「植草一秀の『知られざる真実』」
2018/08/07
財務省が消費税増税を熱烈推進する理由
第2016号
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日本経済に深刻な影響を与えるのに、財務省はなぜ消費税増税に突き進むの
か。
安倍内閣は消費税率を8%から10%に引き上げることを2度延期した。
安倍内閣は2014年4月に消費税率を5%から8%に引き上げた。
消費税増税を強行実施すれば日本経済は深刻な不況に陥る。
日本経済を撃墜することを避けるべきだと私は主張した。
『日本経済撃墜-恐怖の政策逆噴射-』(ビジネス社)
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これに対して日本経済新聞は、
「消費税増税の影響軽微」
という大キャンペーンを展開した
1997年4月に消費税率を3%から5%に引き上げたときとまったく同じ
キャンペーンだった。
そして、1997年も2014年も、日本経済は深刻な不況に陥った。
消費税増税の影響は「軽微」でなく、極めて「甚大」だった。
1997年の消費税増税を決定、実施したのは橋本龍太郎内閣だった。
橋本内閣が消費税増税の方針を閣議決定したのが1996年6月25日。
日経平均株価は1996年6月26日の22666円を転換点に大暴落に転じ
た。
1998年10月9日の12879円まで、2年3ヵ月で1万円の大暴落を演
じた。
これに連動して、金融危機が発生した。
1997年11月以降、三洋証券、北海道拓殖銀行、山一證券、日本長期信用
銀行、日本債券信用銀行が相次いで破綻していった。
日本経済は金融恐慌の淵にまで足を踏み入れたのである。
橋本内閣は1998年7月の参院選に大敗して内閣総辞職に追い込まれた。
不良債権問題というマグマが存在するなかで、性急な大型増税を強行したこと
で日本経済は深刻な金融危機に突入してしまったのである。
2014年も日本経済は深刻な不況に陥った。
生産活動は2014年1月をピークに大幅に落ち込んだ。
極めて深刻な消費税増税不況が日本経済を襲ったのである。
二度とも日本経済新聞が「消費税増税の影響軽微」という大キャンペーンを展
開した。
「日本経済新聞」は「日本重罪新聞」に名称を変更するべきだろう。
2014年増税の場合は、4月増税に続いて、翌2015年10月に、消費税
率をさらに10%に引き上げることを決めていた。
この増税を実施していたなら、日本経済は完全に奈落の底に転落していたはず
だ。
拙著『日本の奈落』(ビジネス社)
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上掲書では、2014年内に安倍内閣が解散総選挙を打つ可能性を言及した。
安倍首相は2014年12月に総選挙を実施し、これに合わせて2015年1
0月の消費税増税を2年半延期する方針を掲げたのである。
増税強行実施によって日本経済を撃墜しておきながら、2015年10月の再
増税を延期する方針を打ち出したことで、安倍内閣はこの選挙に勝利してし
まった。
そして、2016年7月参院選に際しても、再び2017年4月に実施すると
した消費税増税を延期して選挙に臨んだのである。
2016年5月に伊勢志摩サミットが開催された。
2015年央以降、中国株価が急落して、世界的な同時株安が進行した。
日本円は2015年6月の1ドル=125円から2016年6月の1ドル=9
9円へと急激に上昇した。
この影響もあり、日経平均株価も2万円水準から1万5000円水準へと急落
した。
この状況下で、安倍内閣は、サミットにおいて「リーマンショック直前の状況
と似ている」という主張を展開。
これを大義名分として消費税増税の2度目の延期を決定した。
2016年5月は中国株価が急落した後の局面である。
したがって、リーマンショック直前の状況ではなく、喩えるなら「リーマン
ショック直後の状況と類似している」というのが適正であり、安倍内閣の経済
分析能力の低さが露わになったが、いずれにせよ、この理屈で消費税増税を延
期して参院選に臨み、議席を維持したのである。
そして、延期した消費税増税の時期が再び迫りつつある。
2019年10月の増税であるから、本年末の税制改革大綱で決定しなければ
ならない。
年内がタイムリミットなのである。
財務省は消費税増税断行の構えを崩さない。
財務省は森友問題で重大な刑事犯罪に手を染めた。
10億円の国有地を実質200万円で払い下げる行為は、刑法上の背任罪に該
当する。
14の公文書の300個所以上を改ざんして虚偽の公文書を作成した行為は刑
法上の「虚偽公文書作成罪」に該当する。
検察は刑事事件として立件する必要があったが、腐敗し切った検察当局は、こ
の重大犯罪を無罪放免にした。
財務省の重大犯罪が適正に刑事事件として立件されていれば、消費税増税など
完全に吹き飛んでいたはずだ。
しかし、刑事司法を不当支配する安倍内閣は、この重大犯罪を握り潰したので
ある。
公文書改ざんは財務省が組織ぐるみで実行した前代未聞の巨大犯罪である。
その公文書管理の総責任者は財務省大臣官房・官房長であるが、改ざん時に官
房長の職位にあった岡本薫明氏を、安倍内閣はあろうことか事務次官に昇格さ
せた。
主権者国民をなめ切っているとしか言いようがない。
そして、財務省は森友事件など、どこ吹く風で2019年10月の消費税増税
実現を虎視眈々と狙っているのである。
しかし、2019年夏には参院選がある。
消費税率が10%に引き上げられるなら、日本経済は間違いなく大転落する。
株価も急落することになるだろう。
参院選最大の争点が消費税問題になることは想像に難くない。
安倍首相は3度目の消費税増税延期を打ち出ししたいところだろうが、財務省
は安倍首相のスキャンダルを握っている。
2018年に安倍首相が失脚するのを防いだのは、財務省だからである。
日本経済が悪化するのが明白なのに、なぜ財務省が消費税増税に突き進むの
か。
その理由はどこにあるのかを問う質問が寄せられた。
回答を3点に要約して示しておきたい。
第一は、財務省が、日本経済がどうなろうと関係ないと考えていること。
第二は、財務省が景気に関係なく安定的に税収が入る消費税のウェイトを高く
することを追求していること。
第三は、財務省が巨大資本と富裕者の課税を軽減して、庶民に重税をかけるこ
とを目指していることだ。
巨大資本と富裕者と、そして利権政治勢力のための税制を実行することが、財
務省天下り利権の維持拡大につながるからだ。
国民の利益など何一つ考えていない。
ただひたすら自分たちの利権拡大だけを追求している。
これが財務省の現実である。
詳細については稿を改めて記述したいと思う。
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