ふわふわ気分で

舞台、シネマ、藤原竜也くん、長谷川博己くん、成河くんのことなど気ままに・・・

『ナニカアル』桐野夏生著

2010-09-11 | BOOK

桐野さんの久しぶりの新刊。
桐野さんらしい、こってりとした中身のある1冊です。

作家林芙美子の姪が、芙美子とその夫の死後に、
隠されていた彼女の日記を発見したという内容。

芙美子が昭和17、8年に陸軍嘱託という身分で南方のジャワやボルネオに、
戦線の視察に駆り出された頃の日記である。
ということであるが、どうやら本物ではなく、作者の創作らしい。

恋人との海外でのつかの間の逢瀬や、
南方に行く船上では事務長との逢引やら・・・あら、ら~
なかなかやるじゃない。
という、小説的なおもしろさに満ちてます。

最後まで読み終わると、作者の書きたかったことは、
芙美子の愛情物語ではなく、戦争なんだと思いました。

ここに描かれる戦争は、ドラマや映画に出てくる
勇敢で偉大な男たちの、カッコいい戦争ではなく、
一般市民がいやおうも無く巻き込まれてゆく戦争です。

戦争の影響は日常生活にもおよびます。
気がつけば、陰湿な影で覆われるように、
思ったままを口に出来なくなっているという現実。
とりわけ、憲兵という耳慣れない人たちや、
強大な軍部が、ホラー映画のように怖かったです。

18年6月18日付けの日記の
「即ち、戦争とは、すべての思い出を引き出しの中のゴミにするものである。」
のクリアさ。
ちょっと目からうろこでした。

『ナニカアル』超オススメです。
目からうろこを落としたい人には、特にオススメ~