★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ベルリン・フィル八重奏団のモーツァルト:セレナード第13番/喜遊曲第15番

2023-01-16 09:39:18 | 室内楽曲


モーツァルト:セレナード第13番「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」
       ディヴェルティメント第15番

演奏:ベルリン・フィルハーモニー八重奏団

発売:1974年

LP:日本フォノグラフ(フィリップス・レコード) X-5536(839 708)

 モーツァルト:セレナード第13番「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」は、1787年に完成された。この頃モーツァルトは、歌劇「ドン・ジョバンニ」の作曲に取りかかっていた。モーツァルト自身が自作の目録に「小さな夜の曲」(ドイツ語で、それぞれ「Eine=冠詞(英語でいうa)」「kleine=小さい」「Nacht=夜」「Musik=音楽」という意味)という題名を付けたこのセレナードは、もともと全部で5楽章あったものが、いつの間にか第2楽章メヌエットが除かれ、その後どこに行ったかも不明のままだ。そんなミステリアスなセレナードではあるが、いかにも快活なモーツァルトの作品であるところから、現在でも人気のある曲としてしばしば演奏会で取り上げられる。器楽用の多楽章のセレナーデは当時流行していて、モーツァルトはセレナーデを多く作曲したが、この「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」はどのような機会のために作曲されたのかははっきりしていない。一方、ディヴェルティメント第15番は、1777年に書かれた。もともとディヴェルティメント(喜遊曲)は、気晴らしや娯楽を意味する言葉で、これも当時大いに流行った音楽スタイル。モーツアルトのディヴェルティメント第15番は、基本的には気軽に聴くことのできる音楽なのだが、モーツァルトはそれをさらに一歩踏み込んで、大変内容が充実した作品に仕上げており、モーツァルトの隠れた名曲と言ってもいいほどの名品となっている。楽器編成は、サロン向きにヴァイオリン2、バス(チェロとコントラバス)、ホルン2という比較的小さな編成となっている。1777年にザルツブルグで書かれた。これはアントニオ・ロドロン伯爵夫人のためにつくった作品で、第2楽章と終楽章の主題に民謡を用いて全体が親しみやすい感じに仕上がっているのが特徴と言える。演奏しているベルリン・フィル八重奏団は、1928年に結成され、以後メンバーを変えながら、現在でも活発な演奏活動を行っている。このLPレコードでは、ヴィオラ奏者として土屋邦雄(1933年生まれ)が名を連ねている。土屋邦雄は、東京芸術大学で学んだ後、NHK交響楽団に入団。その後、ドイツに渡り、1959年、ベルリン・フィルの試験を受け合格。以後ベルリン・フィルのメンバーとなる。2001年、ベルリンフィルを退団後、本拠をベルリンに置きながら、日本にほんにおいて音楽活動を展開している。このLPレコードでのベルリン・フィルハーモニー八重奏団の演奏は、セレナードは非常にゆっくりとしたテンポで、室内楽的な緻密な演奏を繰り広げる一方、ディヴェルティメントにおいては、テンポの速い躍動感に重点を置いた演奏をしており、リスナーは、モーツァルトの世界を十二分に堪能することができる演奏内容となっている。(LPC)

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