「植草一秀の『知られざる真実』」
2018/02/22
労働者を虐げるための「働かせ方改悪」法案
第1975号
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韓国の平昌五輪で多くのアスリートが活躍し、国民の関心が五輪に引き寄せら
れているが、国内では二つの重要事案についての論議が行われている。
NHKは日曜討論で政党討論会を開催するべきである。
国会において重要問題が審議されているが、論点が明確になっていない。
NHKは通常国会開会中に日曜討論での政治討論を行わない姿勢を示している
が、これは安倍政権に対する迎合以外の何者でもない。
おそらく、政権の側がNHKに対して指示、指令を行い、NHKがその指示、
指令に隷従しているのだと考えられるが、このような番組編集姿勢は「公共放
送」に値しないものである。
政府広報機関=御用報道機関=大本営と化してしまっている。
このようなNHKとの放送受信契約を強制することは基本的人権の侵害である
が、法の番人であるはずの裁判所が、行政権力=政治権力の番人と化してし
まっているために、司法も機能しないという絶望的な状況に陥っている。
NHKを公共放送と位置付けるなら、NHKは政治権力の御用機関に堕するこ
とから脱却しなければならない。
通常国会開会中は、少なくとも2週に1回は各党代表者による政党討論を実施
するべきだ。
出席者は政党要件を満たすすべての政党とするべきことも当然のことである。
安倍政権に都合の悪い議案が浮上しているときに、NHKは日曜討論で政党討
論を実施しない。このようなときにきまってテーマに据えるのが「北朝鮮」で
ある。
「北朝鮮」が重要と考えるなら、政党代表者を集めて、政党討論として北朝鮮
問題を扱えばよいだけのことだ。
主権者はNHKに対して、「日曜討論での最低2週に1度の政党討論の実施」
を求める意見を提示しよう。
この国会で、森友学園に対する国有地不正払下げ疑惑が取り上げられている。
時価10億円の国有地が実質タダで払い下げられたのであるから、これは「事
件」と呼ぶべきである。
財務省理財局、近畿財務局による「背任」の疑いが濃厚である。
国有財産を不当に安く譲渡することは財政法によって禁じられている。
財政法違反、背任の疑いが強い事案である。
森友学園と近畿財務局および財務省理財局は、事前に価格交渉をしていた。
森友学園側が実質ゼロでの払い下げを求め、これに対して近畿財務局の池田靖
前国有財産統括官(当時)が
「(籠池)理事長がおっしゃる0円に近い金額まで、私はできるだけ努力する
作業を今やってます」
と答えている音声データが明らかにされている。
事前に価格交渉をしていたという明白な証拠である。
近畿財務局および財務省理財局が森友学園に対して異例の対応を示したのは、
安倍昭恵氏が森友学園の学校用地問題に関与したからであると考えられる。
安倍昭恵氏は新設小学校の名誉校長に就任し、籠池泰典理事長から学校用地の
問題について相談を受けた。
安倍昭恵氏はこれを受けて、公務員秘書の谷査恵子氏に指示して、財務省と折
衝させたのだと考えられる。
その結果として、財務省および近畿財務局が、財政法に違反するような国有地
の不正払下げに突き進んだのだと考えられる。
重大な刑事事件事案であり、本来は、検察当局が適正な捜査を行うべき事案で
あるが、大阪地検特捜部はまったく動かない。
裁判所も検察も完全に堕落し切ってしまっているのである。
この意味で日本は完全なる後進国、前近代国家である。
国会に安倍昭恵氏と佐川宣寿氏を招致して証人喚問を実施するべきことは当然
のことである。
これを安倍政権が拒絶するから、この問題がいつまでたっても終結しないの
だ。
「国会でこの問題ばかりやっている」との批判があるが、この結「果」がある
のは原「因」があるからなのだ。
安倍政権が必要な佐川氏と安倍昭恵氏の証人喚問から逃げ回っているために、
この問題が終結しない。
問題を追及する側を責めるのは筋違いであり、真相解明から逃げ回っている安
倍政権の姿勢が糾弾されるべきである。
そして、安倍政権が今国会に提出を目論んでいる「働かせ方改悪法案」にかか
る不正疑惑が表面化している。
「働かせ方改悪法案」は安倍政権の成長戦略の根幹部分である。
大資本の利益だけを追求して、労働者=一般市民をより劣悪な状況に追い詰め
るための最重要法案が「働かせ方改悪法案」である。
主権者の側に立つ野党は結束してこの法案を完全排除する必要がある。
安倍政権の成長戦略の柱は次の五つである。
農業自由化
医療自由化
解雇自由化
特区創設
法人税減税
さらに加えれば、「各種民営化」を挙げることができる。
安倍政権の「成長」戦略の「成長」とは、「大資本の利益の成長」であって、
「国民の利益の成長」でも「国民の幸福の成長」でもない。
大資本の利益を極大化させることが目標なのである。
世界の主要大資本は国境を超える活動を拡大している。
この巨大資本を「多国籍企業」と呼ぶことがある。
日本の大企業の資本の3分の1がすでに外国資本になっている。
日本企業の装いを示しているが、実態は国籍のないグローバルな利益追求者な
のである。
政治が歪められている主因は企業献金の合法化にある。
政治は金の力で動く。安倍自民党が主権者である国民の幸福のために行動せず
に、大資本の利益極大化のために行動するのは、この「カネの力」によってい
る。
巨大資本が政治勢力に巨大なカネを注ぎ込む。
その結果、政治勢力は主権者国民のためではなく、カネを注ぐ巨大資本の利益
を極大化させるために行動する。
考えてみれば当たり前のことだが、これが日本政治の現実なのである。
だから、企業献金を全面禁止しなければならない。
政治は企業のためのものではなく、主権者国民のためのものである。
憲法は参政権を自然人に一人一票というかたちで付与している。
しかし、企業献金を認めると、資本力を有する大資本がカネの力で政治を支配
してしまう。
主権者のための政治が行われずに、大資本のための政治が横行してしまうので
ある。
だから、企業献金を全面禁止する必要があるのだ。
安倍政権が推進している「成長戦略」の最重要の革新が「労働規制の撤廃」で
ある。
大資本の究極の目標は「労働コストの最小化」にある。
これが資本の利益を極大化させる柱となる施策なのだ。
そのために安倍政権は「働き方改革」を提唱しているが、これは「戦争法制」
を「平和安全法制」と呼び換えたのと同じものだ。
施策の内容は「働かせ方改悪」だが、事実通りに表現すると聞こえが悪いので
「働き方改革」と呼び換えたのである。
労働規制の撤廃によって実現しようとしていることは、
正規労働から非正規労働へのシフト加速
長時間労働の合法化
外国人労働力の導入加速
残業代ゼロ制度の拡大
金銭による解雇の自由化
である。
これらの施策は、大資本が労働者を最低の賃金で使い捨てにすることを促進す
る制度改変であり、「改革」ではなく「改悪」なのである。
「高プロ」と呼ばれる「高度プロフェッショナル制度」や「裁量労働制度の拡
大」は、過労死を促進する制度である。
「出来高払い制度」とは、仕事の成果に対して報酬を支払う制度であり、労働
者は達成するべき成果を出すために、長時間労働を強いられることになる。
一般労働者の残業よりも裁量労働制度下の労働者の方が、残業時間が短くなる
ことはあり得ない。
そうなるなら、雇い主は裁量労働制度下の労働者に、より多い成果を求めるこ
とになるからである。
要するに、各種制度が「何を目的にしているのか」を考えることが重要であ
る。
2001年に小泉政権が発足して以降、「市場原理主義」と呼ばれる考え方が
経済政策の中心に置かれてきた。
「市場原理主義」とは、「市場原理」にすべてを委ねようとするものだが、そ
の結果として生じることは、労働者の所得と処遇が悪化することである。
市場原理にすべてを委ねたのでは、労働者の所得と処遇が守られないからこ
そ、さまざまな規制、労働者保護の施策を採用してきたのである。
その規制や施策を撤廃すれば、労働者の所得と処遇が悪化することは当たり前
のことである。
安倍政権は主権者国民の利益のためではなく、巨大資本の利益を極大化させる
ために行動している。
しかし、このことを主権者国民に悟られてはまずい。
だからこそ、「働き方改革」などという耳に聞こえの良い言葉を用いている
が、こんな偽装に騙されてはならない。
厚生労働省の調査が杜撰極まりなかったことは不幸中の幸いである。
日本経済新聞などは「政争をしている場合か」の見出しで法律制定を急げとの
ヒステリックな論評を掲載しているが、この論議のどこが「政争」なのか。
「労働者を守る」立場からの主張と「労働者を切り捨てる」立場からの主張が
正面からぶつかり合っていることを「政争」と表現するところに、日本経済新
聞の見識の低さが表れている。
経済新聞だからといって大資本の利益だけを代弁すればよいというものではな
い。
「日本経罪新聞」と社名を変更するのがよいのではないかと感じられる。
「働かせ方改悪法案」を完全廃棄することが求められる。
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