大塚久雄 『社会科学における人間』

2019-08-17 12:10:11 | 宗教と社会

私が文系の大学にはいっていろいろな本を読んで、いまだに強烈な印象に残りいまだに、読みたいなと思えるような著者の本は限られたものですが、こと大塚久雄氏の本は、いまだにそう思える品位を備えています。

非常に簡潔で分かりやすく、奥が深く、それでいて含蓄が深い。

そういう人こそが注目されてしかるべきだと思いますね。 こういう人のこそ、その人の書いた本をチェックして、メモ帳に書いて、書店に注文してしまうのですね。

中には、難解で読みづらい本を書いてそれでよしとする学者も多いですが、そういう人のは勧めないですし、すぐに売ってしまいます(笑)。

今回は、この大塚久雄氏の本を紹介しましょう。

社会科学は人間を対象にした学問であり、人間の気まぐれで、どの国、どの地域でも当てはまるような法則は抽出することはできない。

しかし行動様式は、ある程度共通項があるがゆえに、それなりに古今東西妥当することはあるのですから、それを探り、これから先の行方を探索していこうというのが社会科学の理念といっていいでしょう。

大塚久雄氏は、まず『ロビンソン.クルーソー漂流記』を引き合いに出して、資本主義とはどういうものかを探求しているのですね。

その著者であるダニエル.デフォーの生きた18世紀の前半イギリスの農村地域の工業生産をモデルにしているのですね。

これを中産的生産者階級といっています。

その著書に出てくるロビンソンは、土地を囲い込み、そこに小麦を播き小麦畑にし、山羊を捕らえてして肉や帽子、日傘にしていたようです。

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最初、主は牧畜をしていましたが、のちに農業に変えたようです。

この頃は、経営者と労働者は相似的で社会層の差はほとんどなかったようです。

この中産的生産者階級が、のちの産業革命の元になったというのです。 デフォーが描いた小麦を植えたら、一部収穫し、一部は播種する。

山羊は一部収穫し一部は繁殖させる。

そのことで生産高が上がり生活が安定するのです。

それのみか、道具や資材を振り分けて、それからの経営を決定する、こういった現実的、合理的な態度が重要なのは言うまでもありません。

マックス.ウェーバーは、こういった様々な事業を数理的、数学的にとらえていこうとするのを目的合理性というのだそうです。

こういった思考が、のちの企業簿記、法理論、科学技術的な思考の支えになったのだそうです。

非常に驚きでしょう。

経営におけるバランスシートをつくるというのは、その最たるものでしょう。

合理的簿記、正確な原価計算、合理的予測といったものが経営者には当然必要です。

こういった合理的な思考法が、脳内になければ経営者には務まらないのですね。

その対極にある考えが、非合理的な思考法や行動ということになります。

ここでは呪術、伝統主義といったものがあげられています。

合理的な思考法や行動が支えになった資本主義をウェーバー風に言えば、合理的産業経営資本主義というのだそうです。

これが、近代ヨーロッパ、とくにイギリスで初めて生まれたというのです。

そういったバランスシートを作り、経営がうまく軌道に乗り、そのことをプロテスタントは神に感謝をささげる。

そのシートをプロテスタントは「信仰の記帳」というのだそうです。

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どうしたらおいしいものが出来て売れるかを考え探索し、模索する、それも合理的な思考法ですね。

しかし、損を出したら企業は潰れてしまう。 この予算内で上手くやり取りしないことには企業は存続していけない。

ではどうするかを考え、模索していく、この精神が資本主義の考えですが、損を出してもいい。

予算内でできなくてもいい。

両方の場合でも税金から徴収すればいいという考えはまさしく社会主義的な思考法ですね。

まさに日本の公共事業は社会主義ですね。

普通の経営者は原価計算や損益計算ができないとだめですね。

また合理的な思考は経営者にとって必要ですが、一般の従業員にも必要な思考法であり行動すべき内容でしょう。

材料を必要以上に使うことで、無駄だと思ったら必要以上には使わない。

お店の経営では、ゴミ入れの袋をパンパンになるまでゴミを入れれるならば、パンパンになるまで捨てない、といった行動の積み重ねが必要と思ったらそういう行動を積み重ねることで将来的にはそのお店や企業にとって損失が小さくて済むのです。

また、お客様に話しかけることで、友達になれて、そしていつまでも来てくれる。

これもまたそのお店にとって大事なことですね。

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こういった事は、ただ単に働くことでもヒントを得て行動につなげることができることですが、他に本をたくさん読んで、ヒントを得て行動につなげることができるのですから、経営者であろうが、従業員であろうが、いろんな本を読んで、行動に結びつける必要がありますね。

良いと思えるものはどんどん取り入れていくスタンスが必要ですね。

また、新しい技術の導入など、常に新しいことを情報として得て、自分の事業に適応させる、ということも大事ですね。

これは自明の理のように思えるのですが、こういった基本的な思考がない国にいって、合理的産業経営を移植しても無駄ということですね。

決してうまくいかないのですね。

北が南を、莫大な資金、技術、人材でもって支援するも支援するも上手くいかない、というのはこういうところに最大な理由があるのですね。

また、人間の行動様式、価値体系、人間観といったものも起因しているのですね。

ある企業が、インドネシアに支店を出して、ある時ボーナスをあげた。

すると、次の日に誰も出社しないので、その家々にたずねてみると、そのボーナスでみんなが酒を買って飲んでよぱらっている、という話もあるのですね。

日本では、ボーナスをもらったからとて、次の日も当然のように出社して仕事をするのが普通ですが…。

これは文化的な違いですね。

また気候的なものも起因していますね。

エジプトに配属になったことのある人に聞いたところ、エジプトではあまりに暑く、昼は仕事にならないから、3時まで寝ているということですね。

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日本では、日本人男性がフィリピン人女性と結婚するという例が山ほどあります。

それはフィリピンでも同様で、昼は非常に暑くて仕事にならず、男性は昼でも寝ているのだそうです。

それに比べ、日本人男性は朝から晩まで一生懸命働いている。

そんな姿を見て、フィリピン人女性は頼り甲斐を感じて、その男性に惚れて結婚してしまうのだそうですね。

しかしこれは単なる気候の違いですね(笑)

日本はフィリピンほど暑くないから、どんな猛暑日でも働けるのです。

このように経済成長のためにはどのようなことが必要か、といった事は残念ながらこの本だけで分かるほど単純なものではないのですね。

私は梅棹忠夫、鳥羽欽一、堺屋太一、飯田経夫その他いろんな人の本を読んで、経済成長には何が必要か、といった事を学んでいったのです。

その一環としてこの本を読むのがいいというだけの話ですね。

それを痛感した人は、いろんな本をむさぼるように その他、日本は産業経営に適した文化を持った国であって、文化的寛容性が高く、自分にいいと思ったものは何の抵抗もなく取り入れようとするのですね。

そういった部分もみのがせないですね。

プロテスタントの精神は反営利性を隣人愛を基調とするのですが、プロテスタントの合理的な精神はどの宗教とも結びつきやすいということですね。

しかし、プロテスタントの精神が=資本主義の精神ではないということですね。

プロテスタントの精神が営利性を帯びて、そちらに重点を置かれて資本主義の精神になったということですね。

また大塚氏は、マルクスを引き合いに出し、人間の行動の集大の結果が予期せぬ結果をもたらす、ということをはなしています。

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先に書きましたように、人間は気まぐれであるゆえに万全たる法則を見出すことはできない、ということです。

今回引き合いに出したプロテスタントの精神にしろ、原始キリストの頃には予測もつかないほどの変質をもたらしてしまったのは明白ですね。

こういう予測不可能なじたいが結果として出来するのですから、科学者たるもの研究を怠ってはならない、ということですね。

その他、ヒンドゥー教、儒教、仏教との比較を通じて、プロテスタントの精神を浮き彫りにしています。

大塚久雄氏のように、これまで書かれていなかったけれども、読むとなるほどと思え、その通りだと思われることを明確に書かれているを読むと、ものすごく感銘を受けるというのは古今東西決まってあるようですね。

ゆえにこの本は77年が初版なのにもかかわらずいまだ新本で入手可能なのですね。

やはり日々前進してくためには、単純明快な抽象的な理論を学び、それを日々の生活の中で具体的な行動に落としこんでいくのです。

その抽象から具体という経路を何度も行ったり来たりする。

それが王道ということを書いてあるメルマガを読んだことがありますが、私のこれまでの人生からも、そうと頷けますね。

その単純明快な理論の本を読んで、そこから人生、生活内でどのような行動にしていくかは、このような紹介ページを読むだけではかなうはずもないのです。

実際に本を読んで、自ら考えなくてはならないのですね。

そして他の本もいろいろ濫読していく、そういうスタンスが王道と思いますね。

それに賛同してもらえる人にはこの本はお勧めです。

●以下よりどうぞ!

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社会科学における人間 (岩波新書)

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