セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」

2015-03-22 01:01:48 | 映画感想
 「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」
 (「THE IMITATION GAME」、2014年、英・米)
    監督 モーテン・ティルダム
    脚本 グラハム・ムーア
    原作 アンドリュー・ホッジス 「エニグマ アラン・チューリング伝」
    撮影 オスカル・ファウラ
    音楽 アレクサンドル・デスプラ
    出演 ベネディクト・カンバーバッチ
        キーラ・ナイトレイ
        マシュー・グード

 天才数学者アランは、戦争開始と共に政府機関の面接を受ける事に。 
 目的はナチスの開発した暗号を解読する事。
 メンバーはチェスのチャンピオン等、ユニークな面々。
 不遜で孤高のアランは、チームを拒否するが・・・。

 この作品の言いたい事は何なのか。
 観た直後なので、まだハッキリと解らない。
 簡単に言えば、アインシュタインさえ何とも思わない英国の天才数学者を、
エニグマ(ナチスが作った解読不可能と言われた暗号)との格闘の過程を通
して描いたモノなんだろうけど、それだけでは釈然としないものが有るんです。

 アラン・チューリング(英国の数学者。戦時中、暗号解読に携わる)
 ・21世紀の文明的基礎を作った男(の一人)。
 ・機密上、ある時期まで伏せられていたが第二次大戦を2年早く終わらせ
  たとも、1000万の戦死を防いだとも言われる。(戦時中、チームのメンバ
  ー誰もがアランの功績は、その機密上、公にならないだろうと思っていた)
 ・名門パブリック・スクールに在籍してた時、親は校長から「ここに居たいの
  なら教養を、学者になりたいなら、ここに居るのは時間の無駄です」と言わ
  れたとか。

 冒頭、「これは事実に基づいた物語」と出てきますが、勿論、時間、登場人
物等、かなり脚色されていると思います。
 「基づいた話」で、「真実の物語」とは言ってませんから。(笑)

 まァ、それは兎も角。
 アラン・チューリングという人間にピントを当てて、その人間性、孤独、哀し
みを浮き上がらせるという部分は出来てると思います。
 戦時中を中心に、1951年(作品中の今)、パブリック・スクール、三つの時
代を絡ませ、彼の性格の由縁や偉業、その結末は観てれば自然と解ります。
 でも、何か、それだけじゃないモノを感じるんですよ。
 (イギリスの、いかにも勿体付けた感じが、そうさせるのかも(でも、嫌いじゃ
ないと言うか好き))

 「僕は人間か?機械か?」
 或る人物にチューリングが問いかける言葉。
 その能力故、人間であるチューリングが「神」の仕事を代理してしまった苦悩
は、何となく解る。
 神が唯一と同じように、抜きん出た唯一が抱える底知れぬ孤独も。
 チューリング自身は無神論者だから、その事について、自分の「有罪・無罪」
を決めるのは神でなく機械と思ってるのかもしれない。
 でも、観せらた我々は人間だから、判断なんか出来やしない。
 この、モヤモヤ感は、結局、その辺から来てるのかもしれません。
 突き詰めれば、人が人を正当にジャッジ出来るのか?という事なのかも。
 (差別は功績をも消し去る、という単純なマイノリティ擁護じゃないよね・・)

 役者陣は、皆、適役。
 主演のベネディクト・カンバーバッチは適役で好演、将来、M・ケイン、D・サザ
ーランドくらいの大御所になる気がします。(共通点、顔が長い~ジョークでっせ)
 K・ナイトレイ演ずるジョーンは、パターンの裏をかかれた感じ。(笑)
 1ヶ月で2度もお目に掛るなんて。でも、こういう癖の有る美人は好みのタイプ、
でも、それ以上に、妙に印象に残る不思議な女優さん。(S・ランプリングから気品
を取って、ちょいと顔の造作を雑にした感じ~猫背っぽいのは役作り?)
 今回は、しっかり英国人に見えました。

※「神の仕事」と言っても、近代ですから、システィマチックな筈。
 一人が背負う事じゃないけど、誰かがシステムを発案するわけで。
※MI6が舞台なので、ちょっと、傑作「裏切りのサーカス」を彷彿とさせる所もあり
 ます。
 只、そういうミステリー要素はゼロです。(笑)

 TOHOシネマズ みゆき座
 2015.3.21
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4 コメント

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こんにちは☆ この映画を見ました。 (miri)
2016-09-18 14:16:52
>この作品の言いたい事は何なのか。
> 観た直後なので、まだハッキリと解らない。

随分時間が経ちましたが、答えは出ましたか?笑

>(ナチスが作った解読不可能と言われた暗号)

1918年にドイツで作られて、あとでナチスが採用したそうです☆

> でも、何か、それだけじゃないモノを感じるんですよ。
> (イギリスの、いかにも勿体付けた感じが、そうさせるのかも(でも、嫌いじゃないと言うか好き))
>は神でなく機械と思ってるのかもしれない。
>チューリング自身は無神論者だから、その事について、自分の「有罪・無罪」
>を決めるのは神でなく機械と思ってるのかもしれない。 
>でも、観せらた我々は人間だから、判断なんか出来やしない。
> この、モヤモヤ感は、結局、その辺から来てるのかもしれません。
> 突き詰めれば、人が人を正当にジャッジ出来るのか?という事なのかも。

そうですね~見た人それぞれの立場やら何やらで違っても良いのではないでしょうか?

> (差別は功績をも消し去る、という単純なマイノリティ擁護じゃないよね・・)

私はズバリ、これを第一に言いたかったように思いました♪

>将来、M・ケイン、D・サザーランドくらいの大御所になる気がします。(共通点、顔が長い~ジョークでっせ)

ヒデーこと言いますにゃ☆
あんまり好きではないけど、うまいとは思います。。。 「僕が星になるまえに」とか。

>(S・ランプリングから気品を取って、ちょいと顔の造作を雑にした感じ~猫背っぽいのは役作り?)
> 今回は、しっかり英国人に見えました。

う~ん、二人の「品の良さ」は、そんなに変わらない気もしますが・・・?
イギリス人に見えて良かったです、ホッ。

> 只、そういうミステリー要素はゼロです。(笑)

まぁゼロというか、ほんのちょっとありましたが、主人公の事ではなかったですネ。(ソ連の件)
2番目のおエライさんのやり方というか、あれはそういうスタイルだと思いました☆

私は、学生時代の初恋の相手が、とても結核を患っていたようには演じていなかったのが残念でした。
あと、(ネットで知らない人が書いていて、共感したのですが)
原題だから仕方ないけど、内容に比してお軽く感じるタイトルも残念でしたね~!
全体的には、まぁまぁ良い作品だったと思います。


.
返信する
いらっしゃいませ! (鉦鼓亭)
2016-09-18 22:00:58
 miriさん、こんばんは
 コメントありがとうございます!

随分時間が経ちましたが、答えは出ましたか?笑
>答えというか、一年半経って残ってるのは「神でもない天才の孤独」ですね。

私はズバリ、これを第一に言いたかったように思いました♪
>僕も、それは含まれてると思ってます。

あんまり好きではないけど、うまいとは思います。。。 
>嫌いではないけど、最近、よくお見掛けします。(個性の強い人ですね)

二人の「品の良さ」は、そんなに変わらない気もしますが・・・?
>僕は、やっぱりランプリング>ナイトレイかな。(笑)
ランプリングは自然と匂い立つ感じ、ナイトレイには作ってる感があるんですよね。(汗)

全体的には、まぁまぁ良い作品だったと思います。
>僕の評価も同じくらいで「まぁ良い」かな。
只、これを観ていたお陰で今年の「エクス・マキナ」に、すっと入っていけたという利点がありました。
これ観ていなかったら「チューリング・テスト」の意味が解らず、序盤で躓くところでした。
返信する
こんにちは (宵乃)
2018-02-12 15:52:32
>時間、登場人物等、かなり脚色されていると思います。

遺族に「私たちよりも彼を知ってる」というようなことを言われたらしいので、かなり誠意のある脚色だったんでしょうね。
Wikipediaやインタビュー記事を一通り読みましたが、チューリングが機械を通してクリストファーを復活させようとしたように、この作品を作った人たちは映画を通してチューリングを復活させ、彼の叫びを鑑賞者に届けたかったのかなと思いました。
返信する
いらっしゃいませ! (鉦鼓亭)
2018-02-12 20:18:20
 宵乃さん、こんばんは
 コメントありがとうございます!

かなり誠意のある脚色
>そうですね、今現在から振り返ってるから、ジェンダー思想からの告発を「彼の叫び」として入れた気もしました。
面白く、見応えのある作品でしたが、ちょっと、僕の中では消化不良の所もある作品でした。

今日、「高慢と偏見とゾンビ」を観たのですが、パロディとして中々、面白かったです。
宵乃さん、「プライドと偏見」お好きだったように記憶してますが、ゾンビも入ってるので、お気が向いたらご覧になってみてはどうでしょうか。
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