堺屋太一 『歴史からの発想』

2020-02-02 11:30:28 | 歴史学

この堺屋太一氏は、惜しくもなくなってしまいましたが、非常に私が感銘を受けた知識人であり、著述家であり作家でありました。

初めにこの人の本を読んだのは大学在学中でしたが、非常にわかりやすい文章で、その論拠が充分で説得力のある文章でした。

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  堺屋太一

その魅力にひきいられて3時間以上、読書を続けてしまうこともしばしばでした。

それゆえに、本屋さんや古本屋さんで、この人の本を見つけるとすぐさま手に取って買うこともまたしばしばでした。

非常に惜しい人をなくしました。

この方のモラルとして、「歴史から学ぶ」という姿勢がどの本でも貫いているのです。

人間の行動様式、思考様式は古今東西そんなに変わるものではない、という通底する事実を発見し、それゆえに、問題点が現代に浮上してきたら、歴史から抽出事項を出して、それに論拠を見つけ、更に情報を収集して結論付けるという姿勢が貫かれてあるのです。

しかし、これは新たに勉強するのが億劫、あるいは情報を収集するのが億劫で、過去のことからしか学ばない似非知識人とは全く一線を画していますから、そこは確認をしておきたいです。

講義で毎年毎年、同じノートを読み上げているだけの教授ってどこの大学でもいますよね?

そんな人と堺屋氏とは違う、ということは確認しておきたいですね。

歴史から学ぶ、と言ってもこれまでに人類が蓄積してきたその内容だけでもかなりなものでして、その中から抽出するのですからそれはかなりの大変なことであることは言うを待たないです。

東京大学を卒業したということもあり、その脳内に情報を入れて、すぐさま抽出するのだけでも、それはそれは大変なことでしょう。

確かに脳内からだけでなく、自分で制作したノートなり、ディスクなりからも出すのでしょうけれども、それでも記憶力がなくては、どこどこにしまったということを記憶しておかなくてはできないことですので、これは凡人にはかなわないことのように思えますね。

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単なる記憶力だけでなく、いろんな歴史的な事実や事物を学んで、それを他のそれらと比較して、そのものを浮き彫りにしてその意義的なものを抽出する、そのことで非常に感嘆すべきことに読み手はなるのです。

単なる自分が学んできたことの受け売りや、祖述ではなく、自分の脳内で考え評価したことが書いてあるのです。

そんな作業ゆえに、堺屋氏独自の理論でありかつ、非常に説得力ある文章が出来上がったのですね。

私は生来的に、その人独自のモノを求めてしまうたちなので、どうしても少数派の理論に魅力的に感じてしまうのですね。

少数派といえども、多に抗うことにしか興味のないひねくれものというわけではないですからご注意を!(笑)

非常に説得力のある文章ですから、堺屋氏の本ではどれでも、歴史についての著述が多くのページを割かれていても、「何か意味があるのでしょう」という気持ちになって読み進めるのです。

この分野で何故歴史など長々と書くのか、と思われる向きも当然あるでしょう。

しかしその作業によって現代において有意義な、また現状を打開することのできる理論が出される結果になっているから、その思いは霧散してしまうはずです。

この『歴史からの発想』は、主に日本史を概観して、そこで他の時代や他の国の歴史との比較、他の人物や他の国の人物との比較を通して意義付けをおこなっているので、異常な説得力をもって読者に迫るはずです。

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単なる価値観の提示ではないのですね。

こういった姿勢は学ぶべきと思いますね。

この堺屋氏から学ぶものはたくさんあるので、他の著作家でありがちなのは、1回読んだら次の著作は買わないというパターンは多いのですが、そういうことはなく何冊も買い続け、読み続けるということですね。

この本もそんな例として位置付けたいですね。

●この本は以下よりどうぞ!

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歴史からの発想―停滞と拘束からいかに脱するか (日経ビジネス人文庫)

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