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真実を曲解し不正な情報によって世間の人々にこびへつらい、世間にとり入れられるような、ことはしたくない。

日本を世界一の貧困大国に転落させる安倍政権

2016年01月20日 08時00分42秒 | 政治経済、社会・哲学、ビジネス、

                   

 
 
 

                    「植草一秀の『知られざる真実』」

                             2016/01/19

 日本を世界一の貧困大国に転落させる安倍政権

               第1344号

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バス事故に関連して、

「人手不足」

の言葉が流布されている。

介護の現場でも、しばしば

「人手不足」

の言葉が使われる。

しかし、これは、問題の本質をすり替える、

責任隠ぺいの論議であるから十分な注意が必要だ。

問題の本質は「人手不足」ではなく「労働条件の悪さ」なのだ。

ツアーバスの運転手の仕事でもいい。

介護の仕事でもいい。

たとえば、給料を2倍にしてみるがいい。

たちまち人手不足は解消するはずだ。

応募者が殺到するだろう。

極端な例を考えれば、物事の本質が見えてくる。

給料を10倍にしてみよう。

もっとはっきりと求職者が増加するはずである。

つまり、問題の本質は、過酷な労働に対して、正当な対価、正当な賃金が提供
されていないところにあるのだ。



介護の現場も、常に人手不足が叫ばれている。

それは、国が介護の仕事の賃金水準を人為的に抑制しているから発生している
現象で、過酷な労働に見合う正当な賃金を設定すれば、たちどころに解決する
類の問題である。

介護の仕事も、深夜のツアーバスの運転の仕事も、いずれも極めて過酷な労働
である。

しかし、現状では、これらの過酷な労働に対して、十分に正当な賃金が支払わ
れていない。

ツアーバスの場合には、競争促進の市場原理至上主義の経済政策、規制撤廃政
策が推進されてきた結果、過当な価格競争が生じ、安全確保のための対応がお
ろそかにされてきたのである。

ドライバーの安全、確実な業務遂行を実現するには、さまざまな取り組みが必
要である。

一言で言えば、優良なドライバーを採用できるほどに、ドライバーの仕事への
求職者が存在することが必要である。

十分に納得のゆく賃金を支払う。

ドライバーの健康状態に問題が生じないための、勤務状況を確保することも必
要だ。

正当な休息、十分な睡眠を確保しなければ、安全な乗客輸送など実現しようが
ない。

また、冬の凍結期のバスツアーであるなら、交通の難所として知られる、碓氷
峠旧道である一般道を走行するようなコース選定などあり得ない。

高速道路ではなく一般道を走行して事故が発生したが、一般道を走行した理由
は、経費の節約以外には考えられない。



現実には、経費を節約するために一般道を走行したと考えられる。

また、大型バスの運転経験の少ないドライバーを雇用することになった背景に
は、この企業が提示する条件で求人に応じた労働者が少なかったことが考えら
れる。

もちろん、事業者に責任がなかったなどと言うつもりはない。

乗客の生命を預かる仕事である以上、規制がどのように設定されているのであ
れ、そのような制約条件とは関わりなく、乗客輸送の絶対安全を確保するため
の行動を確実に取ることは、企業の社会的責任の範疇に入ることだ。

今回の事故を引き起こした企業の責任は厳しく問われなければならない。

しかしながら、このような事故が発生した背景に、政府の大きな責任があるこ
とも、また、紛れもない事実なのである。

人の命にかかわる仕事であるのだから、安全に対する絶対的な規制基準が必要
である。

ドライバーとして勤務する労働者の処遇についても、一定の基準を設定しなけ
れば、上記したような理由で、十分な人材確保が不可能になる。

こうした規制基準を設定せずに、十分な人材を確保できず、事故が発生したと
きに、これを

「人手不足」

の一言で片づけるわけにはいかない。


新自由主義経済政策=効率至上主義経済政策

の推進によって、日本社会に大きな歪みが生まれていることを、私たちは認識
しなければならない。

そのうえで、効率至上主義の市場原理主義、規制撤廃至上主義の闇を明らかに
して、その是正を図らなければならない。



1月18日の参議院予算委員会で、日本共産党の小池晃氏が質問に立った。

小池氏は、日本の国民および子どもの貧困率の高さに関するデータを明示した
うえで、日本が世界最大の貧困大国になってしまっている現実を指摘した。

そのうえで、安倍首相に対し、

「日本が世界最大の貧困大国になっているという認識があるか」

と尋ねた。

しかし、安倍氏は回答しなかった。

「認識がある」

のか

「認識がない」

のか、答えはどちらかでしかあり得ないが、答えなかった。

恐らく、

「認識があるが、認めたくない」

のか、

「認識がなく、無知をさらけ出したくない」

のいずれかの理由によるものだろうが、国のトップがこれでは、この問題は簡
単に解決しないだろう。



小池氏は、この点を問い質したうえで、安倍政権が推進する

法人税減税

消費税増税

社会保障支出削減

の行動を批判した。

私の主張とぴたりと重なる。

この政策スタンスが、日本経済を転落させているのだ。



経済の安定的な発展、持続力のある経済成長は、国民生活の健全な発展なくし
て実現し得ない。

国民経済の健全な発展とは、

すべての国民の生活の向上、生活の安定である。

現在の経済政策の下では、

ほんの一握りの国民の生活だけが突出して上昇する一方、

圧倒的多数の国民の生活が没落している。

そして、下流に追いやられた国民は、生存さえ脅かされかねない、悲惨な状況
に追い込まれているのである。

経済政策運営のあり方には、二つの路線がある。

一つは、弱肉強食の容認、弱肉強食の奨励、である。

しょせん、現実社会は「弱肉強食」の原理が支配しているものである。

勝者と敗者が出るのは当然なのだ。

勝者は多くを獲得し、幸福を得る。

敗者は果実を獲得できず、消え去る。

これが現実であって、どこが悪い。

このような考え方が正しい、と考える人は存在するだろう。



これに対して、もう一つの考え方は、

共生の重視

だ。

人間社会が他の動物社会と大きく異なるのは、人間は、弱肉強食を乗り越え
て、

共に支える

共に生きる

分かち合い、

助け合い、

支え合って生きる

知恵を持っている

というものだ。



米国は典型的な弱肉強食容認、弱肉強食奨励の社会だ。

これに対して、北欧諸国などは、共生を重視していると言える経済政策運営を
実現している。

民主主義国家においては、いずれの道を進むのかについては、その決定権を主
権者である国民が有する。

日本でも、この問題について、主権者である国民が、十分に検討して、進むべ
き道を定めるべきだ。

安倍首相は、弱肉強食社会を是認し、この方向を推奨するのなら、小池氏の質
問に対して、

「日本が世界最大の貧困大国であることを認識している」

と答えたうえで、

「日本社会が弱肉強食社会になることは良いことだと考える」

と、はっきりと言明するべきだ。

格差拡大を推進しておきながら、「格差是正が望ましい」などと、うそ偽りを
述べて平然としている。その、詐欺的な手法が問題なのである。

私は、日本の政治を刷新して、弱肉強食推進の政治を、共生実現の政治に、大
転換するべきだと考える。

そのための政治情勢転換に全力を上げなければならない。




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