セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「チャーリング・クロス街84番地」

2023-07-17 17:11:59 | 映画感想
 「チャーリング・クロス街84番地」(「84 CHARING CROSS ROAD」、1986年、米)
   監督 デビット・ジョーンズ
   原作 ヘレーン・ハンフ 「チャリング・クロス街84番地」
   脚本 ヒュー・ホイットモア
   撮影 ブライアン・ウェスト
   音楽 ジョージ・フェントン
   出演 アン・バンクロフト
      アンソニー・ホプキンス
      ジュディ・デンチ

 第二次大戦が終わって間もない頃、売れない小説家だったヘレーヌはNYでは高く手に入らない英文学の古書をロンドン、チャーリング・クロス街84番地にある古書専門店へ発注する、思わぬ安価で送られてきた事が20年以上の付き合いの始まりだった・・・。

  予告編 https://trailers.moviecampaign.com/detail/6989

 18世紀にフランスのラクロが「危険な関係」という書簡体小説を発表してるが、それにちなめば本作は「(往復)書簡体映画」と言ってさしつかえないと思う。
 20数年の時間が顧客と店主という関係を、小さな小さな積み重ねによって一回も会わずして無二の親友にしてしまう様を描いていく、事件らしい事は何も起こらない淡々とあくまで淡々と話が進んでいく、それを退屈と思うか人生と感じるかでこの作品の印象は大分違うのでしょう。僕は途中、退屈に感じる事も無くはなかった、でも、終わりに近づくにつれそれだけでない時代を動かしていく時間、終戦直後に始まりビートルズ、ミニスカート、公民権運動、いちご白書の時代まで何もかもが否応なく変わっていく姿、或いは長い時間を掛けて育てていくもの、自分の歳のせいかしみじみと思うところが有りました。
 昔から男と女の間に友情は成立するのかという命題がありますが、この二人の関係はその理想に近いものがあるような気もします、勿論、二人がNYとロンドンに居て会えないという大前提はあるし、フランクの妻ノーラがヘレーヌに対してジェラシーを感じてた事からも純粋に男女の匂いは消せないとしても「いい関係」とはこういうもんではなかろうかとも思いました。

 技法としては中盤迄、物語に合わせての手紙のナレーションから、終盤はカメラに向かって直接語り掛けるという変化で親密度を表す方法が面白い。
 アン・バンクロフト、アンソニー・ホプキンス、ジュディ・デンチ、名うての演技陣の中でも茫洋としながらも徹頭徹尾「受け」の演技で支えたA・ホプキンスが見事、ツッコミ役のA・バンクロフトは労多くして功を取られた感じかな(笑)、J・デンチは別に彼女じゃなくても務まるけど最後の辺りの演技は流石でした。

  会わずとも 百年の知己 得る世でも
   女房とは日毎 喧嘩ばかり也
 
 静かな静かな一編。

 R5.7.17
 DVD
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10 コメント

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Unknown (しずく)
2023-07-18 17:24:30
俳優陣も良く、面白そう!
予告編もチェックしましたよ。
問題はどうしたら映画を観れるかデス。
取り急ぎ図書館には予約を入れました
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いらつしやいませ! (寂庭)
2023-07-18 18:25:49
 しずくさん、コメントありがとうございます!

面白そう
静かでしみじみとした作品でした(アン・バンクロフトは喋りっぱなしに近く、ブータレる事も多いけど)。

どうしたら〜
前も書きましたが僕は現在TSUTAYAディスカスの宅配サービスに加入したので月4枚¥1026で観たいのを送ってもらっています、この作品もそうですが問題は月に4本も観たいのが無いという・・・。(笑)
そして、取り扱いナシが思ったより多いのも問題かな。
今は観たい作品をfilmarksで探しています、僕を「フォロー」してくれる方々の作品感想(点数)を参考にしてチェックしています。

図書館にあるといいのですが、その時は良くて悪くても短くていいので感想聞かせて下さいください。
返信する
Unknown (しずく)
2023-07-19 08:56:30
図書館にはDVDでなく本を予約してます。
本はちゃんとありましたよ
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Unknown (寂庭)
2023-07-19 10:13:45
 しずくさん

ありゃ、勘違いでしたか、失礼しました。(汗)
図書館もDVDの取り寄せ、貸し出ししてるからそっちかと。

本は「チャリング・クロス街84番地 本を愛する人のための本」」と、2年前に中公文庫から後日談を加えた「チャリング・クロス街84番地 増補版」と二つあるようですが、今は新しく出た増補版が主流みたいですね。
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おはようございます (しずく)
2023-07-30 11:19:22
「チャリング・クロス街84番地 増補版」の方が届いていますが・・・。
往復書簡はやはり読むのが辛いですね。しかも読みたい本が目白押ししていて、10ページで挫折してしまい他のに目が移っていく始末!
DVDに頼るしかないみたいですが、図書館では扱っていませんでした。「チャリング・クロス街84番地 続 憧れのロンドンを巡る旅」もあるのに
返信する
いらっしゃいませ! (寂庭)
2023-07-30 12:28:16
 しずくさん、こんにちは

残念ですが合う合わないは誰でもある事、またの機会を楽しみにしてます。
暑い中、ご自愛下さい。

こちらは天気予報の晴れマークが憎らしくなるくらいの晴天続き、応えます。(笑)
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ありがとうございました! (しずく)
2023-08-08 13:30:14
もしかしてとアマゾンプライムを検索したら、本作を見つけました。それが2週間前。会員ではなく飛び込みで『みかんの丘』を観たのを思い出して。
1時間前に無事に観終えることができました!
レビューは遅れるかもしれませんが、とても良い映画を紹介してもらった感謝の意を伝えたくて、取り急ぎコメントします
焦げつくような酷暑が続きます。
どうぞご自愛ください!
返信する
それは良かった! (寂庭)
2023-08-10 18:53:42
 しずくさん、コメントありがとうございます!

観る事が出来たんですね、何よりです。
いつでもお時間のある時に記事を上げてください、楽しみにしています。

こちらは今夏17回目の猛暑日、新記録(笑)、昨日は34.9℃で猛暑日にならず無駄骨の気がしてしまいました。明日から雨模様とか、この暑さで一杯だった利根川水系のダムも60%を切って取水制限が始まりそうだったのでホッとしています(東京は多摩川に専用のダムと貯水池があるし利根川の水利権も持ってるのでで、またまだ余裕)
返信する
Unknown (しずく)
2023-08-11 16:50:27
>何もかもが否応なく変わっていく姿、或いは長い時間を掛けて育てていくもの、自分の歳のせいかしみじみと思うところが有りました。

本当に、私も感じました。早い時の流れや人生のはかなさみたいなもの。人生を感じました。

ここからはおまけ感想を
ヘレーヌが1冊5ドルまでの古書で~とお願いしていて、当時の日本円に換算したら360×5(1800円)だったのです。やっぱりアメリカさん金持ち国だわ!
しかも、イギリスとアメリカの大西洋を挟んで本を買うことができるとは、何とも羨ましい。

イギリスが経済的に苦しんでいる様子に、ヘレーヌは『敗戦国の日本とドイツの再建に何百ドルもつぎ込んだりして、イギリス人が飢えているのを放っているアメリカは不誠実な国』と、原作で憤慨していました。原爆祈念日を終えたばかりなので複雑な思いをしながら、同時に当時のイギリスとアメリカの特別な関係性が伺い知れました。彼女がプレゼントした肉や卵はデンマークの会社のカタログ注文からだったとはおそれいります。
よくもまあ、ド阿呆日本政府はハイレベルな国に刃を向けたものじゃ
返信する
いらっしゃいませ! (寂庭)
2023-08-12 10:04:57
しずくさん、こんばんは
 コメントありがとうございます!

HNの事はお気になさらずに。
僕もヌーヴェル・ヴァーグに興味を持った18歳前後にロジェ・ヴァディム+ジャンヌ・モロー「危険な関係」の予習として文庫本ラクロの書簡体小説(上)(下)、長いのを読んだ事があるのですが、ひたすらツマラナクて完読したけど映画作品の興味も無くなった事があります。(笑)

早い時の流れや人生のはかなさみたいなもの。人生を感じました。
〉そういう意味では、ちょっと若い人には退屈かもしれないですね。(事件とか起こらないし)

そんな昭和を知らない世代の感想で「歯の治療費が30万かぁ」って書いてたけど、当時の貨幣価値だとしずくさんの仰るとおり2500ドルは90万円なんですよね、イギリス行き断念も納得のお支払い。近年の「ニューヨーク眺めのいい部屋売ります」でも犬のヘルニア手術で100万円、ホント足が震える額です、向こうは。

まぁ、勝った側なのに食糧難と知れば言いたくもなるでしょうね、そのアメリカが1956年スエズ動乱(第二次中東戦争)でソ連と組んで英仏のスエズ権益をエジプトに譲渡させ、パックス・ブリタニカがパックス・アメリカーナになるトドメを刺すのですが。(これも「揺り籠から墓場まで」が行き詰まる原因の一つかと)

お姫様抱っこ〉インパクト有りますねぇ(笑)、向こうの人たちは日本人より一回り大きいし。でも、中々、見られない貴重な体験かと。
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