曲学阿世:真実を追求し、虚実の世間に迎合するようなことはしたくない。

真実を曲解し不正な情報によって世間の人々にこびへつらい、世間にとり入れられるような、ことはしたくない。

米国は尖閣日中対立を望まず軍事行動も取らない

2014年04月30日 17時46分00秒 | 政治経済、社会・哲学、ビジネス、
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日本のマスメディアのなかで、社会の木鐸としてのメディアの役割を果たす存
在が極めて少ない。

情報空間の貧困さが日本の民主主義の健全な発展を阻害している。

辛うじていくつかのメディアがジャーナリズム精神を備えている。

こうした良質なメディアを市民が支援し、育ててゆく必要がある。

メディアと市民は相互依存の関係にあり、メディアが市民の判断力を養うとと
もに、市民が良質メディアを育てる責務を負っている。

数少ない良質メディアと言える、北海道新聞と東京新聞が最新の世論調査結果
を公表した。

東京新聞=中日新聞は4月30日、

「9条改憲、反対62%に増 解釈改憲も半数反対」

の見出しで、憲法改正、集団的自衛権行使に関する世論調査結果を公表した。

http://goo.gl/JZHjSC

同紙が実施した世論調査結果によると、

憲法9条について、

「変えない方がよい」が62%で、

「変える方がよい」の24%

を大きく上回った。



安倍首相が目指す集団的自衛権の行使容認に向けての9条の解釈改憲でも、

「反対」が50%を占めて、

「賛成」の34%

を大きく上回った。

原発再稼働については、

「反対」が61%で、

「賛成」の30%を

大幅に上回った。



北海道新聞も世論調査結果を公表した。

http://goo.gl/jC6qiJ

憲法改正については、

「全面的に改めるべきだ」が8%、

「一部を改めるべきだ」が52%、

改憲派は昨年12月の前回調査より10ポイント減った。一方、

「改正する必要はない」は39%

で調査前回より11ポイント増えた。

集団的自衛権の行使を容認する解釈改憲については、

「集団的自衛権の行使を認めない」が45%で、

「行使できるようにする」の40%

を上回った。

憲法9条の「陸海空軍その他の戦力は保持しない」という条文については、

「変更しなくてもよい」が51%

「変更して、自衛隊を持つことを明記すべきだ」が35%

「変更して、軍隊を持つことを明記すべきだ」が10%

だった。



二つの新聞社が実施した世論調査結果は、憲法9条改正および集団的自衛権行
使についての日本国民の慎重な判断姿勢を示している。

オバマ大統領が来日して発表された日米共同声明に、集団的自衛権についての
言及が盛り込まれてことを、安倍首相は集団的自衛権行使を容認する方向での
憲法解釈変更を強行するための根拠に用いようとしているが、共同声明の文言
は、必ずしも安倍首相の意図を支持するものではない。

東京新聞=中日新聞が4月29日付「こちら特報部」で、

「オバマ発言を「我田引水」」

の見出しで、日米首脳会談、共同会見、共同声明について論評している。

このなかで、集団的自衛権行使容認の方向での憲法解釈変更に関連して日米共
同声明に盛り込まれた文言が、事実とかい離して喧伝されていることが指摘さ
れている。

日米共同声明の日本語版では、

「米国は,集団的自衛権の行使に関する事項について日本が検討を行っている
ことを歓迎し,支持する。」

と表記された。

この部分の英語版の表現は次の通りである。

“The United States welcomes and supports Japan's consideration of the
matter of exercising the right of collective self-defense.”

米国が歓迎(welcome)し、支持(support)するのは、日本の集団的自衛権行
使に関する、検討(consideration)である。

日本の集団的自衛権行使を歓迎し、支持するものではないのである。

ジャパンハンドラーの一人として知られるアーミテージ元国務副長官でさえ、
日米首脳会談直前の4月22日に、自民党の石破茂幹事長と極秘に会談し、集
団的自衛権について「急ぐ必要はない」という考えを伝えたことが報道されて
いる。

集団的自衛権行使容認に向けての憲法解釈変更、憲法改定、そして、原発再稼
働に突き進もうとしている安倍晋三政権の行動を、日本の主権者は支持してい
ない。

そして、安倍晋三氏が懸命に偽装しようとしている、日米関係の強化の現実も
存在しない。

日本の主権者は真実を正確に認識しないと、安倍政権によって危険極まりない
状況に連れてゆかれてしまうことになる。



報道において第一に重要なことは、

「真実を伝えること」

である。

オピニオン、主義主張が多様に存在することは構わない。

メディアにはそれぞれの思想、哲学があるだろうから、その主義主張に基く論
評が示されることはまったく構わない。

ただし、日本においては、多種多様な主義主張がまんべんなく示されることが
ない。

マスメディアの論調が著しく偏っている。これが問題である。

マスメディアを特定少数の利害関係者が占有してしまい、このマスメディアが
日本の情報空間の大半を占拠してしまっているから、多種多様な主義主張が、
広く市民に伝達されることがない。

ここに大きな問題がある。

しかし、それ以前の問題として、メディアが事実を歪めて報道しているとすれ
ば、それはより重大な問題である。



日米首脳会談、日米首脳共同会見、日米共同声明について、今回のケースほ
ど、メディアの事実関係報道が錯綜したことはなかったのではないか。

そもそも、一連のイベントについてのトップニュースを、

「尖閣は安保適用範囲」

としたことが、著しく不自然である。

大統領がこのことを明言したのは初めてだというが、このことを米国政府は再
三にわたって明言してきているのである。

日米安保条約第5条は「日本施政下の領域」について記述した条文で、尖閣が
日本施政下にあることは周知の事実であり、米国は尖閣が安保条約第5条の適
用範囲に含まれることを再三明言してきている。

今回の日米首脳会談、共同声明は、これを追認しただけのことであって、まっ
たく「ビッグな」ニュースではない。

日本にとって重要なのは尖閣領有権の問題であろう。

その領有権について、米国は、日本の立場を支持するとは言わないことを再三
明言している。

オバマ大統領は共同会見で、わざわざこの点に言及した。

「ビッグな」ニュースということでは、こちらの方がはるかに重要で、問題の
核心に関わる事実である。



日本の主権者の多くが、この事実関係を正確に把握できていないと思われる。

米国大統領が「尖閣は安保条約の適用範囲」であることを明言したことを大
ニュースとして伝え、

「オバマ大統領は尖閣諸島が米国による日本防衛義務を定めた安保条約の適用
範囲であることを明言した」

と、捕捉して説明する。

主権者の多数は、

「米国が尖閣は日本の領土であることを認め、中国が攻めて来たら、日本のた
めに米軍を出動させる」

ことを確約したと理解してしまう。

マスメディアは、こうした「誤導」を狙っているのである。



一番大事なことは、尖閣諸島の領有権について、米国が、

「尖閣は日本のものである」とも、「中国のものである」とも、

言っていないという事実である。

米国は尖閣諸島が領有権についての係争地域であるとしているのだ。

ところが、日本政府は、

「尖閣は歴史的にも、国際法上も日本固有の領土であって、領有権問題=領土
問題は存在しない。」

と言っている。

この日本の主張を米国は認めていないというより、否定している。

メディアが事実=真実を伝えることを責務とするなら、まずは、この点を誤解
の無いように主権者に伝えることが責務である。



領有権について米国は尖閣諸島の日本領有を認めていない。

裏を返せば、「尖閣諸島は中国のものである」可能性を米国は否定していない
のだ。

その尖閣で、日中間の紛争が生じたときに、米国が日本のために軍隊を出動さ
せるかどうかは非常に疑わしい。

オバマ大統領は、この点に記者から質問されて、「軍隊を出動させる=一線を
超える」可能性を肯定しなかった。

オバマ大統領がここで強調したのは、

「日中間の関係悪化を安倍首相はエスカレートさせるな」

との考えであった。

同時にオバマ大統領は安倍政権が日中間の関係を悪化させることは、

「重大な誤り」

であると厳しく糾弾したのである。

この発言こそ、真の意味での「ビッグ」ニュースだった。



さらに、これまでのメルマガ記事と重なるが、日米安保条約は米国の日本防衛
義務を定めていない。

定めているのは、

「自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動する
ことを宣言する

ことだけである。

米国が「自国の憲法上の規定及び手続」に従って、米軍を出動できない可能性
が十分に考えられるのだ。

メディアはこの最重要事実を一切伝えない。

伝えないのではなく、「米国が尖閣防衛義務を負っている」という虚偽の情報
を流布しているのである。



こうした事実を踏まえると、TPPについての日本のメディア報道を深く疑う
必要がある。

TPP交渉において、日本政府が米国の圧力に押されて、大幅に譲歩したこと
だけは確かだろう。

そもそも、安倍自民党は主権者に「6項目の公約」を提示した。

しかし、この「6項目の公約」は安倍自民党によって、木端微塵に破壊されて
いる。

この時点で、もはや安倍政権は完全敗北なのである。

「6項目の公約」を守る考えがあるなら、安倍政権はとっくの昔に、TPP交
渉のテーブルから、椅子を蹴って離れていなければおかしいのだ。

公約を完全に破棄して、しかも聖域5品目の関税率設定についても、大幅譲歩
を繰り返している。

米国の要求をほぼ呑み尽くしたことを、「実質合意」と表現するなら、これは
事実に近いのかも知れない。

しかし、それは日本政府の「成果」ではなく、「敗北の象徴」でしかない。



また、事実関係を重視するなら、合意不成立はあくまで不成立であって、「実
質」合意などという表現は、まやかし以外の何者でもない。

60点獲得で合格の試験があったとしよう。

ある者が合格点に達することができず「不合格」になったとしよう。

このとき、試験の結果としては「不合格」という事実だけが圧倒的に重要な重
みを持つ。

受験者は潔く不合格を認めるしかない。

ところが、負け惜しみの強い受験者は、

「自己採点してみたところ、自分の得点は55点であったので、これは「実質
合格」だと言える」

と言っているようなものだ。

読売、TBSが懸命に「実質合意」と喧伝していたが、ここまで政治権力にす
り寄るのは、いささか見苦しい。

枕草子風に表現すれば、「すさまじきもの」、「あさましきもの」ということ
になる。



安倍首相が、オバマ大統領とのすしレストランでの夕食会で、オバマ大統領が
仕事の話ばかりしたことを「愚痴った」と報道されているが、安倍首相はオバ
マ大統領が日本に観光旅行に来たのだとでも思ったのだろうか。

限られた首脳会談の時間を一秒でも外交交渉に充てようとした行動を、愚痴る
方がおかしいのではないか。

共同声明に「尖閣諸島を含む日本施政下の領域」という文言が盛り込まれたも
のの、オバマ氏が強調したのは、日中、日韓の友好関係構築に向けての日本側
の努力であった。

それは、安倍政権が日中関係や日韓関係をいたずらに悪化させていることに対
する批判、避難でもあった。

現にオバマ大統領は「重大なあやまり(=profound mistake)」だと明言した
のである。

この「事実」をありのままに伝えることなくして、本当の報道は成り立ちよう
がない。

事実を正確に伝えず、事実でないことをあたかも事実であるかのように伝えて
いる日本のマスメディアの姿勢は、大本営の生き写しである。

また、民主主義の基本は、主権者の意思の尊重である。

憲法改定、憲法解釈変更、原発などについて、日本の主権者がどのような判断
を有しているか。

これを正確に把握して、その民意に沿って政治を運営すること。

これが民主主義の基本である。

残念ながら、安倍政権にはその根幹の基本姿勢が欠落している。

※植草一秀の『知られざる真実』2014年4月30日より「転載」

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