セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所」

2015-11-22 13:44:51 | 映画感想
 「イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所」(「IF I STAY」、2014年、米)
   監督 R・J・カトラー
   脚本 ショーナ・クロス
   原作 ゲイル・フォアマン  「ミアの選択」
   撮影 ジョン・デ・ボーマン
   音楽 ヘイター・ペレイラ
   編集 キース・ヘンダーソン
   出演 クロエ・グレース・モレッツ
       ジェイミー・ブラックリー
       ジョシュア・レナード
       ミレイユ・イーノス
       ステイシー・キーチ

 或る雪の日、子供たちが休校になったのを幸いに家族で実家へ出掛ける。
 チェリストを目指すミアは最近、初恋の相手アダムと別れたばかり。
 彼女はジュリアード音楽院の合否通知を待っていたが、実家へ向かう途中、
対向車を避けようとした車がスリップ、衝突事故を起こしてしまう・・・。

 幽体離脱とか超能力、タイムトラベル、このテの作品、今は余り受け付けな
いのだけど、これは、まぁ、いいかな。
 幽体離脱したヒロインが知り得ない事を知るというアンフェアな展開は好きじ
ゃないけど、クロエちゃんだから目を瞑ります。
 60年近く生きてきたけど、結局、僕はこういう「くすぐったい映画」が好きな
んでしょうね。(笑)
 幽体離脱したミアが振り返る初恋物語。
 この作品、クロエの為の映画と言ってもいいかも。
 この世代でクロエ・グレース・モレッツが抜きん出てるのはファンのハンデを
差し引いても、それ程、異論はないと思うし、事実この作品でも初恋に揺れな
がら家族から自立しようとする、微妙な立場を巧みに演じています。
 だから、これはこれで充分アリだし、その安全路線に異議を唱える積りはな
いと納得しています。
 でも(笑)・・、「小さな恋のメロディ」、「フレンズ」、「ジェレミー」、「青い珊瑚礁」、
「ラ・ブーム」、初恋物語というカテゴリーならば「ローマの休日」も。
 いずれもヒロインは手垢の付いてない初々しさでキラキラしてる。「初恋物語」
というピュアな素材には無名のスレてない初々しさが必要条件なんです。
 この作品、時代が変わったのかもしれないけど20世紀だったら大ヒットした
かもしれない、今だって、ヒロインが無名の新人女優だったらコケる恐れ大とは
言え、賭けるに値する大博打だった気がする。
 「初恋物語」に於ける最大のポイント「ピュア」さで、クロエちゃん不利なんだよ
なァ。(汗)
 デビューした初々しさというのは演技力と別モノで、他の要素でカバー出来な
い一瞬のシロモノなんです。
 (A・ヘップバーンだって2作目、3作目も初恋物語だけど「ローマの休日」のピ
ュアさは再現しようがなかった)

 この作品、確かに古いスタイルかもしれない。
 でも、初恋というエキセントリックで振り幅が極端に大きい素材の場合、設定
は落ち付いた状況の方が良いと僕は思っています。
 素材が極めて敏感で脆いのに、周りまで一緒にワサワサしてたら焦点が定
まらなくなる。
 その点、クロエ側の人達が安定してる為、二人をクローズアップする妨げに
ならずピントがズレる事がない。
 ここを「甘い」と見てしまえば評価は低くなるだろうけど、僕はセーフです。(笑)
 それでも事故後の家族の生死は、只、ドラマチックにしたいだけのあざとさ、
人の生死を効果の為(だけ)に使ってる違和感、ここは大きく減点に感じました。
 更に言えば、家族、親類、友人、いずれも理想的すぎなのですが、これも、或
る意味、作劇上(本作のテーマ~生死の選択)の効果を狙っての単純化で、そこまで
簡易方程式でいいの?と言う疑問も有ります。

 原作ものだから何とも言えないけど、脚本書いた人の中に「ジェレミー」(197
3年)が有ったかも。
 個人的感想ですが、あの作品を「自分ならこう作る」で書いた部分が有るよう
な気がしてならない。
 チェロ弾き、方向は違えどアーティスト志向の二人、引っ越しによる決定的障
害(こちらの引っ越しは深刻だけど、或る意味、引っ越し)。
 出会いも似てるし、何となく流れもそんな感じだし。
スーザンとジェレミーが19と18で、もし、スーザンに選択権が有ったら・・・。
 只、「ジェレミー」は一ヶ月くらいの話で喧嘩する暇もなかったけど(途中、F・
ゼフレッリの「ロミオとジュリエット」を真似たシーンがありますが、その点、「ジェ
レミー」は「ロミ・ジュリ」に近い)、こちらは1年半の時間が有る為、二人の仲を喧
嘩を含めて複雑に出来てる。
 でも、それがシンプル・イズ・ベストだった「ジェレミー」を超える要素になったか
は、ちょっと疑問。
 「ジェレミー」は演出が硬く、特に前半30分の流れが悪い、演出のテクニック
では、こちらが上だと思うのですが、時代と劇中時間に合わせて詰め込んだ分、
上記のような「あざとさ」が目につく欠点も出てしまった気がします。

 最後に。
 クロエ・グレース・モレッツが普通の女子を演じてるを余り観ないのですが(笑)、
良かったです。

※「人が道を選び、選んだ道が人を作る」、いい台詞。
※僕がクロエ・グレース・モレッツを気にするのは、彼女がパトリシア・ゴッジに
 似てるからだと思います。
 映画を見始めた頃、J・フォンダのようなお姉さんタイプに憧れたけど、時代も
 あって同年代の女優は殆ど居なかった。
 初めて同年代の女子に憧れたのが「かもめの城」のP・ゴッジ(「シベールの
 日曜日」の時じゃないよ!)。
 彼女は20歳前にスクリーンから離れたけど、彼女の面影が重なるクロエが、
 この先、どんな役者になっていくのか・・・、もしP・ゴッジが女優を続けていた
 らどうなったのか、そんな興味もあってクロエちゃんを応援してる気がします。

 2015.11.21
 DVD
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2 コメント

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こんばんは! (*jonathan*)
2015-11-22 22:05:21
鉦鼓亭さま、先ほどはありがとうございましたー^^

ピュアさでクロエちゃんは不利・・・ 厳しいっスね~
現代のティーンの話で、初恋物語だからといっていかにも初々しい感じのコが演っていたら、私なら逆に嘘くさい印象を受けちゃうかも(笑)

「ジェレミー」ってオースティン・パワーズみたいな人の写真は見たことありますが、初恋モノの青春映画だったんですか!観てみようかな。
いらっしゃいませ! (鉦鼓亭)
2015-11-23 01:12:54
 *jonathan*さま、こんばんは
 コメントありがとうございます

現代のティーンの話で、初恋物語だからといっていかにも初々しい感じのコが演っていたら、私なら逆に嘘くさい印象を受けちゃうかも(笑)
>まァ、確かにそうです。(笑)
けど、初めて異性とリアルに付き合うトキメキ。あれは、やはり演技力とは別次元、幾ら上手く演じても・・・。(汗)
(クロエちゃんは、充分、的確な演技をしてました)

観てみようかな。
>余り、お薦めしません。(笑)
「初恋物語」というジャンルは、それぞれの世代に合う必要が有るから、世代が違うと感覚の領域で合わないい事が多いんです。

「ジェレミー」>16の女の子と15の男の子の初恋物語。
映画学校の先生が16mmのカメラで作った処女作。
中盤~後半、二人にピントが合ってからはリリシズムとテンポで魅せてくれるのですが、其処までが先生らしく「理」で進めてて、ちょっと窮屈。
元が16mmなので画質最悪ですが、一応、貼っときます。
残念ながらイケメン不在、モテない文系男子用作品。(爆)
もし、時間と興味があれば。
https://www.youtube.com/watch?v=jLi-oAbkEHQ
カテゴリーがMUSICAL'S になってますがミュージカル作品では有りません。
参考までに、僕の記事も貼っておきます。(汗)
http://blog.goo.ne.jp/leatitia55/e/a326d4acc36a7c7410cf1c795ec00e34

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