セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「ブラザーサン・シスタームーン」

2015-03-18 01:52:16 | 外国映画
 「リトル・ランナー」繋がりで再見。

 「ブラザーサン・シスタームーン」(「Brother Sun Sister Moon」、1972年、伊・英)
   監督 フランコ・ゼフレッリ
   脚本 フランコ・ゼフレッリ スーゾ・チェッキ・ダミーコ
       ケネス・ロス リナ・ウェルトミューラー
   撮影 エンニオ・グァルニエリ
   音楽 リズ・オルトラーニ  ドノヴァン
   主題歌 ドノヴァン
   出演 グレアム・フォークナー
       ジュディ・バウカー
       アレック・ギネス

 裕福な毛織商の息子に生まれ、何不自由なく暮らしてたフランチェスコ。
 戦争に赴き病を得て町に戻って来る。
 鳥や花、小石を眺め、虚飾に満ちた生活に幻滅、一切の虚飾を排した
キリストに従い福音の通りに生きる道を決断。
 独り真実の神の教えを説き実践する彼の元に昔の友人達が集まり、生
涯の同士となるクレアも合流、やがて、富と権力に無縁の人達が彼の元
へ集まり出す・・・。

 後、数々の奇跡を起こし聖痕を得て「聖フランチェスコ」となる人の、若き
日を描いた作品です。
 キリスト教徒でない僕達には縁薄い人達ですが、サンフランシスコやサン
タクララという地名は知っている筈、この二つの街は二人の名を冠したもの
です。

 作品の性格上、「リトル・ランナー」よりダイレクトに宗教色の強い作品で
すが、フランチェスコと仲間達の青春群像を描いた作品でもあり、美しいイ
タリアの自然、それに溶け込むような素朴で優しいドノヴァンの唄うテーマ
曲が印象的で、宗教と距離を置く人にとっても、それ程、拒否感なく観られ
る作品だと思います。
 又、フランチェスコ達のアンチテーゼとして描かれるバチカンの煌びやか
な聖堂、滑稽な程、醜悪な聖職者達の衣裳は、ゼフレッリの美的感覚の良さ
を表していて、これも見所の一つだと思います。

 果たしてローマ教皇は改悛したのか。
 異教徒の冷ややかな目で見れば、明らかに側近が小声で言った言葉の
通りだと思います。
 フランチェスコ達を送り出す際に見せる、過剰なまでの権威の誇示。
 それを見るフランチェスコの表情が全てを表してると思います。
 これがラストシーンに繋がっていくのでしょう。

 「ロミオとジュリエット」で大ヒットを飛ばしたF・ゼフレッリの新作で、ドノヴァ
ンの唄うテーマ曲がヒットした事もあり、宗教色の強い作品ながら日本でも中
ヒット、名画座をぐるぐる巡るうちに当時の映画ファンの多くが観た作品です。

※接見した教皇がいみじくも述べたように、あの世界は宗教政治の極地なの
 でしょう。
 やがてフランチェスコ達の後ろ盾となっていた司教が「教皇」の座に登り詰め
 ます(フランチェスコの名声と無縁だったとは思えない)。
※映画では、フランチェスコ達が再建したサン・ダミアーノ教会が教会保守派に
 よって火事になります。
 「リトル・ランナー」ではラルフの不始末で自宅が火事に。
 初期フランチェスコ会は無所有(無一物)が基本のようで、自発的に無一物と
 なったフランチェスコ達とは違いますが、彼も又、あの時、全てを無くしたので
 すね。
※字幕、ハンセン氏病を「皮膚病」と変えてます、「異議あり!」

 DVD
 2015.3.15
 
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6 コメント

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Unknown (宵乃)
2015-03-18 08:04:46
>サンフランシスコやサンタクララという地名は知っている筈

サンタクララは初耳でした(汗)
この作品は未見ですけど、宗教関係の作品の中では有名なんですね。タイトルは聞いたことがあります。

>初期フランチェスコ会は無所有(無一物)が基本

お~、そういう事だったんですか。
物を失って初めて、物質ではない大切なものが見えてくるという事かな?
参考になりました!
返信する
早速、有難うございます☆ (miri)
2015-03-18 09:32:27
>よりダイレクトに宗教色の強い作品ですが、フランチェスコと仲間達の青春群像を描いた作品でもあり、
>美しいイタリアの自然、それに溶け込むような素朴で優しいドノヴァンの唄うテーマ曲が印象的で、宗教と距離を置く人にとっても、それ程、拒否感なく観られる作品だと思います。

その通りの映画ですネ~! 
最近ではオンエアがあまりないようですが、広く多くの日本人の皆さまにも見て頂きたい作品ですネ☆

今回、結婚して普通に暮らしたい友人への言葉が、すごくしみました☆
本当に、そう思います・・・聖職者ばかりではいけないのだと。

>又、フランチェスコ達のアンチテーゼとして描かれるバチカンの煌びやかな聖堂、滑稽な程、醜悪な聖職者達の衣裳は、
>ゼフレッリの美的感覚の良さを表していて、これも見所の一つだと思います。

本当に・・・あのお衣装!!! 
調度品の数々、建物そのもの・・・そこにあの「いでたち」ですものね~!

>「リトル・ランナー」ではラルフの不始末で自宅が火事に。

あ、そうでしたね~! 
授業の風景と言い、カトリックの方が見ればすぐに分かるような作品だったのですネ~!

私は多分、キレたままで、鉦鼓亭さんのコメントを頂かなかったら、まるで違う受け止め方しかしないままだったと思います。
あまりにキレたもので、削除したんですけど、ちょいちょいオンエアしているので、次回録画して
いつか素直な気持ちで再見出来ると思える時が来たら、そうしようと思います、本当に感謝です☆

>※字幕、ハンセン氏病を「皮膚病」と変えてます、「異議あり!」

まぁ仕方ないというか・・・私の初見時は「らい」という名前を使っていたようですし、
そういう名詞は時代によって替えてゆくのが、翻訳する人のお仕事の一つなのかもしれませんよね~?

>果たしてローマ教皇は改悛したのか。

まぁこの映画ではアレで良かったように思います。
いま現在でも、法王の立場やあの組織とかを思うと、仕方ないんだろうな~とか思いますしね・・・。
真実の信仰とは、やはり人の内面にしか持てないもののように思います・・・。

ロッセリーニ監督の「神の道化師、フランチェスコ」という映画は、この映画の後日談になっていると思います。
先に作られているので、ゼフレッリ監督が、ロッセリーニ監督を尊敬なさって作ったのかな?とか思いました。

あまりレンタルされていないようですが、もし機会があれば是非、いつか・・・
女性のそういう集団も出てきて、たまに一緒にお祈りしたりするのも良かったです♪


.
返信する
Unknown (鉦鼓亭)
2015-03-18 23:25:12
 宵乃さん、こんばんは
 コメントありがとうございます

サンタクララは初耳でした(汗)
>Wik情報(大汗)
 僕も気が付かなかったです。

物質ではない大切なものが見えてくるという事かな?
>そうだと思います。
普通の人間ラルフが、神の声を聞き、母の為にという一心で行動し奇跡を起こし聖人になる、というプロットは、
そのまま、聖フランチェスコの物語で、フランチェスコが天の父(キリスト)の為に行動した所が違うくらい。
(お母さんは、聖母マリアに見立てたのかも)
クレア(クララ)、聖痕?、宗教権威との対立、連想させるアイテムが散りばめられています。

「リトル・ランナー」は、聖フランチェスコの話を元に「青春映画」を創ったのか、
「青春映画」と思わせて、「聖人物語」を思い起こすよう巧みに創られたのか、
製作者に聞かないと解りませんが、僕は、後者のような気がしてなりませんでした。

ちなみに聖フランチェスコは自然と動物達の守護聖人で、クララには最近、テレビの守護聖人という新しい役目が付け加えられたそうです。
(透視の奇跡を起こしたから)
返信する
良かったですよ (鉦鼓亭)
2015-03-19 00:12:30
 miriさん、こんばんは
 コメントありがとうございます

再見したくなってた、miriさんの推薦、週末コレといって見たい作品が無かった。
グット・タイミングでした。

結婚して普通に暮らしたい友人への言葉が、すごくしみました
>僕も、あのシーン、印象に残りました。
融通の一つも利かない信仰マシーンじゃなく、ちゃんと人間を理解し、それに対する優しさも持ち合わせてた事が解る、良いシーンでした。

調度品の数々、建物そのもの・・・そこにあの「いでたち」
>「ロミオとジュリエット」のパーティ・シーンも素晴らしかったのですが、
今回は実に壮大にやりましたね。(笑)
「ロミオ~」に較べると明るさが違うので、色彩が明瞭になって、色使いの巧みさとバランス、奥行きの深さが素晴らしかったです。
オペラの世界へ行ったのも納得です。(笑)

そういう名詞は時代によって替えてゆくのが、翻訳する人のお仕事の一つなのかも
>確かにそうなのですが、やはり、変えてはいけないものが有ると思います。
敗戦を終戦、売春を援交、日本の悪い癖だと思っています。

法王の立場やあの組織とかを思うと、仕方ないんだろうな~とか思いますしね・・・。
>仰る通りだと思います。
ちょっと文章が暴走しました。
只、衝撃は受けたけど、直ぐ「これは利用できる」と政治脳が、しっかり計算していたとは思いました。
教皇の最後の姿を「したたか」と見るか、「哀しみ」と見るか・・・、
僕は「したたか」7:「哀しみ」3くらいに感じました。

真実の信仰とは、やはり人の内面にしか持てないもののように思います・・・。
>僕も、そう信じています。

miriさんのお陰で、ほんの少しだけど、ずっと気になって作品を再見する事ができました。
感謝です。

ロッセリーニ監督の「神の道化師、フランチェスコ」
>う~ん、これは今の所、はっきり答えられないです。
ゴメンナサイ。(汗)

※今日は、時間が遅くなってしまったので、miriさんの所へ伺うのは、明日にさせて下さい。(汗)
返信する
おはようございます☆ (miri)
2015-06-28 09:10:43
今さっき気付きました。 メッセージを有難うございます!
遅くなりましたが、私も自分のプラグインに書かせて頂きました。 
準決勝も頑張ってほしいですネ♪ 応援しましょうネ~!
どこに書いて良いか分からないのでこちらに書かせて頂きました。(ペコリ)

あ、今日は映画館ですか? お気をつけて~!
私はここのところフランス映画三昧です(笑)。


.
返信する
いらっしゃいませ! (鉦鼓亭)
2015-06-28 22:33:41
 miriさん、こんばんは
 コメントありがとうございます

この後も有るから90分で決められたのは助かりました。
岩淵選手に大感謝!です。

今月は「シェルブール」、「奇跡のひと」、「ライアンの娘」と週末は映画館が続いたのと決算仕事に取り掛かったので、ちょっと疲れが溜まってて(W杯も神経にくる(笑))・・・、今日は完全休養日にしました、先程、家族で外食して帰ってきました。
宵乃さんのイラストに惹かれてDVDレンタルしたのですが、10月迄、いろいろ続くので、身体のメンテナンス(昼寝)を優先させました。(笑)
前半期はハイペースで映画を観れましたが、これから4ヶ月はかなりペースが落ちそうで残念です。
11月が待ち遠しい。(笑)

「ライアンの娘」>記事を書こうと思ってるのですが、W杯が気になったり、疲れてたり、もう一つ考えが絞れなかったりでノビノビになってます。(汗)
記事が出来たら、そちらにお邪魔しようと思ってます。

現在、次に映画館で観る予定は「アリスのままで」です。
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