単なる祖述や記述の本に興味持てない生来からの性格なのか、その是非はわかりませんが、著述の論文の本をよむ際には、その作者自身の論述がないと退屈に感じてしまうのですね。
受け売りだけの本や引用ばかりの本は退屈で、途中でやめてしまいます。
ここで紹介する飯田経夫氏の本は、大学時代に初めて読んで以来、ファンになってしまい、その後古本屋等で、この人の本を見つけたらすぐさま手に取って買い、読んでしまうことしばしばでした。
その人独自の論とはいえ、奇をてらっただけの本など読んでも遊戯にしかならないので、読みませんし、その論拠が確固としたものであれば、非常な説得力をもって読み手に迫ってくるのです。
この人が展開しているのは、 「レーガノミクスの失政のつけを日本に押し付けてきた。
それを日本は無批判に受け入れてバブルを発生させ、そしてそれがはじけ不況に落とし入れた。」
ということですね。
レーガノミクスは、その名の通りレーガン大統領のおこなった政治ですが、その内容は大幅に減税すれば、国民は働く気を起こし物も買うようになる。
レーガン大統領 それでアメリカは財政を健在に黒字にすることが出きるだろうという幻想を抱きそれを実際に行ってしまったようです。
しかし、国内にはモノが不足していたため、海外から調達しなくてはならなくなり、逆に財政も貿易もともに余計に赤字になってしまったのが結果だったようです。
その失政のつけを日本がモノを輸出するばかりで買わないからだ、という自己反省もな言いがかりをしてきて、それを日本は弱腰のまま受け入れてしまったようです。
そのことに飯田氏は遺憾に思っていたようですし、私も飯田氏の立場に肩持ちせざるを得ないですね。
因みにですが、このようにアメリカを批判するに際して、大統領の実名を挙げて批判しているのは飯田氏が初めてだったのでイメージが鮮明でした。
日本の経済はアメリカなくしては成り立たないし、不可欠の国の1つであることは間違ない。
相互依存関係の間であるということですね。
それゆえに、反米ではなく「脱米」がこの飯田氏の立場であるようです。
ここで、思い出すのは、ウォルフレン氏の文章ですね。
「評論家や大学研究者の意見を取り入れて政策に反映させる機能が日本には存在しない。 つまり、真の政府が存在しないのだ!」
K.V ウォルフレン
このバブルは、人類が幾度となく経験してきたことですから、バブルが発生しても必ずはじけるということをこころの中にとどめておくべきですね。
エコノミストならば、必ずバブルははじけるということを知っておきながら、その警告を発することなくいたために、このような惨事になってしまったことを、エコノミストのはしくれとして反省している、ということがこの本で書いてあります。
やはり科学というものは、実社会をよくするため、実社会に直結した学問であるということが、この本を読んでも確認できた次第ですね。
やはり知識として自分の脳内のとどめておかなくてはならないし、もし抜けてしまうのであれば、常に読書を続けていかなくてはならない。
景気が良かった会社の社長が、その景気に浮かれて、大型機器をローンで購入してしまった。
しかし、バブルがはじけて、仕事の受注が大幅に減り、そのローンが返済に滞るようになって大変、というドキュメントをテレビ放映されていたのを見たことがあります。
これは、やはり知らなかったでは済まないのです。
経営者たるもの、こういった事を常に勉強していったうえで、その経営を持続していかなかなくてはならないのは明白です。
ただ会社を興して、仕事をこなすというのだけではやはりつぶれるのです。
こういった社会について明らかにしたものが社会科学ですし、それが大学なのですから、こういう愚を大卒の人は犯してはなりません。
しかし、科学というものは、今や広く開かれたものですので、主体的に学べば自分の血となり、肉となり理論武装のためになるのです。
このように、自分が教わったことだけでなく、更に自分から学び、その内容を実生活で行動する、いわばメタ認知の能力が経営者には必需の能力であることは言うまでもありません。
ただ店を出して、それだけで終わりという考えでいる人は、経営には向いていないのですね。
私は大学での勉強や科学の勉強の重要性について認知しているがゆえに、ここでいろんな書物を紹介しているのです。
それは自分の身の回りをよくするためにつながりますから。
ただ教養は大事だ、という教条主義ではないことはお断りしなくてはいけません。
しかし勉強するのは大学だけでなく、自ら主体的に学ぼうという気概があるのならば、どのような学歴であろうとできるのは言うまでもないことです。
良質な本など巷に溢れていますから。
そんな私の価値観に共鳴してくださるのであれば、この飯田経夫氏の本は経営のみならず、社会での実生活に役立つでしょう。
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