★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ジネット・ドワイアンのメンデルスゾーン:無言歌集(第1巻~第4巻)

2020-12-14 09:42:21 | 器楽曲(ピアノ)

メンデルスゾーン:無言歌集 

 第1巻 作品19b 甘い思い出/後悔/狩りの歌/ないしょ話/眠れぬままに
          /ヴェネチアの舟歌
 第2巻 作品30  めい想/安らぎもなく/慰め/道にまよって/小川/ヴェネチアの舟歌
 第3巻 作品38  宵の明星/失われた幸福/詩人のたて琴/望み/情熱/デュエット
 第4巻 作品53  浜辺で/浮き雲/胸さわぎ/心の悲しみ/民謡/飛しょう

ピアノ:ジネット・ドワイアン

発売:1978年10月

LP:日本コロムビア OC‐8028‐AW 

 このLPレコードに収められているのは、ジネット・ドワイアン(1921年―2002年)のピアノ独奏による、メンデルスゾーンの無言歌全集1(第1巻~第4巻)である。無言歌とは何か?と改めて問われると、なかなか正確な答えが出にくいものである。メンデルスゾーンの無言歌集は、ピアノによる歌曲とでも言ったらよいのであろうか。いずれもが小品で、メロディーが流れるようにピアノで演奏され、一曲一曲が独立した抒情歌のような雰囲気を持っている。メンデルスゾーンの場合、1巻ごとに6曲が収められている。メンデルスゾーンは、手紙にも楽譜を書いて旅先の情景を曲にして書き送ったいう。そんなメンデルスゾーンが、ちょっとした感情を一曲一曲の短い曲に託したものが、この無言歌集なのである。すべての曲に名称がつけられているが、メンデルスゾーンが付けたのはごく一部で、ほとんどは、第三者が後から付けたもの。ただ、それらを聴いてみると、名称にぴたりと一致する曲も少なくはなく、あたかも最初から付けられたように感じてしまうほど。このLPレコードで演奏しているジネット・ドワイアンは、1932年にパリ音楽院に入学しピアノを学ぶ。17歳の時にピアノと和声、伴奏の3部門でプルミエ・プリをとって卒業。1939年「ガブリエル・フォーレ国際コンクール」で優勝を果たす。第二次世界大戦後は、夫のヴァイオリニストのジャン・フルニエ(名チェリストのピエール・フルニエの弟)とのデュオおよびソロ活動を展開した。1958年夫婦で来日もしている。ジネット・ドワイアンのピアノ演奏は、常に暖かく、ゆったりとして、優雅な雰囲気がそのが持ち味であるが、このLPレコードでは、その特徴が最大限に発揮され、極上の味のメンデルスゾーン:無言歌集をリスナーに届けてくれている。勿論、このメンデルスゾーン:無言歌集の演奏は、一曲一曲の曲想に合わせて、ドラマチックに演奏する手法もあろう。それはそれで、それぞれの小曲の性格を際立たせるという意味では存在意義があるのであるが、この歌集を、メルヘンの世界のおとぎ話みたいに捉えたいリスナーにとっては、ジネット・ドワイアンほどピタリと合うピアニストは他にはいまい。一曲一曲の自己主張はそれほど強くはないが、クラシック音楽の捨てがたい魅力を内包しているのが、この曲集なのである。その意味では、これからも聴き継がれるべき曲集なのだ。そして、この曲集の最良のピアニストの一人がジネット・ドワイアンなのである。その意味から、これは、後世に残しておかねばならない録音の一つだと私は感じる。(LPC)

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