「植草一秀の『知られざる真実』」
2018/09/21
日本の真実を知り世直しを断行しよう
第2144号
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昨日、9月20日のグローバリズムを考えるシンポジウムには、雨天にもかか
わらず、多くの方に参加賜り、深く感謝申し上げたい。
シンポジウムでは、内田聖子さん、山田正彦元農水相、私から話をさせていた
だいた。
時間の制約で質疑の時間が短くなってしまったが、現在の日本の問題点につい
ての理解を深め、世界の各地で広がる反グローバリズムの活動につても貴重な
情報を共有できたと思う。
安倍政治が熱烈に推進しているTPPや日欧EPAなどの枠組みは、グローバ
ルに活動を拡大する世界の巨大資本の利益極大化を目的とするものである。
巨大資本の利益極大化は一般市民の利益を極小化するものである。
大資本が安倍政治を支持、歓迎することは順当であるが、一般市民が安倍政治
を支持することは適正でない。
市民にとって大事なことは、真実を正確に把握することである。
グローバリズムについてヘレナ・ノーバーグ・ホッジさんは次のように述べる
(『いよいよローカルの時代~ヘレナさんの「幸せの経済学」』、ヘレナ・
ノーバーグ・ホッジ、辻信一、大槻書店、2009年)
「多国籍企業は、すべての障害物を取り除いて、ビジネスを巨大化させていく
ために、それぞれの国の政府に向かって、ああしろ、こうしろと命令する。
選挙の投票によって私達が物事を決めているかのように見えるけれども、実際
にはその選ばれた代表たちが大きなお金と利権によって動かされ、コントロー
ルされている。
しかも、多国籍企業という大帝国は、新聞やテレビなどのメディアと、科学や
学問といった知の大元を握って、私達を洗脳している。」
(鈴木宣弘氏による『自由貿易下における農業農村の再生』所収論文での記述
より引用)
グローバリズムの本質を極めて正確に記述したものだ。
この指摘のなかでとりわけ重要な点は「多国籍企業という大帝国は、新聞やテ
レビなどのメディアと、科学や学問といった知の大元を握って、私達を洗脳し
ている」という部分だ。
大資本はその資本力によってメディアを支配している。
市民は自分でものごとを判断しているように錯覚するが、その判断は、ほとん
ど場合、メディアの情報誘導によって形成されたものである。
また、政治について、私たちは選挙の投票によって自分たちでものごとを決め
ているように錯覚するが、実際にはその選ばれた代表たちが大資本の資金力に
よって動かされている。
結局のところ、すべてが巨大資本の資金力によってコントロールされてしまっ
ているのである。
この巨大なメカニズムを正確に理解し、把握することが重要である。
そのうえで、そのメカニズムの是非を市民の目で再評価し、是正を図ることが
重要なのだ。
この意味での「知られざる真実」を知ることが極めて大切だ。
安倍政治をメディアの情報誘導に乗せられて支持してしまうことは、市民が自
分で自分の首を絞めることに等しいと言える。
自民党の党首選が実施されて安倍晋三氏が3選を果たした。
安倍政治が当面は残存することが決まった。
しかし、自民党内部においてさえ、安倍支持に著しい翳りが生じていることが
明らかになった意味は大きい。
安倍首相は党首選に際して、権力を笠に着た見苦しい締め付けを展開した。
党首であり首相である安倍氏は強大な人事権を有している。
この人事権に影響を受けて国会議員の多数が安倍氏に投票したが、それでも事
前の見通しと比較すると、安倍氏は得票を大幅に減らした。
他方、直接的な人事権の影響が少ない党員票では投票結果は55対45の僅差
になった。
安倍陣営の国会議員が党員に強く働きかけたにもかかわらず、石破氏を支持す
る党員票は安倍票に肉薄したのである。
選挙結果に大きな影響を与えたのは、石破氏が明らかにした日本経済の現状に
ついての指摘である。
アベノミクス下で大資本の利益は拡大し、株価が上昇したのは事実だが、その
裏側で労働者の実質所得が大幅に減少し、地方経済の疲弊が進行している。
安倍内閣のグローバリズム推進政策によって、日本の農林水産業が存亡の機に
立たされている。
この事実の指摘が、とりわけ地方における党員票の造反をもたらしたのだと言
える。
人々は真実を知ることによって行動を変化させる。
グローバリズムの荒波を和らげて、市民の幸福を追求する政治と社会を実現す
るには、まずは、私たちが真実を正しく知ることが必要不可欠である。
いよいよ、安倍政治の終わりが始動することになる。
安倍首相は強大な人事権で議員票を獲得した。
しかし、配分できるポストには限りがある。
さらに、官房長官、財務相、党幹事長などの要職では留任が見込まれている。
人事権というエサに引き寄せられた圧倒的多数の議員にポストは配分されな
い。
この瞬間から離反が始動することになる。
他方、主権者の間には反安倍の空気が充満している。
人々の暮らしをまったく改善させない安倍政治の真実に、多くの人々が気付き
始めている。
安倍首相がアピールするアベノミクスの成果は完全なワンパターンで、その内
容は、少し注意してみれば、一般庶民の生活改善を示すものでないことが分か
る。
大企業の利益が増えた、株価が上がった、外国人訪日客が増えた、などの事象
は庶民の暮らしに無関係である。
雇用者数が増えて、有効求人倍率が上昇したのは事実だが、何よりも大事な実
質賃金が大幅に減少している。
雇用が増えたと言っても、その大半が非正規の労働者である。
正規労働者の比率は急激に低下し続けている。
この現実をもたらしてきたのがアベノミクスなのである。
石破氏は自民党党首選で、この事実の指摘に踏み切った。
この指摘が正鵠を射ているために効果は大きかったのだ。
他方、多くの人々が食の安全、食の安心にも関心を強めている。
世界的にこの流れが強まっていることが背景にある。
食の安全、安心に対する米国と欧州の対応は対照的である。
米国が大資本の利益を優先して食の安全、安心よりも企業の利益拡大を優先し
ているのに対して、欧州では伝統的に食の安全に対する人々の意識が先鋭的
で、食の安全について「予防原則」が重視されている。
危険性が指摘される食品について、その安全性が確認されるまでは警戒的な対
応が取られている。
米国では逆に、食品の危険性が「科学的に立証されるまでは」規制をかけない
との対応が取られている。
しかしながら、現実に各種疾病が増加している現実が確認されている。
安倍政治はこのなかで、米国流の対応を日本に強要する姿勢を強めている。
安倍内閣はTPP交渉に参加するために、米国が呑むことを要求した事項を丸
のみにした。
その結果として、大資本の利益拡大のための枠組み構築が急激な勢いで整備さ
れつつある。
とりわけ顕著なのが、食の安全に関する規制緩和である。
世界の潮流は食の安全を確保する方向に向かっているが、安倍政治は逆の方向
に進んでいる。
重大な健康被害が発生する恐れの高い農薬、添加物などの使用に関する規制緩
和が激しい勢いで実行されている。
米国や豪州産の牛肉が安く食べられるようになることが喧伝されて、日本国民
による消費量が急増しているが、これと並行して乳がんなどの罹患率も急激に
上昇している。
国民の命と健康を守るためには、「予防原則」を基軸にした対応が必要である
が、日本では米国流の「科学的立証」を盾にした規制緩和、規制撤廃の動きが
基軸に置かれている。
労働関連の規制撤廃も、その狙いはあくまでも大資本のコスト削減を後押しす
ることにある。
労働規制改変に際して、過労死事案の犠牲になった元電通職員の高橋まつりさ
んの事例が大きく取り上げられたが、結局、高橋まつりさんは、労働規制緩和
の広告塔として利用されただけだった。
目的のためには手段を問わないという、卑劣な行動が広がっている。
それにもかかわらず、人々の認識が遅れているのは、人々が入手する情報の多
くを大資本が支配してしまっているからなのだ。
こうした歪んだ情報空間のなかで真実の情報を得ることが難しくなっており、
この現状を打破するためにも草の根の活動が重要になる。
草の根から真実の情報を発信する。
幸い、インタネットの情報空間には、草の根からの情報発信を行う余地があ
る。
この風穴から真実の情報を発信し、それを広げて市民全体に情報を浸透させる
ことが求められている。
その地道な活動が、やがては政治全体、社会全体を大きく変革する原動力にな
る。
イタリアにおける政治の大きな変化は、この可能性を立証したものであるとも
言える。
希望をもって前進し続けなければならない。
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