セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「シムソンズ」

2012-08-20 00:06:17 | 邦画
 まず最初に「おことわり」しておきます。
 この作品は「クール・ランニング」(1993年・米・ブエナ・ビスタ配給)の
盗作だと思います。
 小学校のプールに卒業記念で大きなミッキー・マウスを描いたというだ
けで、巨額の著作権料を請求したW・ディズニー社が見逃してるのは不
思議なくらいです。
 オリジナリティ最重視の僕としては、この作品に0点を付けざろう得ない、
でも葬り去るには惜しい、そんな映画なんです。

 「シムソンズ」(2005年・日本)
   監督 佐藤祐一
   撮影 川村明弘
   音楽 佐藤直紀 主題歌 JUDY AND MARY  
   出演 加藤ローサ 藤井美菜
       高橋真唯  星井七瀬
       大泉洋    夏八木勲

 何にもない常呂高校3年の伊藤和子(加藤ローサ)は、不純な動機から
カーリングを始める事になる。
 どうにかこうにか集めた尾中、小野、林田の4人で即席チーム「シムソン
ズ」が結成されコーチには訳有りの大宮が付くことに。
 そんな寄せ集めのチームが本当のチームになるまでを描いた作品。

 この映画は女子高生の青春モノで「スウィングガールズ」、「ウォーター
ボーイズ」の系列に連なる作品、題材が「カーリング」に変わっただけとも
言えます、異なる点は、真っ正直に「王道一直線」な所、ここまで直球勝負
というのも珍しく、その開き直りが返って清々しく感じられます。
 (その分、淡白で残るものが少ないかもしれません)
 この映画の良い所を挙げれば、テンポ、カメラ、音楽、主役4人の新鮮さ。
 パターン一直線の作品を飽きさせずに見せるにはテンポ・リズムが軽快
でなくてはなりません、この作品は充分にそれがクリアされています。
 カメラは北海道の広い空間と透明な空気感を美しく捉えていて、女の子4
人のドラマを引き立てています。
 佐藤直樹の音楽は今でも「旅番組」によく使われるくらい馴染みやすい音
楽で、時折はさまれるJUDY AND MARYの歌も画面にピッタリでした。
 加藤ローサ、藤井美菜、高橋真唯、星井七瀬の4人も、この時期特有の
キラキラ感が出ていて好演、加藤の可愛さは特筆モンですが、只一人、カ
ーリング経験者役の藤井は他3人の下手っぴいと違い投石フォームに安定
感があり素晴らしかったです(演技は一番下手だけど)。
 また、北海道の大スター大泉洋もハマッていて良い味を出しています(今
では見慣れてしまったけど、当時はまだ新鮮だった)。
 これら4点が上手く結集されて実に爽やかな作品になったと思います。

 酷い所。
 金と時間がないせいか、北海道選手権まで行ったチームなのに加藤、星
井のフォームが不安定で見るに堪えない。
 決勝戦なのに投石時のフォームがグラつくなんて「映画を舐めて」ます。
 もっと酷いのは「伝説のカーラー」石神を演じた夏八木勲。
 カーリング界伝説の人なのに、ストーンを投げるとグラッ・・・、もう笑うに笑
えない。
 引き受けた仕事はキッチリこなすのがプロの役者でしょ、何年役者で飯喰
ってんだか。
 同じく時間がないせいで、雪と氷が殆んど出てこない。
 冬の長い期間、雪と氷に閉ざされた小さな町の唯一の楽しみカーリングな
のに、雪も氷も出てこないから町の人達とカーリングの結び付き、愛着が全
然伝わってこない、細部の詰めが甘いんです。
 またラストシーンの拍手の大きさがアザトイ、TVなら、あれでもOKでしょう
が映画では臭すぎます。

 そんな良い所、悪い所が混在した作品。
 盗作ではあるけど、見るに堪えない所もあるんだけど、捨てがたい魅力が
ある映画、結構、好きな作品なんです・・・。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・この映画は実話を装った作り話です。
 映画では高3でカーリングを始め、半年にもならない期間で北海道選手権
 の決勝へ行っています。
 いくら超マイナー競技とはいえ、それは有り得ない話で、実際のシムソンズ
 は1992年に作られた中学1年の選抜チームで、皆、小学生の頃からカー
 リングに親しんでいました。
 結成3年後、ライバル・チームから小仲選手が合流、加藤、林、小野寺でメ
 ンバーが固定されますが日本選手権での優勝は1998年のシーズンが初。
・僕は長野オリンピックで男子アメリカ戦の試合をTV(LIVE)で見てカーリング
 のファンになりました、シムソンズの出場したソルトレークでは惨敗でしたが、
 トリノで注目を浴びるようになり嬉しかったです。
 (長野の時の女子チームはスコットランドの楽隊みたいなスカート姿でした)
・残念ながら、当分の間、オリンピックのアジア枠2は中国と韓国で占められる
 時期が続くと思われます、国家の強化選手以外カーリングをやってる国民が
 一人も居ない所が出場するのは変ですけど現状ではどうにもなりません。
 ただトリノ効果で吃驚するくらい国内のチーム数が増えてるのも確かです、そ
 んな底辺の広がりから、またいつかオリンピックへ復帰できる日が来るのを
 期待しています。
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2 コメント

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この作品は知らないけど (宵乃)
2012-08-20 12:08:36
「クール・ランニング」は結構好きな作品でした。最近観てないなぁ。
最近は作品が多すぎて、盗作があっても気付かれないこともあるんでしょうか?
日本人がそんな事をしてしまうのは悲しいですね。良いところもあったようで、それならオリジナルで頑張って欲しかったところ。
それにしても、”小学校のプールに卒業記念で大きなミッキー・マウスを描いたというだけで、巨額の著作権料を請求したW・ディズニー社”は初耳でした。何、大人気ないことやってるんだディズニー!
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いらっしゃいませ! (鉦鼓亭)
2012-08-20 21:44:22
 宵乃さん、こんばんは。
 コメントありがとうございます!

(訂正)原作を相当アレンジしてるようなので、記事中の「原作がパクッた」の下りは削除しました。

「盗作」に見えるかは、かなり個人の感覚なので一概には言えませんが、僕の感覚では「盗作」に近いと思います。
切っ掛け→チーム結成→内紛→チーム崩壊→再結成→明日へ
スポーツもののプロセスを真っ直ぐ進んだスートーリーだから、骨格、展開が似るのは仕方が無いとは思います。
でも、明らかなパクリシーンが有るし、訳ありコーチの存在も似てるし、ラストの描き方も「クール・ランニング」の別バージョンに見えて仕方がないんです。
(あくまで爽やかな青春ドラマを狙ったせいで、訳ありの「訳」が原作と正反対となり、「一点の曇りもないドラマ」になったけど、その分、浅くもなった)
でも、悪い作品じゃないんですよね。(笑)
爽やかな感動があるんです。
一度、見比べてみるのも一興かと。

ディズニー>金を払うか消すかの選択を迫ったそうですよ。
とても払える金額じゃないので、学校側は泣く泣く消すことにしたとか。
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