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セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「宋家の三姉妹」

2015-12-15 22:55:53 | 映画感想
 「宋家の三姉妹」(「宋家皇朝」、1997年、香港・日)
   監督 メイベル・チャン
   脚本 アレックス・ロー
   撮影 アーサー・ウォン
   美術 レオン・ワーサン   エディ・マー
   音楽 喜多郎  ランディ・ミラー
   出演 マギー・チャン
       ヴィヴィアン・ウー
       ミシェル・ヨー
       ウィンストン・チャオ
       ン・ヒンゴッ

 「一人は富を愛し、一人は力を愛し、そして一人は国を愛した」
 冒頭に記されるテロップ。
 通常、三姉妹なら長女、次女、三女の順なのに、長女、三女、次女の順にな
ったのは、三姉妹の内、次女の視線で話が進行していくからだと思います。
 この作品、邦題、英題より原題の「宋家皇朝」が正確ですね。
 父母が築き上げた財力と娘達が嫁いだ夫達の影響力は正に一つの王朝な
のです。
  宋靄齢(長女) 富豪と結婚し、夫は国民党軍の金庫番となり財政を担う
  宋慶齢(次女) 中国建国の精神的父 孫文と結婚、孫文死後、その思想
             を受け継ぐ、只一人本土に留まり、共産党から国母待遇
             を受け、党籍が無いにも拘わらず共産党副主席、最晩年、
             党籍取得後、名誉国家主席
  宋美齢(三女) 蒋介石へ嫁ぎ、相談役・スポークスマンとして辣腕を振るい
             中華民国(台湾)の国母となる

 映画は三人の幼少期をプロローグとし、適齢期、それぞれの結婚、そして日
中戦争中の別れまでを描いています。

 中国動乱期を背景にした壮大なドラマなのですが、「さらば、わが愛/覇王別
姫」に較べるとスケール、深み、共に足りない気がします。
 突き詰めれば、配慮が作品に必要な「毒」を消し去ってるから。
 これは宋家の家族物語だから家族の絆と愛情はしっかり描けてるのですが、
立場の違う三姉妹の絆と姉妹愛ばかりで「憎」が無い。
 「愛情物語」だけど「愛憎物語」じゃない平板さ。
 共産党名誉国家主席まで上り詰めた慶齢の視点で進む為、物語上必要な
「憎」を共産党嫌いの蒋介石に全て押しつけてる。
 この2時間半の物語で、だれが悪役かと言えば軍閥でも日本軍でもなく三女
の夫、蒋介石が実質担ってる。
 その為、靄齢の夫・孔祥熙の金銭の汚さ、慶齢の夫 孫文の女癖の悪さ、こ
れらを華麗にスルーしながら蒋介石の短気、女性問題だけはスルーしない。(笑)
 「西安事件」も蒋介石の窮地を救った美齢の武勇談に重きを置いてます。(半
分以上、事実だとしても)

 実は観ながら南京事件をどう描くのか恐々としてたのですが、見事にスルー、
かなりズッコケました。
 帰って調べたら、この作品、香港と日本の合作だった。
 南京市街戦で兵士・多くの民間人の殺戮があったのは事実だと思います、そ
れを宣伝戦で虐殺・大虐殺としたのは蒋介石夫人の宋美齢で、それが今に至
る「南京大虐殺」の重要な証拠の一つなのだけど、スポンサーへの配慮で華麗
にスルー。
 この作品、日本軍の侵攻の描写が極めて少なく、殆ど背景画と言ってもいい
くらい。
 やがて併合される中国への配慮、スポンサーの日本への配慮、それらが蒋介
石一人を悪者にする結果になったんじゃないでしょうか。
 (「南京虐殺」について僕は否定しませんが、故・山本夏彦氏の見解が当たら
ずとも遠からずじゃないかと思っています~日本以外、聞く耳持たないけど)

 確かに三姉妹の関係、家族愛、絆は描けてるけど、それ以外は踏み込み不足。
 これは原題とおり宋家の史記で、その視点で観る作品なのでしょう。
 映画館を出た時は「いい作品を観た」気になりましたが、段々、醒めていく。
 そんな作品でした。

※史記のスタイルでいけば、次女・宋慶齢が「本紀」で、それ以外は「世家」、「列
 伝」となります、本作の美齢は「列伝」と言える存在ですが、靄齢は列伝には遠
 い存在、縁の下の力持ちなんだろうけど、やはり夫が汚なすぎたのかな。
 (国民党の金を横領、私腹を肥やし形勢不利と見るや夫婦で国外へトンズラ)
 「本紀」は美辞麗句(でないと書いた人間の首が文字通り飛びます)、本紀で書
 けないマズイ事は世家や列伝に忍ばせると読んだ事があります。
 列伝とは、それぞれの時代の有能、特異な人物の伝記、世家は或る家系の伝
 記、本作のタイトルが「宋家皇朝」でなければ、これは本来「世家」に位置する物
 語。
※実在の写真見ると、かなり皆、似せてますね。

 2015.12.13
 TOHOシネマズ日本橋

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 覇道以て覇道を制し四千年 時は経るとも人は変わらじ

 中国が舞台なので漢詩風にしてみました(座興です、漢詩なんて出来ないモン)

 覇道以ッテ覇道ヲ制スコト四千年
 時悠久ナレド人亦変ワルコトナシ
 草川朱ニ染マリシモ ヤガテ元ニ戻ラン
 一時ノ静寂有リテ続カズ是則チ也天道
コメント (2)
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「ジョー・ブラックをよろしく」

2015-12-07 23:24:24 | 映画感想
 「ジョー・ブラックをよろしく」(「Meet Joe Black」、1998年、米)
   監督 マーティン・ブレスト
   脚本 ロン・オズボーン   ジェフ・レノ  
       ケヴィン・ウェイド   ボー・ゴールドマン
   撮影 エマニュエル・ルベツキ
   美術 ダンテ・フェレッティ
   音楽 トーマス・ニューマン
   出演 ブラッド・ピット
       アンソニー・ホプキンス
       クレア・フォラーニ

 来月、還暦だから、いい加減カッコつけは止めて素直になる頃かもしれな
い。(笑)
 恋愛映画は、この歳になっても大が付くくらい好きなんだと思います。
 ハッピーエンド、悲恋モノ、ほぼ「何でも来い!」でしょう。

 だから、この作品も好きなタイプ。
 マトモなA・ホプキンスって初めてかもしれないけど良かった。
 ヒロインもモデルっぽい女優さんだけど、とてもキュートに見える時があっ
て合格。
 ブラピは・・・まぁ男だから、どうでもいい。(笑)
 (僕達の世代だと、彼の顔の骨格ってR・レッドフォード~寅さんと、ちょっと
造作が違うだけなのに(汗))
 ストーリーも超大金持ちというのが多少気に入らないけど、そうしないと社
内抗争の面白味が無くなるから、これでOK。
 多分、これからも何回か観る事になると思います。

 ・・・で、済ましたいけど。(笑)
 やっぱり、神様(死神だって)は全知全能でないとね。
 神様に「勉強になった」なんて言われたら、人間、立つ瀬がないです。
 そして、最大の問題はラストでしょう。
 今のハリウッドのハッピーエンド縛りは解っているけど、これは「悲恋物語」
にするべき作品だと思います。
 確かに話を上手く繋ぎ、「橋」の象徴性を生かしてハッピーエンドに持って来
てるけど、その強引な力技で話の整合性もファンタジー性も全部吹っ飛んじゃ
った。
 (神様なんだから得意の「神隠し」でよかったのに)
 3時間の作品を最後の5分でブチ壊す勇気は買うけど、DVDは買わない結
果に・・・。

 リクエストして頂いた方には申し訳ないような感想になりましたが、DVD買い
はしないけど借りたり、オンエアがあった時は見る事が多いと思います。 
 「恋愛映画」、好物ですから。
 教えて頂き感謝!です。

 今日の難クセ(こういう性分なんです、許して下さい)
※医療機器が警告音を鳴らさないのは死神だから?
※ピーナッツバターの一瓶くらい「お持たせ」しなきゃ。(また来られても困るけ
 ど(笑))

 2015.12.6
 DVD

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 何と、まあ! 神ともあるに 恋知らず 裁かれし者は 哀れなりけり

 金もあり 愛も手に入れ 望月の 欠けたることも なしと思えば
 (道長の無断拝借)
 
コメント (12)
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「イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所」

2015-11-22 13:44:51 | 映画感想
 「イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所」(「IF I STAY」、2014年、米)
   監督 R・J・カトラー
   脚本 ショーナ・クロス
   原作 ゲイル・フォアマン  「ミアの選択」
   撮影 ジョン・デ・ボーマン
   音楽 ヘイター・ペレイラ
   編集 キース・ヘンダーソン
   出演 クロエ・グレース・モレッツ
       ジェイミー・ブラックリー
       ジョシュア・レナード
       ミレイユ・イーノス
       ステイシー・キーチ

 或る雪の日、子供たちが休校になったのを幸いに家族で実家へ出掛ける。
 チェリストを目指すミアは最近、初恋の相手アダムと別れたばかり。
 彼女はジュリアード音楽院の合否通知を待っていたが、実家へ向かう途中、
対向車を避けようとした車がスリップ、衝突事故を起こしてしまう・・・。

 幽体離脱とか超能力、タイムトラベル、このテの作品、今は余り受け付けな
いのだけど、これは、まぁ、いいかな。
 幽体離脱したヒロインが知り得ない事を知るというアンフェアな展開は好きじ
ゃないけど、クロエちゃんだから目を瞑ります。
 60年近く生きてきたけど、結局、僕はこういう「くすぐったい映画」が好きな
んでしょうね。(笑)
 幽体離脱したミアが振り返る初恋物語。
 この作品、クロエの為の映画と言ってもいいかも。
 この世代でクロエ・グレース・モレッツが抜きん出てるのはファンのハンデを
差し引いても、それ程、異論はないと思うし、事実この作品でも初恋に揺れな
がら家族から自立しようとする、微妙な立場を巧みに演じています。
 だから、これはこれで充分アリだし、その安全路線に異議を唱える積りはな
いと納得しています。
 でも(笑)・・、「小さな恋のメロディ」、「フレンズ」、「ジェレミー」、「青い珊瑚礁」、
「ラ・ブーム」、初恋物語というカテゴリーならば「ローマの休日」も。
 いずれもヒロインは手垢の付いてない初々しさでキラキラしてる。「初恋物語」
というピュアな素材には無名のスレてない初々しさが必要条件なんです。
 この作品、時代が変わったのかもしれないけど20世紀だったら大ヒットした
かもしれない、今だって、ヒロインが無名の新人女優だったらコケる恐れ大とは
言え、賭けるに値する大博打だった気がする。
 「初恋物語」に於ける最大のポイント「ピュア」さで、クロエちゃん不利なんだよ
なァ。(汗)
 デビューした初々しさというのは演技力と別モノで、他の要素でカバー出来な
い一瞬のシロモノなんです。
 (A・ヘップバーンだって2作目、3作目も初恋物語だけど「ローマの休日」のピ
ュアさは再現しようがなかった)

 この作品、確かに古いスタイルかもしれない。
 でも、初恋というエキセントリックで振り幅が極端に大きい素材の場合、設定
は落ち付いた状況の方が良いと僕は思っています。
 素材が極めて敏感で脆いのに、周りまで一緒にワサワサしてたら焦点が定
まらなくなる。
 その点、クロエ側の人達が安定してる為、二人をクローズアップする妨げに
ならずピントがズレる事がない。
 ここを「甘い」と見てしまえば評価は低くなるだろうけど、僕はセーフです。(笑)
 それでも事故後の家族の生死は、只、ドラマチックにしたいだけのあざとさ、
人の生死を効果の為(だけ)に使ってる違和感、ここは大きく減点に感じました。
 更に言えば、家族、親類、友人、いずれも理想的すぎなのですが、これも、或
る意味、作劇上(本作のテーマ~生死の選択)の効果を狙っての単純化で、そこまで
簡易方程式でいいの?と言う疑問も有ります。

 原作ものだから何とも言えないけど、脚本書いた人の中に「ジェレミー」(197
3年)が有ったかも。
 個人的感想ですが、あの作品を「自分ならこう作る」で書いた部分が有るよう
な気がしてならない。
 チェロ弾き、方向は違えどアーティスト志向の二人、引っ越しによる決定的障
害(こちらの引っ越しは深刻だけど、或る意味、引っ越し)。
 出会いも似てるし、何となく流れもそんな感じだし。
スーザンとジェレミーが19と18で、もし、スーザンに選択権が有ったら・・・。
 只、「ジェレミー」は一ヶ月くらいの話で喧嘩する暇もなかったけど(途中、F・
ゼフレッリの「ロミオとジュリエット」を真似たシーンがありますが、その点、「ジェ
レミー」は「ロミ・ジュリ」に近い)、こちらは1年半の時間が有る為、二人の仲を喧
嘩を含めて複雑に出来てる。
 でも、それがシンプル・イズ・ベストだった「ジェレミー」を超える要素になったか
は、ちょっと疑問。
 「ジェレミー」は演出が硬く、特に前半30分の流れが悪い、演出のテクニック
では、こちらが上だと思うのですが、時代と劇中時間に合わせて詰め込んだ分、
上記のような「あざとさ」が目につく欠点も出てしまった気がします。

 最後に。
 クロエ・グレース・モレッツが普通の女子を演じてるを余り観ないのですが(笑)、
良かったです。

※「人が道を選び、選んだ道が人を作る」、いい台詞。
※僕がクロエ・グレース・モレッツを気にするのは、彼女がパトリシア・ゴッジに
 似てるからだと思います。
 映画を見始めた頃、J・フォンダのようなお姉さんタイプに憧れたけど、時代も
 あって同年代の女優は殆ど居なかった。
 初めて同年代の女子に憧れたのが「かもめの城」のP・ゴッジ(「シベールの
 日曜日」の時じゃないよ!)。
 彼女は20歳前にスクリーンから離れたけど、彼女の面影が重なるクロエが、
 この先、どんな役者になっていくのか・・・、もしP・ゴッジが女優を続けていた
 らどうなったのか、そんな興味もあってクロエちゃんを応援してる気がします。

 2015.11.21
 DVD
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「愛人/ラマン」

2015-10-12 23:57:40 | 映画感想
 「愛人/ラマン」(「L'Amant」、1992年、仏・英)
   監督 ジャン・ジャック・アノー
   原作 マルグリット・デュラス
   脚本 ジェラール・ブラッシュ  ジャン・ジャック・アノー
   撮影 ロベール・フレス
   美術 タン・アット・ホアン
   音楽 ガブリエル・ヤレド
   出演 ジェーン・マーチ
       レオン・カーフェイ
       フレデリック・マイニンガー
       ジャンヌ・モロー(ナレーション)

 1930年頃の仏領インドシナ(ヴェトナム)。
 リセ(学校)の寄宿舎暮らしの15歳のフランス人少女が、留学帰りの裕福な華僑の息子(32)と出会う。
 少女の家は投資に失敗し家族は崩壊寸前、フランスへ帰る金も無い。
 男は家の財産を守る為の政略結婚を控えていた。
 少女は富と好奇心から男の誘いを受け入れる。
 逃げ場の無い二人は快楽の刹那に堕ちていった・・・。

 まぁ、「禁断の愛」ってヤツです。
 クラブ仲間が「娘が出来ると10代の娘見ても欲望を感じなくなるんだよね」
 彼は一番早く結婚し子供も最初に出来たのだけど、僕は10年後、彼の後を追って同じ感覚に嵌ってます。
 なのでロリ顔の娘が生々しいシーン演じてても「大人の女」みたいに話に没入出来ない。(笑)
 フランス人が仏領アジア辺りの話を作ると「エマニエル夫人」みたいな、信じられないアジア蔑視の作品を作るけど、これはそれ程酷くはなかった。 
 虚実入り乱れた二人の微妙な関係は描けてたと思います。

 終盤近く、ベット上で二人の会話、
 「もう一度言って欲しい、お金をくれるからここに来たと」
 「お金をくれるから、ここに来たのよ」
 「繰り返して・・・初めて会った時から私はお金の事しか考えていない」
 「初めて会った時から、お金のことしか考えてないわ」
 男が女に頬を寄せて
 「君は淫売だ・・娼婦だ」
 「そう言われても不愉快じゃないわ」
 女が誘う、しかし男が顔を背ける
 「もう君を抱けない・・・(僕を)愛してないから」
 この台詞は始めの方、高級車の中での会話、
 「僕が貧しい中国人だったら?」
 「お金持ちの貴方がいいわ」
 と対になってると思うのだけど、残念ながら、この映画の肝とも言えるシーンが他シーンと同テンションで浮彫りになってない。
 この時の二人が表現すべき台詞裏の複雑で微妙な感情は「それなり」に出来てるのだけど、それが強い印象とならず埋没してしまってる。
 解らないコトはないけど、サラッとやり過ぎた気がします。
 そこが残念かも。

 美術、撮影は良かったです。

※ちょっと倒錯LOVEに興味が沸いてたのですが、ここら辺で打ち止めかな。(笑)
 「セクレタリー」はまあまあ。
 「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」は最後の10分で全てぶち壊し(そこ迄は良かった、ヒロインも魅力有った)。
 「愛人/ラマン」悪くは無いけど微妙。(笑)
 そんな意図は全然無かったけど、(話作りの)色々なヒントは貰えたので無駄な時間にはならなかったような・・・。
※更新が途絶えてたのでチト無理矢理、記事を書きました。
 他にも「夏の遊び」、「さらば友よ」、「太陽はひとりぼっち」とか観てるのですが、どうも記事を書く気が起きなくて。

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 あの日より 時は止まりし 我がいのち 交わる汗に 真(まこと)あるとは

 2015.10.12
 DVD

 10.14 追記
 ※そう言えば我が国には、こんな戯れ歌があったっけ
 傾城に 真ありとは 誰言うた 恋はこいでも 金持ってこい
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「セクレタリー」

2015-09-16 08:12:20 | 映画感想
 「セクレタリー(秘書)」(「Secretary」、2002年、米)
   監督 スティーヴン・シャインバーグ
   脚本 エリン・クレシダ・ウィルソン
   原作 メアリー・ゲイツキル
   撮影 スティーヴン・ファイアバーグ
   音楽 アンジェロ・バダラメンティ
   出演 マギー・ギレンホール
       ジェームズ・スペイダー
       ジェレミー・デイヴィス

 簡単に言えば「変態純情物語」で、男の「願望物語」。(笑)

 自傷癖で精神病院に入院していた娘が退院して就職してみたら、雇用主
がドSで娘がMに目覚めて「割れ鍋に閉じ蓋」状態に・・・。

 これ、ヒロイン リーと、これまた超ナイーブな男(J・デイヴィス)とのサイド・
ストーリが全部要らない。(笑~効果が有ったのは母親の「ドレス、クリーニ
ングして返してちょうだい!」だけ)
 異端同士のラブ・ストーリーなんだから、もっと二人に純化して余計なモノ
を混ぜないほうが絶対、効果的だったと思える。
 折角、ヒロイン役のM・ギレンホールが頑張ってるのに勿体ないです。
 「なりゆきのシガラミを振り切って」というシチュエーションを使いたいのな
ら、別に「もう一人の男」を出さなくたって幾らでもシチュエーションがあるし、
それを効果的に使うのが「脚本家」の才能。
 変態チックな話だからって、安易に周りにも「変わりモン」を配置したのが
そもそもの間違いで、「変態」を中心に据えるなら周りを常識人で固めた方
がコントラストが強くなって、主役に焦点が合う。
 結局、これ脚本が弱いと思います。
 SMチックな映画としては「ラストタンゴ・イン・パリ」、「妖精たちの森」に較
べ相当落ちるけど、「純情モノ」の微笑ましさで印象は悪くなかったです。(汗)

 ヒロインのM・ギレンホール、M度が進化するほど可愛くなる。(爆)

 予告編 http://gyao.yahoo.co.jp/player/01070/v00069/v0000000000000000093/?auto=1&rep=2&ap_cnt=2&second=0

※「秘書」3部作、2作目だけど、何か堕ちていく予感。
 「堕ちる」のは望む所だけど、「落ちる」のはね・・・。(笑)
※DVDのパッケージ、ホントにAmazonのまんまなの?
 幾らなんでも酷すぎ。(YAHOO!映画の方だと思ってた)

  2015.9.6
  DVD

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 打ち叩く その手のひらが 恋しくて 底なし沼へ 沈みゆくかな
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「クロワッサンで朝食を」

2015-08-26 22:49:04 | 映画感想
 「クロワッサンで朝食を」(「UNE ESTONIENNE A PARIS」、2012年、仏・ベルギー・エストニア)
   監督 イルマル・ラーグ
   脚本 イルマル・ラーグ  アニエス・フォーヴル リーナ・スィルドス
   撮影 ロラン・ブルネ
   音楽 デズ・ムナ
   出演 ライネ・マギ
       ジャンヌ・モロー
       パトリック・ピノー

 真冬のエストニア。
 アル中の元夫に絡まれながら、年老いた母を介護するアンヌ。
 その母の死。
 流れていく空白の時間。
 そんな時、介護士の資格を買われてパリから仕事が舞い込む。
 パリの高級アパルトマンで待っていたのは、他人に心を開こうとしない頑
なな老婦人フリーダだった・・・。

 「貴女が孤独なのは、貴方自身に問題があるからよ!」
 キレたアンヌがフリーダに浴びせた言葉。
 このフリーダという老女、財産の有無を別にすれば去年亡くなった伯母に
よく似てる気がしました。
 自分の小さな世界でのみ生きていて、他人の介在を頑なに拒否する。
 親、姉妹、まして他人の言う事を聞く気なし、自分の考え方と気持ちのみ
を喋り自己完結させてしまう。
 伯母を見ていたから、フリーダの扱い難さは実感出来るけど、元アマンと
アンヌに外見は兎も角、「頼る」気持ちのあるフリーダは「まだまだ、甘い」。
 伯母は90歳過ぎても「初志一徹」、急変する3日前、見舞いに行った時も
「何で、来たの!」。(笑)
 こういう人は、当人はいいでしょうが、周りが、その尻拭いを全部やるんで
すから気楽な「生き方」なのかもしれません。
 埋葬の時、教会で懇意にしてた方が「好きな事を存分にやって、考えよう
で幸せな生き方だったんじゃないでしょうか」って仰ってました。
 後で弟と、「お陰で、お袋が全部、背負い込むハメになったんじゃねえか、
お気楽なコト言ってくれるよな」と悔し涙の気分でしたよ。
 好き勝手やって、母以外全員と断絶、何も言わず亡くなって、後始末は全
部僕がやる事になって。
 「自由に生きる!」ってカッコいい言葉だけど、その分、誰かが必ず尻拭い
をさせられるんです。(笑)

 個人的な事を書いてしまいましたが、作品は良かったと思います。
 猫も歳を取り過ぎると化け猫になると言いますが、パリジェンヌの老婆(妖
怪)J・モロー。
 この人、パリを離れたら3日で「あの世」へ行っちゃうんじゃないかと思える
くらい、幾つになってもパリジェンヌ、何処を切ってもパリジェンヌ。
 これは凄い事だと思います。(真面目に褒めてます)
 そしてフランスを代表するパリジェンヌの化け物と堂々とタメ張って一歩も
引かない、アンヌ役のライネ・マギ も素晴らしい。
 日本では無名ですが、J・モローという「化け猫」と対峙する役もあって、歳
の割にチャーミングに見えるし、演技も上手い。
 只、これ日本に当て嵌めると20年前の杉村春子と草笛光子に見えなくも
ない。(爆)
 二人の間で中和剤の役目を負ったパトリック・ピノーも、最初、調子いいだ
けの男に見えたけど、段々、大人の「男」に見えてきて良かったです。

 「貴女が孤独なのは、貴方自身に問題があるからよ!」
 老後を考えれば、この言葉は正論。けれど70越えたら性格変えるのは殆
ど無理。
 気をつけましょう。(勿論、僕の事です(笑))

 2015.8.23
 DVD
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 憧れて 彷徨(さまよ)う巴里の 紙芝居 一幕おりれば 空は明けゆく
 
コメント (3)
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「彼は秘密の女ともだち」と「悪魔のワルツ」 (ネタバレです!)

2015-08-15 01:58:07 | 映画感想
 今月の「ブログDEロードショー」、予定外の作品。(笑)
 3章立てなので長くなります。

 「彼は秘密の女ともだち」(「UNE NOUVELLE AMIE」、2014年、仏)
   監督 フランソワ・オゾン
   脚本 フランソワ・オゾン
   原案 ルース・エンデル
   撮影 パスカル・マルティ
   出演 アナイス・ドゥムースティエ  (クレール)
       ラファエル・ペルソナス  (ジル)
       ロマン・デュリス  (ダヴィッド/ヴィルジニア)
       イジルド・ル・ベスコ  (ローラ)

 小学校へローラが転入してきて、クレールとローラは無二の親友となる。
 いつでも一緒の二人は遊びで「血の盟約」を交わしたりもした。
 やがて大人になった二人は、それぞれの伴侶を見つけ、ローラは妊娠、
出産。
 しかし、その直後、ローラは病を得て他界。
 葬儀でクレールはローラの夫 ダヴィッドと名付け親でもあるローラの娘
を生涯見守っていく事を誓う。
 ダヴィッドは赤ん坊がミルクを飲まない事で困るが、亡きローラの服を着
て飲ませる事に成功。
 それが抑えていた「女装趣味」を復活させてしまう(ローラは趣味を承知
してた(笑))・・・。

 男から見たら「ふざけんじゃねぇ!」
 でも、多分、観る角度は、そこからじゃないんでしょうね。(笑)

 ヒロインの夫ジルは、福山雅治似の美形で生活力有って、性格は一点
の曇りもないイイ人。
 (これでヒロインも超美人というなら別だけど、「赤毛のアン」が成長した
ような可愛いけど普通なんですよね)
 「宗教映画」でもないのに、こういう人が出てきたら「物語上、必要なだけ
で実態は「透明人間」」と思えばいいのかも知れません。(笑)

 クレールはダヴィッドの趣味を知った時、嫌悪感を感じて去るのですが、
捨てても置けず、やがて化粧のアドヴァイスや脱毛の手伝いもするように
なります。
 只一人、ダヴィッドの秘密を知る事で、「秘密の共有」者同士の親密さが
増してしまうんですね。
 やがて二人は一線を越えそうになるのですが、その度にクレールの理性
が押しとどめます。
 しかし、そのクレールも亡きローラと「愛し合う」、或いは夫ジルとダヴィッ
ドが「愛し合う」妄想を見るようになってしまう。
 (話の都合上なのかダヴィッドは「女装趣味」で「女」になりたくても、ホモ
ではなくアレはノーマル)
 夫と亡き親友の夫、二人の間で揺れるクレール。
 この作品の惹句は、
 「一度きりの人生を、自分らしく生きたいと願う“女たち”の物語」
 だとか。(笑)

 普通に観れば、大概は惹句とおりの見方で収まるんじゃないでしょうか。
 (話はイイんだけど結論部、全然、納得できません)

  シネスイッチ銀座1
  2015.8.14

 「悪魔のワルツ」(完全ネタバレ)
  (「The Mephisto Waltz(ザ・メフィスト ワルツ)」(1971年、米)
   監督 ポール・ウェンドコス
   脚本 ベン・マドウ
   原作 フレッド・マスタード・スチュアート
   撮影 ウィリアム・W・スペンサー
   音楽 ジェリー・ゴールドスミス
   出演 アラン・アルダ (マイルズ)
       ジャクリーン・ビセット  (ポーラ)
       クルト・ユルゲンス (ダンカン)
       バーバラ・パーキンス (ロクサンヌ) 

 元ピアニストで現在は音楽ライターで生活してるマイルズと、その妻ポー
ラ。
 或る日、名ピアニスト ダンカンを取材した事からダンカンと娘のロクサン
ヌに気に入られる事に。
 マイルズは幾度もダンカンの屋敷に招かれるようになるが、実はダンカン
には死期が近づいていた。
 そしてダンカンの死。
 ポーラがマイルズの変化に気付いたのはベットの中だった。
 急にテクニックが上手くなり、ポーラの肉体はそれまでにない快感に包ま
れる。
 ベットばかりでなくピアノも急激に上達していくマイルズ。
 不気味に思ったポーラは、ロクサンヌの元夫を訪ね、二人が「悪魔崇拝
者」で近親相姦関係にある事を知る。 
 しかし、その元夫もポーラの娘も急死してしまう。
 次に狙われるのは自分と自覚したポーラは反撃に出る。
 「悪魔の儀式」を受け入れ、自らの生命を悪魔に差し出す事でマイルズを
取り戻そうと。
 幾日後、ダンカンの屋敷でマイルズはロクサンヌと抱き合う。
 ロクサンヌの顔には勝利の歓びが浮かんでいった。

 この作品、ちょっと変なんですよね。
 確かにポーラはマイルズを取り戻したけど、マイルズの中身ってダンカン
なんだもの。(笑)
 一体、何なんでしょうね?、男としては数少ないJ・ビセットのオッパイが拝
見出来る希少作品なので、それだけで合格!なんですけど。(汗)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 何が言いたいかっていうと。(笑)
 クレールが愛したのは、本当にダヴィッドなのかという疑問なんです。
 「血の盟友」関係だけども、ダヴィッドと同じく性向はノーマルで二人はレ
ズでもバイでもない。
 けれど、クレールはローラに「愛される」夢を見てるから、ローラに無かっ
たにせよクレールには少なからず「願望」は有った気がする。(ローラが姉、
クレールが妹の雰囲気)
 ヴィルジニア(女装時のダヴィッドの名前)が瀕死の重傷で危篤状態にな
った時、クレールが二人で行ったゲイ・バーで歌われてた歌を口ずさみなが
ら、病室に持ち込んだ衣装でダヴィッドをヴィルジニアに変えてしまいます。
 これが「悪魔のワルツ」の儀式に当て嵌まるなら、ヴィルジニアの姿で覚
醒したのは誰なのでしょう?(笑)
 「血の盟友」関係の二人とローラの娘、親子三人の姿が本当に見た目の
ままなのか・・・。
 この物語はヒロイン・クレールの視点で進行していきますが、本質的な所
は「クレールとローラ」の話ではないでしょうか。
 そうです、これは、普通の映画に見せ掛けた「ホラー」なんです!!

 ・・・な、訳は有りません。(爆)
 (そうでも考えないと男は「やってられねぇ!」(怒))

※ヒロインのアナイス・ドゥムースティエ、いかにもフランス女優って感じ(特
 別綺麗な訳じゃなく、普通っぽいけど魅力が有る)なんだけど、いいなァ。
(エロ目線有り~笑)
8.17 追記
※この作品を観て「自分に素直で何処が悪い」と思った女性陣、ヴェルダ監督の
「幸福」観ても怒らないでね。(笑)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 忍ぶれど にじみ出るのか わが趣味は おとこ好きかと ひとの問ふまで
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「ハッピーエンドが書けるまで」

2015-07-18 23:22:38 | 映画感想
 「ハッピーエンドが書けるまで」(「STUCK IN LOVE」、2012年、米)
   監督 ジョシュ・ブーン
   脚本 ジョシュ・ブーン
   撮影 ティム・オアー
   音楽 マイク・モーギス
   出演 リリー・コリンズ
       グレッグ・キニア
       ナット・ウルフ
       ジェニファー・コネリー

 現在、「お疲れ」真っ最中!(笑)
 こんな時、「重い映画」は勘弁という訳で、タイトルに惹かれて行ってきま
した。
 (このタイトルが「釣り」だったら激怒、ホント余裕無い状態(爆))

 有名作家ビルとその子供達。
 それぞれの心の中に、数年前、家を飛び出し再婚したエリカの影と傷が
癒えぬままになっていた・・・。

 疲れてるからバッサリ言っちゃいますけど、
 「理屈で情を描いた作品」
 劇中の出来事、人物の行動、その殆どが方程式のような理屈で説明出
来ちゃう。
 方程式の解は「エリカ(主人公達の妻であり母親)の不在」。

 ビル>有名作家 未だ元・女房を忘れられず、帰りを待ち続けてる。
    元・女房の再婚先へ不法侵入(のぞき)までする未練ぷり、創作意欲
    消失中。
 サマンサ>長女(19)、作家デビューを果たす。
    母に捨てられたショックで、心に厚い鎧を着せてる
    「この世に「愛」は無く幻想に過ぎない」と割り切り、夜の街に出ては一
    夜限りのsexを楽しんでる。
 ラスティ>長男(弟、17?)、作家志望。
    姉ほど開き直れず、ナイーブな分、家に籠りがち。
    「社会経験がなければ書けない」と父親に発破を掛けられ、好きな娘
    にアタック開始!
    只一人、再婚先の母に会いに行ける存在。

 不在の人物が主要人物達を動かす構図は「レベッカ」に似てなくもないけ
ど、そういう話では勿論有りません。(笑)
 
 「ハッピーエンドが書けるまで」
 果たして、登場人物達が一回り成長して、それぞれの道を歩み出して書く
のか。
 それとも、成長した後、元の鞘に収まった姿を書くのか。
 理屈で説明出来ちゃう浅い話ではあるけど、この邦題、中々、上手いタイ
トルだと思いました。
 そして今の僕には、ちょうどいい作品で、気持ちを幾らか楽にしてもらえた。
 その時の気分次第だけど、こういう「お気楽作品」、結構、好きなんですよ。
 

 リリー・コリンズ(「白雪姫と鏡の女王」以来、久々の再会(笑))
 良く言えば、喜怒哀楽、非常にハッキリした演技。
 悪く言うと、それぞれの中間、人間のグレーな部分がない。
 もしかして、彼女、ダイコン?(笑)
 でも、この作品を支えてるのは、R・ドレイファスもどきのG・キニアじゃなくて
7割方は彼女の魅力(特に笑顔)。
 男だから、そう見えるんで、女性から見た彼女は解りませんが。(笑)
 あ、G・キニア、悪くは無いんですよ、只、見る度にドレイファスを思い出す顔
の作りがね、多分、実質、主人公はこっち。

 予告編 https://www.youtube.com/watch?v=-cYlzVRcuXs

※一つ解りづらかった所
 後半、母親に異変が起きるのですが、エリカなのか劇中、もう一人出てくる母
 親なのか混乱した。
 理由は前のシーンにある、あのように繋げてしまうから間違える。
 サマンサの恋人と弟(ラスティ)、顔が違っていても雰囲気似てるから、少しの
 間、勘違いして観てました。(汗)
 「ママ」じゃなくて「お母さん」と言ってる時点で気付くべきなのは確かなんだけ
 ど。(笑)
※L・コリンズの二の腕を見ると、「そこのみにて光輝く」の池脇千鶴を思い出し
 ます。(笑)
※J・コネリーも母親役(L・コリンズの)やる歳なのか・・・。

 新宿シネマカリテ2
 H27.7.18

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※本日の一首 還暦を半年後に控え詠める

 天の川 ふりさけ見たら ぎっくり腰 
  息も出来ずに 探す杖かも

※石が飛んでくるかもしれないので、マジメに映画感想なのも。
 (余計、飛んで来たりして(笑))

 幾重にも 築きし壁さへ 君が吹く 角笛ひとつ 傍に有りせば
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「奇跡のひと マリーとマルグリット」

2015-06-14 20:36:06 | 映画感想
 「奇跡のひと マリーとマルグリット」(「MARIE HEURTIN」、2014年、仏)
   監督 ジャン=ピエール・アメリス
   脚本 ジャン=ピエール・アメリス   フィリップ・ブラスバン
   撮影 ヴィルジニー・サン=マルタン
   音楽 ソニア・ヴィダー・アサートン
   出演  イザベル・カレー
        アリアーナ・リヴォアール
        ブリジット・カティヨン

 聾唖の子供達を預かってる修道院に、或る日、見えない、聞こえない、喋
れないの三重苦を抱えた娘を預けに農夫がやって来る。
 その娘マリーは、本能だけの野生児のようだった。
 院長先生は断るが、修道女マルグリットが「私に、やらせて下さい」と願い
出る。

 「19世紀末、フランスに実在した“もうひとつ”のヘレン・ケラー物語」
 この作品の惹句ですが、まさしくその通りで、それ以上でも、それ以下でも
ない。
 ドラマティックなのが好きならハリウッドの「奇跡の人」(1962年、アーサー
・ペン監督)を、淡々とした短編が好みなら、こちらの作品が合うかもしれませ
ん。
 観賞後の印象も、左程、違わない気がしました。
 勿論、設定の違いは有りますし、テーマも違うと思います。
 「奇跡の人」がヘレンとサリバン先生との絆と愛情を描いたものならば、こち
らは「愛情の伝承」かもしれません。
 舞台が修道院なので、キリスト的な「汝の隣人を愛せよ」(マルグリットが受
けた啓示は、これじゃないかな)も僕は感じました。

 「愛情の伝承」
 観ていて、途中から「赤ひげ」の「おとよのパート」を思い出していました。
 保本からおとよへ注がれた優しさが、回復後、おとよから長坊へと引き継
がれていくように、この作品では、マルグリットからマリーへ、そして・・・と、
なってる。
 非常に個人的な印象ですが、とても似てる気がしました。
 (ラスト近くでなく、マリーが言葉を覚えだした辺りから「赤ひげ」が重なって
きた)

 三重苦のマリーを演じたアリアーナ・リヴォアール 。
 「奇跡の人」のパティ・デューク、「赤ひげ」の二木てるみに比較したら可哀
そうかもしれませんが、他に誰か居ないの?って気がしないでもない、体格
が立派すぎて何となく違和感が付き纏っちゃう。
 でも、修道院の門前でマルグリットと共に両親を待つシーンは良かった気
がします。

 淡々とした感動がお好きな方にお勧め、かな。(汗)

※19世紀だって杖は有るでしょ。

 2015.6.13
 シネスイッチ銀座2
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「セッション」

2015-04-26 01:12:53 | 映画感想
 去年、場外ホームランの作品に何本も当たった反動か、今年はイマイチ不
作気味。
 これで初見18本目だけど、HRはおろか3塁打さえ無い感じ、本作は当た
りが強烈過ぎて2塁打止まりだったかな。

 「セッション」(「WHIPLASH」、2014年、米)
   監督 デイミアン・チャゼル
   脚本 デイミアン・チャゼル
   撮影 シャロン・メール
   音楽 ジャスティン・ハーウィッツ  
   出演 マイルズ・テラー
       J・K・シモンズ
       メリッサ・ブノワ

 名門音楽学校へ通うニーマンは、鬼教授フレッチャーの目に留まりエリート・
バンドへ編入される。
 そこで待っていたのは、少しのミスも許されない強烈なレッスンだった・・・。

 この作品、終わり方がいい。
 極めてドライにスパッと終わらせてるのが大好感。
 作品自体、教授vs生徒の一点にピントを合わせた非常にシンプルなものを
スピードで一気に見せるから、この終わらせ方が正解だと思います。
 付属部分のガールフレンドの描き方も最小限。父親の描写がテンポダウン
させてるけど、これが無いとタメの一切無い作品になってしまうから、邪魔だ
けど必要でしょう。
 (ガールフレンドの描き方、凡百ならもっと描き込みたくなる所)
 現代に於いて、これだけシンプルな作品をしっかり魅せる事が出来たのは、
全て教授役J・K・シモンズの個性のお陰。
 確かに主演M・テラーのバチ捌きは素晴らしいの一言なんだけど、それもシ
モンズという強烈な太陽があるからこそ光る事が出来たような気がします。
 「ガンダム」で言えば、シャアという光が有るからアムロが映える、って感じで
しょうか。
 只、強烈な個性に必死に対抗する個性は描けてるけど、「パレードへようこ
そ」と同じで、その内面には余り立ち入っていない。
 表面的な個性を描く事だけで止まってる、それが、この作品の弱い所じゃな
いかと思っています。
 赤い彗星vsガンダム、マシーン同士の戦いは描けてるけど、搭乗してるシャ
アとアムロという人間は類型で終わってる。
 そんな感じがしました。

 昔々のスポ根モノ、「巨人の星」、「あしたのジョー」、「アタックNO1」、いろい
ろ有りましたが、これはモロに「巨人の星」ですね。(笑)
 男性向けかもしれませんが、中々、面白かったです。

※「ジェレミー」(1973年)でチェロの先生がラッキョウ頭だったけど、男の音楽
 教授はラッキョウ頭がデフォなのか。(笑)
 顔も良く似てるし。
※「ペーパー・チェイス」(1973年)では、L・ワグナーとの恋愛パートを削って
 勉強一点に絞った方が良かったと言う人が少なくないのですが、それを実行
 すると、この作品に近くなると思います。

 2015.4.24
 TOHOシネマズ新宿 スクリーン7
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「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」

2015-03-22 01:01:48 | 映画感想
 「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」
 (「THE IMITATION GAME」、2014年、英・米)
    監督 モーテン・ティルダム
    脚本 グラハム・ムーア
    原作 アンドリュー・ホッジス 「エニグマ アラン・チューリング伝」
    撮影 オスカル・ファウラ
    音楽 アレクサンドル・デスプラ
    出演 ベネディクト・カンバーバッチ
        キーラ・ナイトレイ
        マシュー・グード

 天才数学者アランは、戦争開始と共に政府機関の面接を受ける事に。 
 目的はナチスの開発した暗号を解読する事。
 メンバーはチェスのチャンピオン等、ユニークな面々。
 不遜で孤高のアランは、チームを拒否するが・・・。

 この作品の言いたい事は何なのか。
 観た直後なので、まだハッキリと解らない。
 簡単に言えば、アインシュタインさえ何とも思わない英国の天才数学者を、
エニグマ(ナチスが作った解読不可能と言われた暗号)との格闘の過程を通
して描いたモノなんだろうけど、それだけでは釈然としないものが有るんです。

 アラン・チューリング(英国の数学者。戦時中、暗号解読に携わる)
 ・21世紀の文明的基礎を作った男(の一人)。
 ・機密上、ある時期まで伏せられていたが第二次大戦を2年早く終わらせ
  たとも、1000万の戦死を防いだとも言われる。(戦時中、チームのメンバ
  ー誰もがアランの功績は、その機密上、公にならないだろうと思っていた)
 ・名門パブリック・スクールに在籍してた時、親は校長から「ここに居たいの
  なら教養を、学者になりたいなら、ここに居るのは時間の無駄です」と言わ
  れたとか。

 冒頭、「これは事実に基づいた物語」と出てきますが、勿論、時間、登場人
物等、かなり脚色されていると思います。
 「基づいた話」で、「真実の物語」とは言ってませんから。(笑)

 まァ、それは兎も角。
 アラン・チューリングという人間にピントを当てて、その人間性、孤独、哀し
みを浮き上がらせるという部分は出来てると思います。
 戦時中を中心に、1951年(作品中の今)、パブリック・スクール、三つの時
代を絡ませ、彼の性格の由縁や偉業、その結末は観てれば自然と解ります。
 でも、何か、それだけじゃないモノを感じるんですよ。
 (イギリスの、いかにも勿体付けた感じが、そうさせるのかも(でも、嫌いじゃ
ないと言うか好き))

 「僕は人間か?機械か?」
 或る人物にチューリングが問いかける言葉。
 その能力故、人間であるチューリングが「神」の仕事を代理してしまった苦悩
は、何となく解る。
 神が唯一と同じように、抜きん出た唯一が抱える底知れぬ孤独も。
 チューリング自身は無神論者だから、その事について、自分の「有罪・無罪」
を決めるのは神でなく機械と思ってるのかもしれない。
 でも、観せらた我々は人間だから、判断なんか出来やしない。
 この、モヤモヤ感は、結局、その辺から来てるのかもしれません。
 突き詰めれば、人が人を正当にジャッジ出来るのか?という事なのかも。
 (差別は功績をも消し去る、という単純なマイノリティ擁護じゃないよね・・)

 役者陣は、皆、適役。
 主演のベネディクト・カンバーバッチは適役で好演、将来、M・ケイン、D・サザ
ーランドくらいの大御所になる気がします。(共通点、顔が長い~ジョークでっせ)
 K・ナイトレイ演ずるジョーンは、パターンの裏をかかれた感じ。(笑)
 1ヶ月で2度もお目に掛るなんて。でも、こういう癖の有る美人は好みのタイプ、
でも、それ以上に、妙に印象に残る不思議な女優さん。(S・ランプリングから気品
を取って、ちょいと顔の造作を雑にした感じ~猫背っぽいのは役作り?)
 今回は、しっかり英国人に見えました。

※「神の仕事」と言っても、近代ですから、システィマチックな筈。
 一人が背負う事じゃないけど、誰かがシステムを発案するわけで。
※MI6が舞台なので、ちょっと、傑作「裏切りのサーカス」を彷彿とさせる所もあり
 ます。
 只、そういうミステリー要素はゼロです。(笑)

 TOHOシネマズ みゆき座
 2015.3.21
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2014年 キネマ旬報ベスト・テンと「そこのみにて光輝く」

2015-01-15 22:27:39 | 映画感想
 キネマ旬報のベスト・テン及び各賞が発表されたようです。
  http://www.kinenote.com/main/kinejun_best10/2014/award/

 「そこのみにて光輝く」
 キネマ旬報邦画部門1位。
 僕のベスト10でも、新作部門3位でオールタイム・クラス10位。
 主演女優賞候補に池脇千鶴、助演男優賞候補に菅田将暉。
 記事を書く積もりは無かったのですが・・・少しだけ書いてみます。

  監督 呉美保
  脚本 高田亮
  原作 佐藤泰志
  撮影 近藤龍人
  音楽 田中拓人
  出演 綾野剛
      池脇千鶴
      菅田将暉

 貧乏が更なる貧乏を呼び、貧乏が全ての不幸を呼び込む。
 画面の隅々まですえた匂いのする、「みんなビンボが悪いんや」という作品。
 2013年の「共喰い」と同じく、地方都市の底辺に生きる人達の、どうしよも
ない遣る瀬無さと強烈な閉塞感は素晴らしい程に良く描けてると思います。
 でも、昔からこの手の作品は、どうにも好きになれない。
(邦画の暗いジメッとした4畳半物語)
 西洋の貧乏物語は平気なんだけど、邦画だとダメなんですよね。(汗)

 池脇さん、演技も良かったけど彼女の肩からふくよかな二の腕にかけてが
ね(笑)、美しくはないのだけど何ともエロっぽくて実に女盛りって感じで、演技
を超越してました。(汗)
 只、この役、彼女のベビーフェイスが邪魔しています、ドスを利かせる時に凄
味が出ないんですよ。
 菅田くんは、どうにもならない鬱屈を抱えながらも、あくまでも軽薄に生きてる
ダメ男振りが良かった。
 (まるで「傷だらけの天使」の水谷豊だったのが、ちょっと難点)
 最後の見せ場も含めて、主役を喰っていたと思います。

※この先、何が有るかは知らないけど、僕にとって、この手の作品は「祭りの準
 備」一本有れば、もう充分。
 これは観た年齢なのかな、もし今が二十歳頃なら、この作品や「共喰い」が「祭
 りの準備」の位置を占めるのかもしれません。
※「東京の人には、この感覚、きっと解らないと思う」、福井出身の義弟に言われ
 ました。
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「夜の河」

2014-12-02 00:11:08 | 映画感想
 「夜の河」(1956年・日本)
   監督 吉村公三郎
   原作 沢野久雄
   脚本 田中澄江
   撮影 宮川一夫
   音楽 池野成
   出演 山本富士子
       上原謙
       東野英治郎
       小沢栄(太郎)

 昭和30年頃。
 京の堀川沿い、染物職人の娘、舟木きわ。
 彼女はろうけつ染めで才能を発揮、腕は父を凌ぎ、販路も自分で開拓して
いく程の才気と行動力を持っていた。
 家業を娘に頼りながらも、30手前の娘の先行きを心配する父親。
 そんな彼女が、ふとした偶然から女高生の娘を持つ阪大の教授と恋に落ち
る・・・。

 伝統と仕来たりの残る古い世界で、「女の自立」を描いた作品。
 メーデーのシーンは資本家と労働者を、男と女の関係に例えたのでしょう。 
 従属ではなく対等なのだと、実に直截的で野暮なシーンに感じました。
 この映画で赤・朱・オレンジ等、この系統の色はきわの秘めた情熱を示して
いるのですが、メーデーの旗は余りに図式的、説明に過ぎると思います。

 この作品、男の無神経、狡猾、計算をきわの台詞によって糾弾しながら、対
比するように女の一途さ純粋さを凛としたものとして描いています。
 僕は、ここに引っ掛かる。
 妻子有る男に惚れたというのは人間だから仕方ない、その事に対して僕は
どうこう言う積りは微塵もない(それを言ったら映画の何分の一かは作れなく
なる)、でも、そんなに一方的に男をなじる程、きわは立派なのかな。
 そもそも男をそこへ追い込んだ責任の半分は自分にある、と余り考えていな
いように見えるんですよね。
 彼女が感じてる罪は奥さんと娘さんに対してで、男に対しては「綺麗な愛」で
誤魔化してる。
 男の無神経をなじるなら、研究室へ突然押し掛けた自分はどうなのか。
 (今と違って昭和31年だと、研究室や教授室にも電話はなく、連絡手段に乏
しいとしても)
 スタッフが何人も居る中、突然、飛びっきりの美人が訪ねて来たら、噂になら
ない方がおかしいのに、自分の無責任な行動には無関心。
 東京に進出する為、銀座の展覧会の準備中、協力してくれてる卸屋さんを放
っといて男と逢引きなんて、公私混同も極まってます。
 例え卸屋の一人が「色と欲」に目が眩んででは有っても、後の彼女の行動と
同じで「それはそれ、これはこれ」で彼女の為に汗を流してる人が何人もいるの
に逢引きは無いでしょう。
 そんなこんなを「一途で綺麗な愛」で誤魔化されてもねぇ。(笑)
 男には泥を掛けても自分は被らない(当人は被ってる積もりらしい)、二人一
緒に汚れた泥を被ってこそ道ならぬ愛、不倫の本道。
(喫茶店で散々「女の自立」を聞かされた挙句、お茶代男持ちみたい(笑))

 極論すれば、この作品は山本富士子の美貌を観る為に存在してる(演技も上
手い)。
 整い過ぎて僕の好み(汗)とはちょっとズレているのですが、彼女が非常に美
しい事に全然異論は有りません。
 もう一つ言えば、宮川一夫の色彩設計も見所の一つでしょう。
 京女の「いけず」ぶりと凛とした気丈さを観たい方にはお勧め。(汗)

※音楽の使い方に殆どセンスを感じられませんでした。
 非常に鬱陶しい。
※僕の生まれた年、1956年キネマ旬報第2位の作品、やっぱり評論家のキネ
 旬ランキングと僕はとことん相性が悪い。(笑)


 
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「6才のボクが、大人になるまで」

2014-11-23 20:43:07 | 映画感想
 「6才のボクが、大人になるまで」(「Boyhood」・2014年・米)
   監督 リチャード・リンクレイター
   脚本 リチャード・リンクレイター
   撮影 リー・ダニエル  シェーン・ケリー
   編集 サンドラ・アダイア
   出演 エラー・コルトレーン
       パトリシア・アークエット
       ローレライ・リンクレイター
       イーサン・ホーク

 タイトル通りの作品。
 シングル・マザーの子供(姉弟の弟の方)がカレッジに入学、入寮した日までの12年間をドキュメンタリー・タッチで描いています。
 同じドキュメンタリー・タッチだった「ブルーバレンタイン」の続編のような感じでもあるし、倉本聡の「北の国から」の純と蛍のアメリカ版にも思えます。
 只、何十時間使って描いた「北の国から」と2時間半の「6才の~」では、当然、深みが違います。
 それでも12年間を費やし、的確に演出、編集した本作の完成度は高く、批評等で高評価なのは納得できるものが有りました。
 
 この作品は6才~18才までのメイソンJr.の視点で語られていきますが、紆余曲折は有っても大きな「衝突」が無いんですよね、親子、姉弟、義父との関係、どれも小さな衝突は有っても価値観の相違による大きな「衝突」が無い。
 普通の人生がそうであるように、映画内でも上手にかわし、擦り抜け、やり過ごしていくんです。
 その辺に150分の映画として淡々とし過ぎてる感じがして、イマイチ評判ほど僕は乗り切れませんでした。

 「人の営み」はどんなに文明が進化しても、本質的な所では殆ど変りは無い。
 「歴史は繰り返す」とまでは言えないけど、似た事の繰り返しが続いていく。

 僕は「ブルーバレンタイン」の方が遥かに好きです。

※「観てれば解るだろ」なんだろうけど、一切の説明なく時間軸が変わっていくのは、ちと不親切。(これ、そういう映画じゃないでしょ)
 15才を過ぎると、髪型とかで感知しないといけないし。
 例えば、夜のシーンの次、朝のシーンは1年後、2年後なのに、スムーズに繋いでるから非常に疲れる。
 それが6才~18才まで、ずっと続くんですよ。(笑)
※アメリカに絶望したデレク・シアンフランス監督、まだ希望は残ってると信じたいリチャード・リンクレイター監督、そんな感じを受けました。
 
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「美女と野獣」

2014-11-13 23:35:32 | 映画感想
 「美女と野獣」(「La Belle et la Bête」2014年 仏・独)
   監督 クリフトフ・ガンズ
   脚本 クリストフ・ガンズ  サンドラ・ヴォン=アン
   撮影 クリストフ・ボーカルヌ
   美術 ピエール・アデノ
   衣装デザイン ピエール・イヴ・ゲロー
   出演 レア・セドゥ
       ヴァンサン・カッセル
       アンドレ・デュソリエ   エドゥアルド・ノリエガ

 子供に読み聞かせる「童話」としては申し分ないと思います。
 でも大人が観れば、美女が野獣に好意を寄せていくシーンなしに、いきなり、
 「愛してました」
 と言われても、
 「???」(笑)
 まぁ、この美女、ちょっとツンデレなんで、野獣の過去と優しさ、実家へ帰してくれた心に
デレッとなったのかもしれません。

 その部分を除けば僕は世評ほど悪い作品ではないと思っています。
 実は僕、ディズニー版もJ・コクトーの作品も観てません。
 だから推測でしか書けないのですが、
 「美女と野獣」=ディズニー・アニメと思ってる人には合わないだろうな、と想像はしています。
 ディズニー・アニメって僕から見ると、アメリカの「宝塚」
 どんな原作だって、無理矢理に宝塚にしちゃうんです。

 「美女と野獣」、元々はフランスのおばさんが子供に読み聞かせる為に作った「お話」とか。
 今回の作品は、フランス・ドイツの合作で原作に重心が有る作品。
 根性曲がりで皮肉屋のフランス人がパーフェクト・ハッピーな作品を書く訳がない。(笑)
 (相対的にアメリカ人はパーフェクト・ハッピーな話に癒されなければやっていけない)
 ハリウッドやディズニーのサービス過剰に辟易してる僕にとって、この作品は丁度良い塩梅だったのです。

 他所の感想を読むと、王子様がディズニー風でなくギラつき度の高い髭面のオッサンというのが受け入れがたいようですが、どうでしょう?
 僕は、この作品にディズニー風の王子様こそ似合わないと思っています。
 (この辺が女性の夢を壊してるのかな(その割に男の夢は壊してない(笑))

 ラストも多分、今迄の作品と違うのだろうけど、
 現代に「お伽噺」を再現させる為の良い手法だと感じました。
 このラストで大人が観ても耐えうる作品になったと思います。

※僕が観に行った時点でYahho!の点数は2.8くらいだった、こんな低い点数のを観に行ったのは初めてかも。(笑)
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