビュッシーの代表的作品の一つとして定着する切っ掛けとなったのだ。このLPレコードに収められた4曲は、ドビュッシー:ヴァイオリンソナタ以外は、あまり聴く機会がないが、シゲティの名演奏で聴いてみると、それぞれ、なかなか味わいのある曲であることを認識させられる。バルトーク:ヴァイオリンソナタ第2番は、1922年に作曲され、2つの楽章からなる。シゲティはこの曲を大変好んでおり、録音の機会を待ち望んでいたという。アイブス:ヴァイオリンソナタ第4番「野外集会の子供の日」は、1915年に作曲され、3つの楽章からなる。アイブスは、教会のオルガニストとして出発したが、以後、実業界に入り、趣味として作曲活動を続けた。ドビュッシー:ヴァイオリンソナタは、病苦の中で書いた3つのソナタの最後の曲で、3つの楽章からなる。初演は死の前年に行われた。オネゲル:ヴァイオリンソナタ第1番は、1918年に作曲され、3つの楽章からなる。オネゲルは、ヴァイオリンとピアノのための曲を2曲遺している。(LPC)

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