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『人造人間キカイダー』アンチ・ヒーローの出現

2010年06月27日 | 特撮


以前から思っているのですが、プロフェッサー・ギルの両脇にいるこのロボットって何でしょうね?やっぱ、“ダーク破壊ロボット試作1号、2号”でしょうか?そう考えると、なかなか物持ちのいい人(自分の作品に愛情がある人)です。プロフェッサー・ギル!(`・ω・´)

『人造人間キカイダー』(1972年制作)コンプリート。『仮面ライダー』(1971年制作)の大ヒットで到来した“変身ヒーロー・ブーム”に乗って制作された作品で、その後の東映ヒーローは『仮面ライダー』と『キカイダー』が形成したと言ってもいいでしょう。不完全な良心回路を持て生まれたロボット(人造人間)ジローがキカイダーに変身して、世界征服を企む悪の秘密結社ダークと戦い、そして行方不明となった自身の製作者・光明寺博士を探し出す物語。
特撮ヒーロー作品としての、非常に高いドラマ性を確立した作品で、1話完結制を保ちながらもシリーズとしての展開も進め、また、正義のヒーローと悪の組織のある種の葛藤劇、相克劇のような展開など、その後の東映ヒーローの描き方はこの作品で固められていきました。『仮面ライダー』が変身ポーズや、悪の組織、敵幹部といった“外面”を確立して行ったのに対し、『キカイダー』がその“内面”を裏打ちした…という感じでしょうか。



中でも特筆すべきはキカイダーの宿敵として現れ、終盤のドラマを大いに盛り上げたロボットサイボーグ・“ハカイダー”の登場でしょう。キカイダーを倒すためだけに生まれ、キカイダーを執拗に追い詰めながらも、遂にそれは果たされず、また先にキカイダーを倒してしまった破壊ロボット・アカ地雷ガマを殴り、蹴り飛ばし、破壊してしまい呆然自失するシーンは非常に印象的です。
同時期に……というよりハカイダーよりわずかに先に登場して、僕はもっと評価されていいと思っているのですが『快傑ライオン丸』(1972年制作)に登場するライバル・キャラ、タイガー・ジョーと合わせて、僕はこの二名の登場を特撮ヒーロー史における『アンチ・ヒーロー』の出現と位置づけています。

もしかするとタイガー・ジョーは後半の早い時期にゴースンの組織から距離をとりはじめ、悪のヒーローというより、ライオン丸とのライバル性と、ダブルヒーロー性が強調されている事がタイガー・ジョーのキャラの属性そのものを微妙なものにしているのかもしれませんが、なかなか、ここらへんは際どい話です。ハカイダーだって最期にはプロフェッサー・ギルを殺そうとしますしね。
『アンチ・ヒーロー』の出現については、また、改めてまとめたいと思っていますが、今述べたように、そもそもアンチ・ヒーローとそうでない怪人の差って何?っていうのは難しいですね。『月光仮面』のどくろ仮面だって『アンチ・ヒーロー』じゃないの?というと、そういう解釈もできますね、としか言いようがない。

それでも僕がハカイダーや、タイガー・ジョーをエポック足りえると思っているのは(というよりベーシックなヒーロー史観だと思いますが)彼らが独自の変身ポーズを持ち…則ち、ハカイダー→三郎、タイガー・ジョー→虎錠之助という“人間状態”を持ち(重要!)、独自の必殺技を持ち、ハカイダーは独自のモービル“白いカラス”を持ち、タイガージョーは獅子丸の太刀に比肩する“銀砂地の太刀”を持ち、果てはハカイダーなら『ハカイダーのテーマ』(名曲!)、タイガー・ジョーなら口笛のテーマ(…というか三郎も口笛を吹くけどね)といった非常に“ヒーロー的”な演出を受けた存在だからですね。

これは言い換えれば、そういう“ヒーロー演出”が確立されてはじめてアンチ・ヒーローは出現できたという事です。『仮面ライダー』の登場によって、変身(変身ポーズ)や必殺技と言った“ヒーローが持つべきギミック”というものが明確になって、それから、悪にそれを装備させるという発想が出てきたと言えそうです。
返って観ると、『月光仮面』で、どくろ仮面はアンチ・ヒーローではないか?というより、むしろ正体不明の月光仮面の方が“怪人”に近いのでしょう。…実際、怪人物である事は間違いないですしねw“怪傑”という言葉はやがて“快傑”という言葉に当て字(とりあえず広辞苑の検索では出なかった)し直されて行きますが、元はやっぱり“怪傑”なわけで。

とまれ『キカイダー』で出現したハカイダー~『アンチ・ヒーロー』の物語は次作『キカイダー01』においてさらに深化を遂げて行くんですけどね。…ここらへん、長坂秀佳先生の独壇場的な仕事だなあ…。まあ、機会を改めて語って行ければと思います。


人造人間キカイダー サイドマシン
タイヨー
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