玄倉川の岸辺

悪行に報いがあるとは限りませんが、愚行の報いから逃れるのは難しいようです

「五危」の穴に落ちた民主党

2006年03月23日 | 政治・外交
民主党は永田議員と運命を共にするのだろうか?

永田議員が衆院懲罰委で弁明、元記者の氏名は公表せず
 衆院懲罰委員会は22日午前、「偽メール」問題を国会で取り上げた永田寿康衆院議員(民主党の党員資格停止中)から弁明を聴取した。永田氏はメールの仲介者について、「大手の週刊誌の記者をやっていた」と説明を受けたことを明らかにしたが、氏名は公表しなかった。自らの責任については、「ほかに転嫁するつもりはない。委員会の議論を踏まえて判断する」とし、懲罰の決定後に改めて検討する姿勢を示した。
(中略)
 これに関連し、民主党の鳩山幹事長は22日、国会内で記者団に、「国民の関心があるだけに、表に出して核心的な部分の真実が明らかにされるべきだ」と述べ、永田氏に仲介者の氏名の公表を求める考えを示した。民主党は同日の懲罰委理事会で、24日に行われる質疑で氏名を公表するよう永田氏に促す方針を伝えた。与党側は仲介者の証人喚問を求めているが、民主党は態度を保留している。


永田議員についてはすでに民主党内を含む各方面から批判されており、今さら私が付け加えることもない。
正直言って、私には彼がこの事件の過程において政治的判断力を失ったか、あるいは元からそんなものを持っていなかったのだろうと思えてならない。政治家としての彼は批判する価値さえない、と断言するのはもしかしたら言いすぎかもしれないが(10年後には大物政治家になっているかもしれない ~到底ありそうにないことだけれど~)、どれほど批判しても彼は自分に都合のいいようにしか理解しそうにない。

いろいろな意味でお気の毒な永田議員のことはさておき、民主党はいったいどうするつもりだろう。
前原党首みずから「メールは偽物だった」と謝罪し、自民党の望むまま新聞に謝罪広告を出し、完全降伏したはずなのにいまだに「情報提供者」を隠そうとする永田議員をかばうのだろうか。


山本七平・著 「孫子」の読み方 から引用する。

 故に将に五危有り。必死は殺す可く、必生は虜とす可く、忿速なるは侮る可く、廉潔は辱しむ可く、愛民は煩わす可し。凡そ此の五者は将の過なり、兵を用うるの災なり。軍を覆し将を殺すは、必ず五危を以てす。察せざる可からざるなり。
「将には五つの危険がある。いたずらに必死の覚悟をすれば殺されるだけである。何とか生きようとあがけば捕虜にされるだけである。怒りから急に事を行えばあなどられるだけである。あくまで高潔というきれいごとにとらわれると恥をかくだけである。民への思いやりで甘えのままにすると、かえってそのために苦しむ。およそ、この五つが将の陥りやすい過ちであり、戦争遂行上のさまたげになる。軍を敗滅させ将を戦死さすのは、必ずこの五危が原因である。充分に考慮しなければならない」
 「8 九変篇 ―臨機応変に対応する―」 144pより

永田メール事件における民主党の対応を見ると、
 「『堀江メール』の真贋を確かめず急に攻め込んであなどられ」
 「何とか執行部を守ろうとして自民党への全面謝罪に追い込まれ」
 「『情報提供者』を守るというきれいごとにとらわれて恥をかき」
 「永田議員を守ろうという思いやりを見せて苦しみ」
というありさまである。
五危のうちすでに四つを制覇しているけれど、残念ながらというか何というか「必死の覚悟」を見せた議員はいないようである。あるいは「闇の組織」の陰謀を語った原口議員や、謎の「エルメス理論」(メール〔紙袋〕は偽物でも情報〔バッグ〕は本物なのだという香具師の口上めいた理論)を振りかざした河村議員がそうなのかもしれないが、私には彼らは「必死の覚悟を決めた」というより単に間抜けなだけのように見えた。

さて、京大法学部を卒業したエリートである前原代表はおそらく「孫子」を読んだことがあるだろうが、自らが落ち込んだ「五危」の穴からどうやって抜け出すのか。ぜひとも口さがない人々を瞠目させるような見事な手並みを見せていただきたいものだ。