加藤薫 『骸骨の聖母サンタ・ムエルテ』

2017-12-19 13:28:24 | 宗教と社会

この本のタイトルとページを広告を見たときに、聖母という言葉を見ました。

これを見て、 「これはクリスチャンの国でのルポなのかな?」と思いました。

これまでいろんな宗教はいろんな時代や国や地域において変遷を受けてきました。

やはり国柄や文化、その宗教を奉じる人たちの価値観や理解によっていろんなアレンジを施されてきました。

ゆえに、このサンタムエルテというのは、キリスト教の某国においてアレンジされた象徴なのかなと思いましたが、実際に読んでみてそうではなかったようです。

このグロテスクな肖像を見て誰もが、黒魔術や死神信仰ととらえがちですがそうではないようです。

このサンタムエルテは、メキシコの3分の1の州で信仰が確認されているようです。

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骸骨姿の聖母を信仰し、そこに癒しや救いを求めるメキシコの精神生活をこの本で見ることができます。

死が、日常生活の中に当たり前のように存在している国において骸骨のイコンも図像も頭骸骨の台座や版画も、宗教施設以外にも存在し、サンタムエルテのキーホルダーやTシャツもそこかしこで売られて、それをつけている人も多くいるようです。

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死=骸骨が生の時間と対等に存在し、しかも一体化したイメージが紀元前の昔からメキシコ先住民から受容されていたようです。

ゆえにメキシコにおいては土葬が基本のようです。

そのサンタムエルテはどこから発生したのかという研究結果が、この本からいくつも学べますが、はっきりした根拠はわからない、不明のままのようです。

そこも興味深いですね。

メキシコにおいては、モノを強奪して売る、売買春、麻薬、銃の違法取引、幼児売買、強姦、強盗、殺人etcは当たり前の日常茶飯のようです。

これは、メキシコが経済的に豊かではないからなのが明らかですが、であるからといって経済的に豊かになれば、という安易な思考法だけではダメなのは明かです。

それくらいそういった犯罪が民の根に深く張ってしまっているのです。

前に中国の密入国斡旋業者や違法なことも平気でできる国民の文化をルポしたドキュメンタリー本を読みましたが、非常に根が深く、一朝一石にはいかないものを感じました。

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かといってそれを放置したままでいいという事でもないのはお断りします。

サンタムエルテの小さな像を持っている人もいるようで、その人たちは、鉱山で働いていて、 鉱山に入る前に、事故にあわないように、サンタムエルテに祈るということもしているようです。

この個所を見て、「自分もメキシコに生まれ育って、鉱山で働くようになったらこうなるのでは…」とも思いました。 あまりに平和すぎる日本にいては、こういう心情になってしまう人の気持ちはそうそうわかりようもないですね。

何年か前に、某南米の島に住む漁民が漁に出る前に、船の中で、サメに遭遇しないように祈りをあげているシーンをテレビで見ましたが、私もこの漁民の立場になったらこういう思いになってしまうのだろうな、ということを思いました。

また、メキシコの盗賊の英雄とサンタムエルテノの融合すらされているという例を見て興味を覚えました。 共感ではないですからお断りします。

こういうことが起きてしまうのは、働いても働いても貧しいという社会であるからこそですね。

先に書いたように、犯罪が日常茶飯で、いつも死と隣り合わせにしているメキシコの国民の立場になってみれば、やはりこのサンタムエルテを信仰の対象にしてしまうのでしょうね。

また日本では、このように宗教が生活の根に深く根を下ろしていません。 ゆえに共感できる人が少ないのは言うまでもないことです。

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前に『私はアメリカのイスラム教徒』という本を紹介しましたが、そこでイスラム教団体の1つであるnation of islam教団とその人物であるマルコムXを紹介しました。

そのマルコムXnation of islam教団の人間でした。

性的放縦、麻薬、悪辣、アルコールなどの悪癖があったようです。

このマルコムXやnation of islam教団によってイスラムの悪いイメージが醸成されてしまったことも紹介しました。

しかし、だからといってイスラム教=nation of islam教団のような団体という過度な一般化は危険です。

本当にその宗教について理解をしたかったら、その宗教について膨大な量の本を読み、その宗教の人と語り、理解を深めるという努力をしていかなくてはかなわないものです。

時間がかかる…ですが、その努力を惜しんではなりません。

1側面だけで団体や人を断定してはなりません。

自分たちの文化と違う、たったそれだけで、異端視したり、軽蔑視したりすることは戒めねばなりません。

西洋的な時間観とサンタムエルテを信仰する人々の時間観の違いをこの本で読み取ることができるようになりました。 それは、クロノス的とカイロス的の違いであるということが判りました。

その詳細については、この本を読むと非常に興味深いと思います。

その他、サンタムエルテがどのように生活に根を下ろしているか、崇拝の仕方、祭壇の種類、図像、その他いろんなグッズの種類の変遷を図によってこの本でみることができます。

●この本を読みたいと思ったかたは以下よりどうぞ!

骸骨の聖母サンタ・ムエルテ: 現代メキシコのスピリチュアル・アート

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参考図書 アスマグル.ハサン 『私はアメリカのイスラム教徒』

http://hair-up3times.seesaa.net/article/430688791.html?1513655989

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