日高六郎 『戦後思想と歴史の体験』

2020-05-22 21:56:46 | 現代社会

この本を読んで、科学は改めて、人に行動を促すためのものであるなということを感じた次第です。

この著者の日高六郎氏は社会学が専門でしたが、それ以外のいろんな学問に精通しているのがわかり圧倒されました。

社会を大幅に、そして綿密に分析して、そこから何をすべきか、今どのような状態になっているか、どのような方向が望ましいかをつまびらかにしたうえで、議論を呈示しているのですね。

日高氏曰くに、「深い価値観は一般に国民的な体験と普遍的な原理とがある歴史的瞬間に交錯するときに生まれるのであって、普遍的な価値がただ普遍的であると認識されるだけではそれほど国民を捉えることはできない。」 ということですね。

やはり理念だけが1人で浮上していても仕方ないし意味がない。 やはり経験を通した理念であり理論でなければ不毛なものに堕してしまうということですね。

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宗教に入っている人は要注意ですね(笑)。

宗教に入っている人は、その宗教内でいわれていることに無批判になりがちですから、経験を無視して、理念だけを追い求めて行為しがちです。

「歴史とは経験の共有と、その普遍性の認識であるとすれば、民衆の願望、認識が特殊閉鎖的なものとしてではなく、普遍的な共有的なものとなってきているということが重要である。

これらの諸価値を体験と願望とすることが全世界的、全民衆的な規模で可能になったのは現代が初めてである。

それゆえに、民衆が歴史の中の主体的な力として姿をあらわしたということは、彼の体験、願望、認識、行動から出発して、その中から原理とイデオロギーを作りだし、そのことで歴史を能動的に作り出していく過程で諸価値をただ並べ、大義名分として肯定するだけでなく、その実質内容と相互間の主体的な構造を明らかにしていく必要がある。

理想主義を欠いた現実主義はただ受益な態度の再生産に陥るだろう。」 と書いてることも、また私の食指を大いに動かすモノでした。 ある分野においては、その道の研究者がいて、その分野の理想とすべきレベルがあるのですね。

それはなぜそのレベルなのかは、そのことについて書いてある本なりを読むのがいいでしょう。

その理想のレベルのために、国民がどのようなことをすべきがいいのかを呈示しているのが科学に関する本なのですね。

ですから、その分野についての本を詳しく読み、そして行動を促しているのです。

促すことを望んでないならば、一般人に出す必要はないのです。 ですからそういった類の本は読んだら行動に移すべきなのです。

そして興味深くも、日高氏は「私生活派の登場は1つの問題点である」としているのです。 おそらく勤労者たちの中の私生活派も全くの無関心派ではなく、微量関心派であろうということですね。

やはり、完全なる無関心な人はいないのですね。

そして「一方にパチンコという無目標的行動を楽しむ大衆があり、他方その上に高度の技術を駆使して極東の緊張緩和に務める専門官僚がいるという構図がなりたつ」ということを分析しているのは興味深かったです。

これは、同じ社会学者であった清水幾太郎氏も、同様の趣旨の本を書いていたのを読んで関心したのを覚えています。

作為であろうが不作為であろうが、社会に影響を与えながら生きていることになるということですね。 不作為でよからぬ結果がもたらされても、それは国民全般の意思の総体なのである、ということですね。

作為によって良き結果がもたらすことがわかっているならば、作為にバイアスをかけた方がいいに決まっています。

それをどのように考えるか、ということですね。

政治的な行動に移すことをこれまでカレル.ヴァン.ウォルフレン氏はいろんな本を通じて、日本の読者に呼び掛けてきたわけですし、その言葉を私はこの場で紹介してきました。

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カレル.ヴァン.ウォルフレン

 

その行為に移す衝動にかられるかどうかは、その人の置かれた立場によって変わってくるわけですし、一応新聞やテレビを通じて伝わってくる政治的、行政的な不祥事に関しては、遺憾に思うことがあっても、行動に移さないのは、それほど価値あることであると思ってない事だからにほかなりません。

行動しなかった人は、そういった政治的な行動に移すよりも、仕事や仲間内親族内での団欒の方が大事と思っているからにほかなりません。

それでも人生がうまくいっているのならば、政治的な行動に移さないという選択肢によって生きるのも文句は付けられないでしょう。

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でもその不作為によって、自分がどのようなことを被るのかも、因果関係はこんにちのような複雑な社会であってみればわからないし不明でしょう。

ですから、心底行動に移さねば、と思う人は、いろんな社会の問題点について書いた本を読んで、その詳細を脳内に叩き込むという作業によってでしかないと思います。

やはり新聞やラジオなどの一過性の情報だけでは、やはり行動に移すのは難しいのではないかと思われてならないのですね。

精神分析学の第一人者であるジムクント.フロイトは、何気なくその日を暮らしているだけの人とは付き合えなかったということですね。

フロイトはやはり科学者である手前、いろんな本を読んで、社会の問題点について把握してたのみならず認識していたのでしょう。

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  フロイト

その問題点があるのに、それらのを良き方向へ向かわせないでいて我関せずの人間にはシンパシーを感じれなかったのは理解できる心情ではあります。

しかし、社会がどんなに高学歴化しても、やはり文字を読むことに愉しみを見出せる人は少数派なのです。

これまでいろんな学問について読んできた本からそれは明らかと思いおます。

ゆえにどの人も市民として政治的な活動に従事するような行動に駆らせるのは難しいことではないかと思われてならないのですね。

普通に働いていれば普通に生活できるような先進国であれば、それはもっともでしょう。

ゆえに、そういった文字を読むことに全くストレスを感じずに、それでいて問題点を良き方向へ変えていこうという気概を持っている人には期待をかけたいし、そういう人が多く出てくるように私はこの場でその立場を表明したいのです。

そのことにシンパシーを感じた人は、この本を読んで更に自分の立場を強化してほしいですし、そういう立場に興味のある人も読んでもらいたいです。

この本は以下よりどうぞ!

戦後思想と歴史の体験 (1974年)

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奥宮正武 『PKOと憲法』

2020-05-22 17:48:52 | 国際社会

武装か非武装か?

これは今となっては不毛な議論かもしれないですが、どちらかに割り切らないといけないときに迷っている人に読んでほしい本ですね。

私は、大学が法学部だったこともあり、いろんな法学者の本を読みました。

宮田光雄、渡辺洋三、小林直樹といった人たちの本ですね。

そこに書いてあるのは、やはり自衛隊は違憲であり、安保は廃棄しなければならないという趣旨の本をいくつか読みました。

そのために、それらの本の影響を受けて、私自身も自衛隊は全部解散させ、安保条約も破棄しなければならない、という意見にいました。

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しかし政治学者自衛隊についての意見をめぐる本を読むことで、その自分の考えを変えていくことになりました。

確かに、憲法で軍隊を持つことは認められないけれども、主権国家である以上は必要である、ということに変わっていったのです。

やはり法学者は、法の順守に価値観のバイアスがかかっていますから、やはりその法文に書いてあることをまず守らせることに使命を向がちです。

しかし政治学者は、国家の全体的な位置を確かめた上で、行くべき道を模索するがゆえに軍隊は必要という結論になるのですね。

ゆえに、意見が平行線をたどってしまうのですね。

であるからして、法学者の人は、軍隊を持つことを是とする立場の人の書いた本を読むべきであるということを、即座に思いましたし、政治学者は、軍隊を持つことを非とする立場の人の本を読んだうえで、両者の意見を汲んだうえで結論を出すべきだと思ったものです。

しかし、法学者のかたは、やはりそれなりに軍隊を持つことを是とする立場の人の書いた本を読んだことはあるのでしょうが、やはり法学者という立場ゆえに、法学に関する情報の方がいつしか多くなり、自分の意見を変えられないのではないか、と思うのですね。

しかし、この本の著者である奥宮正武氏は、その両者の意見をくみ取ったうえで、自分の意見を出しているのですから説得力があります。

この本の中で、いろんな法律に関する論を長々とのせていますから説得力があります。

そういう人であってこそ、本物のの知識人だなと思う次第です。

この奥宮氏の言い分は以下です。

日本は衣食住すべての分野において自給自足などできない。

非武装中立を採択してしまったら、他の国はどこも日本を相手にしてくれず、非常に貧相な生活を強いられることになるだろうということです。

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その生活に甘んることが国民全員が飲むことができるなら、その採択をすることができるがそんなことは不可能ですね。

 

そういう非武装中立の国としてコスタリカが挙げられますが、日本とは経済力や世界的な影響力を考慮に入れてみれば、日本の採択すべき参考にはならないということですね。

また永世中立を宣言したかつてのスウェーデンや、今のスイスですが、これらの国は重武装中立なのです。

これには驚きました。

しかし、これは奥宮氏の意見として妥当性は高いですが、しかし不明なのは、日本のような世界に冠たる大国が非武装中立を採択した結果こうなったというような経験理論がないのですね。

ですから、これがどれだけ妥当するかは確かではないですが、しかしこれまでの研究の結果を考慮すると妥当性は高いといえるでしょう。

非武装中立をすべきであるという法学者の意見をみると、軍隊をすべて解散させて、条約もすべて廃棄した後、他国が攻めてきたらどうするかという質問に対し、攻めるだけ攻めさせよ、ということを書いていました。

これでは攻めてきた国の暴虐の限りをつくさせ、多くの死人が出るではないか、というように思ってしまいますね(笑)

こちらの方の立場の人の理論も経験理論でないゆえに、妥当性を論じることは難しいですが、それでも妥当性は低いと思われてならないですね。

宮田光雄、渡辺洋三、小林直樹といった人たちは優れた法学者ですが、こと軍隊のことになるとどうも説得力がない気がしますね。

確かに、軍隊を持つことによってのマイナス点は存在していることは確かです。

自然環境が壊れる、資源の浪費、軍人による婦女暴行などマイナス点はあることは確かです

よろしいと私が思われるのは、やはり軍隊を保持しながら、それらを良き方向へ変えていく努力を重ねるということでしょう。

その際に参考になるのは、法学者たちの指摘してきた軍隊や条約に関するマイナス点ですね。

それらを参考にしながら議論を進めていくことが重要でしょう。

やはり、人類は核を含めた兵器の作り方を知ってしまった。 ゆえに、全廃条約に調印したとしても、違反する国は絶対に出てきてしまう。 ゆえに全廃はできないのであって、やはり軍隊を持つことは認めなければならないでしょう。

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相手を責めたら自分も殺される、という危惧を持たせることが一番大事であることは言うまでもないですね。

そして戦争に訴えることではなしに、自分の国が良き生活を送るためにいい方法を各国が模索することの方が重要であることはいうを待たないです。

戦争に訴えて得た結果と、戦争を経ないで得た結果の方がいいと思えるような関係を考えて、各国の市民が考え行動していく方がいいということですね。

そういう道も当然ながらこれまで多岐にわたって研究されてきたことはいうを待ちません。

やはり賛成と反対の意見がある場合に両者の意見をくみ取りつつ、中立を最初は決めながら双方の意見をくまなく考えながら結論を出すということが非常に大事ですね。

そういう論法をこの本では展開されていますから参考になります。

この本は234ページで本としては普通の量ですが、非常に奥が深いですし、それでいて読みやすいタッチで書かれていますからどなたにでもおすすめできます。

日本の行方を決めるうえで参考になればということでお勧めします。

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PKOと憲法―国際社会の中で問われる日本

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