毎度のことながら、佐伯啓思氏の本は、ちょっと読むだけで集中していってしまいます。
私は大学時代に政治学のゼミに所属していましたが、その担当の先生曰く、「私は、学生時代から今まで何度丸山真男の本を読んできたかわからない。もうボロボロだもの!」といっていたのを思い出します。
佐伯氏の本は、私にとってそんな本になりそうな気がします。
佐伯啓思
しかし私は、丸山氏の本で印象に残っているのは『日本の思想』くらいのもので、この本以外は、非常に難しく難解な表現で書かれているので、どんなことが書いてあったかわからないまま終わってしまっているのです(笑)。
加地伸行氏も、某本の中で丸山氏の本のことを「非常に難解で読みづらい」と書いているのを見て私は安堵の思いになりました(笑)。
『日本の思想』は講演の内容をそのまま本にしたので読みやすく理解ができるのですが、その他の机上で書いた本は非常にわかりにくいのです。
しかし、こと佐伯氏の本はそんなことはなく、読みやすいうえに、非常に考えさせられる内容です。 その考えさせられることで、脳で思索すると、脳内で血が循環しているのがわかります。
まさしく、その感覚は受験勉強時代を思い起され、現代文や英語の勉強をしている時代を思い起こさせるに十分なのです。
そういう脳内で血が巡るのは非常にいいことです(笑) 冒頭からいきなりですが、もう民主主義でも,資本主義でもこれからの人類は上手くやっていけない、ということを書いているのです。
これは決して、奇をてらって書いているわけではなく、実に考えさせられる真理を含んでいるのです。
そのことを示すように、氏は以下の本を上梓してきました。
※
『経済成長主義への訣別』
http://hair-up3times.seesaa.net/article/451864238.html?1503236769
『さらば民主主義』
http://hair-up3times.seesaa.net/article/450978583.html?1497756698
今の世では、大衆うけのいいことがらを並べ立て、人々の情緒を刺激することが当選するのにいいということです。
しかしそれでは大衆迎合主義になってしまうということです。
良き世の中は、やはり良薬は口に苦しということわざがあるように、苦しみをともなうことが多々あるのです。
もちろんない場合もありますが。
しかしその大衆迎合主義になると、ある人にとって苦いことでもいいとは思えないことが出てくると、これはよくないといって弾劾される危険性があるのですね。
それが民主主義にとってよくないということまで流布されることになる。
それがいいことだったか、悪いことだったのかは、その後の結果を見て判断するしかないのです。
確かに、小泉元首相は、「自民党をぶっ潰す」「改革には痛みが伴うものです」といって多くの人の支持を受けました。
小泉純一郎
それが本当の良薬だったかは、あとの結果をみたり、綿密な調査や結果をしてから判断するしかないのです。
すぐには判断しかねる問題なのです。
ですから、よき世の中、あるいは良き政治という結果についての判断は、このようなあいまいさを有するものであるということを忘れてはいけないのです。
しかし、私は、小泉首相のしたことは今を持っても、いいことであるとは判断しません。
このように深く考えながら政治に接している人はいるでしょう。
しかし、早急に答えを求めるのになりがちな人も多いのが現状でしょう。
だから、佐伯氏はエリートにすべてを任せる独裁制にすべきであるといっているのではないことはお断りします。
一般国民に期待を抱く一方全幅の期待はよせていない、そんな気がしますね。
その他、民主主義についてはかなり深く興味深い展開をしているので、この本を読んでもらいたいですね。
また資本主義についても、そのままでいいという思いはないようです。
かといって社会主義に移行すべしということでもないのです。
グローバル化の中では、物を作る拠点が日本を含めた先進国内では、家賃や人件費などでお金がかさむ。
ゆえに海外に物作りの拠点を移すことの方が安く済むので、海外に移転してしまう。
その際に、大きなお金を持っている人が投資することで、大きな利益を得ることができる。
まさに資本が膨れ上がる=(資本)主義です。
また、グローバル化によってITやビジネスを操ることができる人間が大きな利益を得ることができるが、しかし、それで成功することができるのはほんの一握りの人間だけである。
そういう社会にやはり危惧を抱いているのです。
以前に麻生大臣によって、「老後は年金だけでは足りないから1人1人が2000万円を用意するように!」という呼びかけの後、いろんな人が株などに投資するも、あえなく借金だけが残ったという悲劇を生みだしたことは記憶に新しいです。
そして、一時期はやった仮想通貨ですが、これも億り人という1部の成功者を生み出した半面、多額の数百万などの借金だけを残した人を生み出したことも事実なのです。
それに海外に生産の場を移すからといって、その場に投資をしても、必ずしもそのリターンが返ってくるとは限らないのです。
それでうまく生産が続き、物が売れればリターンを得ることができるのですが、もしもそれらが上手くいかなかったら、撤退する事になるのです。
それでは投資金がパーになるのです。
私がある県にいったときに、ある老夫婦が経営している蕎麦屋さんがあり、そこで狸そばを食べてみるも、その材料はスーパーで買ってきたようなそばとつゆでした。
それで500円以上もするのですから参りました(笑)
おそらく年金だけでは足りないからということで、この店を始めたのでしょうが、こんな劣悪な品質ではすぐ閉店になってしまうのは目に見えているのです。
ことFXしにしろ株式投資にしろ、ただお金を投資するだけではリターンが得れるわけではないのです。
何故なら、それらの価値は上がったり下がったりするものだからです。
ではどうするべきか?
それは抽象的ですが、そのことについてとことん勉強して行動するしかないのです。
ただお金を入れておけばリターンが得れるというものではないのです。
長期投資にするのか、短期投資にするのか、あるいはそれらを組み合わせで投資していくのがいいかといったことをとことんまで勉強したうえでスタンスを決めて、取り組んでいくしかないのです。
また不動産への投資にしろ、ただお金を出すだけではリターンを得ることはできないのです。
その不動産に住む人、使う人が撤退してしまっては借金が残るだけでなのです。
またビジネスに投資する、あるいは自営を始めるにしろ、やはりお金を出すだけではリターンを得ることはできないのです。
そこに来て物を買う、あるいは食べにくる人がいなければリターンを得ることができないのです。
もしくは来なければ借金がのこるだけなのです。
そこで成功するにはどうすればいいか?
やはり、その道について勉強し、日々研鑽を重ねるほかないのです。
いずれも、どのパターンでも、やはり勉強を重ねることが重要ということですね。
ただお金を出すだけでリターンが得れるという魔法の小槌があればいいのですが、そういうものはおとぎ話にしかないようです(笑)
そういうものに取り組み、老後はこれまでのサラリーマンのような感覚ではいられないのは明白なようです。
定年まで一生懸命働き、老後は年金でゆっくりと暮らすというのは団塊の世代で終了したようです。
そこの脳内チェンジをする必要があるでしょう。
ここの本に書かれている佐伯氏の論文はわずか29ページですが、そんなわずかのページでこれだけの思索を私にさせてしまうのですから、私にとって佐伯氏は凄い存在なのです。
これからもそのような感じになることは間違いありません。 やはり古今東西、著作家というのは批判にさられがちなのですが、こと佐伯氏も批判にさらされる場面があるのかもしれません。
それは当然でしょう。 人によって好みや価値観が違いますし完璧な論など書ける人などいませんから、そういう事態があっても致し方ないでしょう。
しかし、それでも私は佐伯氏に対する批判する点はありながらも、大幅においては賛同するので、これからも佐伯氏の本を買って読み、勉強していく所存です。
そんな気になった人には、是非ともこの本を読んでほしいです。 ●この本は以下よりどうぞ!
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※その他、佐伯啓思氏の本について紹介したページ
↓
『ケインズの予言』
http://hair-up3times.seesaa.net/article/474659998.html?1587307248
『アダム.スミスの誤算』
http://hair-up3times.seesaa.net/article/474626068.html?1587118718
『成長経済の終焉』
http://hair-up3times.seesaa.net/article/474439818.html?1586183374
『経済成長主義への訣別』
http://hair-up3times.seesaa.net/article/451864238.html?1503236769
『さらば民主主義』
http://hair-up3times.seesaa.net/article/450978583.html?1497756698
『反.幸福論』
http://hair-up3times.seesaa.net/article/428518819.html?1445833705
『経済学の犯罪』
http://hair-up3times.seesaa.net/article/426540927.html?1442938996
『西田幾多郎』
http://hair-up3times.seesaa.net/article/409858456.html?1442739330
『従属国家論』
http://hair-up3times.seesaa.net/article/421835004.html?1442739703
『科学技術と知の精神文化』
http://hair-up3times.seesaa.net/article/418149998.html?1442739935
『正義の偽装』
http://hair-up3times.seesaa.net/article/396634159.html?1442740341
『貨幣と欲望』
http://hair-up3times.seesaa.net/article/375345171.html?1442740615
『日本の宿命』
http://hair-up3times.seesaa.net/article/356624758.html?1442740994
『自由と民主主義をもうやめる』
http://hair-up3times.seesaa.net/article/428055433.html?1445761232
『擬装された文明』
http://hair-up3times.seesaa.net/article/474927977.html?1588728115