セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「肉体の冠」

2023-05-29 13:16:21 | 映画感想
 「肉体の冠」(「Casque d'Or」、1951年、仏)
   監督 ジャック・ベッケル
   原案 ジャック・ベッケル  ジャック・コンパネーズ
   脚色 ジャック・ベッケル
   撮影 ロベール・ルフェーヴル
   音楽 ジョルジュ・ヴァン・パリス
   出演 シモーヌ・シニョレ
      セルジュ・レジアニ
      クロード・ドーファン
      レイモン・ビュシェール
      
 19世紀末のパリ、娼婦でヤクザ ロランの情婦でもあるマリーは偶然出会った大工で前科者のマンダに一目惚れしてしまう、マンダもマリーに惹かれるが喧嘩っ早いロランが見逃す筈もなく・・・。

 恋愛モノとなると思考が何でも「ロミオとジュリエット」になってしまう、今回、ちょっとそれに気が付いて、これはもはや病気だなと。
 そんな僕の妄想なので話は9割引で読んで下さい、でも、観ながらロミジュリを思い出したのは事実なのでそう書くしかない。(汗)
 只、「ロミオとジュリエット」一つじゃない、正確には太宰の「走れメロス」だがフランスの監督に影響を与えてる筈がないので(太宰が参考にした物語があるにせよ、どれだけ西洋でポピュラーなのか不明)、同じシェイクスピアから「ヴェニスの商人」を加えたような作品でした。
 つまり、前科者と娼婦のロミジュリ物語で短気で喧嘩っ早いロランがティボルト、親友のレイモンがマキューシオであり「ヴェニスの商人」のバサーニオにあたる、親分のルカは真の悪人の居ないロミジュリには該当者はおらず、これは「ヴェニスの商人」で腹黒く悪巧みするシャイロック、そんな風に考えてしまいました。

 この作品も滑らかなリズム感が心地よい作品、前科者マンダの自首の過程を描かず空のベットで表現するとか、瀕死のレイモンが親分ルカの裏切りを仲間に伝えるシーンを飛ばして仲間達のルカへの視線だけで表現するとか、余計な説明描写を極力減らしてるのがリズム感を生んでるのかもしれません。しがない前科者の大工と娼婦が郊外で遊び呆けてる幸せシーン、どこにそんな金がと思ってしまったのは野暮ではあるけど気にはなりました。(笑)
 電気が余り普及していない時代のパリ(モンマルトル辺り?)の雰囲気も、W・アレンのようなノスタルジーが無く生活感が有って中々、良かった、願わくばロミジュリファンとしては、朝、誰もいない窓辺にショールが一枚掛けられてるというラストが望みだった。(大汗)
 いつも怖いオバサンのイメージがあるS・シニョレ、「悪魔のような女」があるけど漸く綺麗な女優さんだと本当に思った、でも、やっぱり重量感のある女優さんは苦手かな。

  君去りて パリの朝露 儚くも
   虚ろな胸に 宿るものなし

※原題は「黄金の冠」、マリーの髪型の事でしょう。
※セルジュ・レジアニと言えば僕たちの世代では「冒険者たち」の招かれざる四番目の男だけど、若い時を初めて見た、垂れ目は変わりようがないが確かにレジアニだった、大工の役だけど世界一有名な配管工にも似てた。
※ショールがパリの空に舞うのはブレッソンの「やさしい女」。

 R5.5.27
 DVD
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