波佐見の狆

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武力だけでは務まらぬ(40回)

2012-10-15 15:35:41 | 平清盛ほか歴史関連

歴史ドラマというものは、先のことがわかっているため、どの回においても、「ああーーここでこんなことをしたから(言ったから)、ああいうふうになってしまうんだなー」と、登場人物の言動を分析したり、ちょっとした場面や小道具などからも、後に起こる大事件を連想したりして、わくわくしますね。こういうのを、「伏線」といっていいのかどうか、わかりませんが、(注1)ともかく、40回にも伏線的な細かいしかけがあちこちにありましたよーーー!

まずは・・・悪化する西光と清盛の関係・・

過去に戻ると、、、平治の乱のあと、西光が清盛に、信西の敵である義朝の子・頼朝を斬首してくれと懇願した際、清盛は、必ずそうすると約束したにもかかわらず、頼朝を助命してしまったため、西光はそのことで、清盛は信用ならないと不信感を強くしていました。32回では、清盛をにらみつけ「信用していない」と言う西光に、清盛は、約束を違えてしまったことに対する釈明も詫びもせず、「相変わらず手厳しい・・・」と鼻で笑うだけ。それ以来、「所詮成り上がり者のくせに・・」と清盛を軽蔑してきた西光。

しかし、清盛が大輪田の泊をつくり、宋との交易を実現させたのを目の当たりにし、「殿は、亡き信西殿の志を忘れたことは1日たりともござりませぬ。」と、盛国から真剣に言われて、心が落ち着いたのでしょう。今までのわだかまりを捨て、清盛の宋銭普及プロジェクトに積極的に協力しようという気になったわけですね・・・しかし、その西光からの、相撲節会に対する協力要請は、冷たくはねつける清盛。「そんな形ばかりの宮中行事に現をぬかしている暇はない」これだけでも、ひどい言い方なのに、信西が生きていたら、きっと自分に味方するはずだと、勝ち誇ったように言って、西光の気持ちを踏みつけにします。たとえば、自分は忙しいので、弟か子らのうち誰かを遣わしますとか、言い方があるんじゃないですかねぇ・・・。激高する西光・・・このように、清盛の冷たさを露骨に描くことで、「鹿ケ谷の陰謀」への序曲を不気味に響かせる藤本脚本!

「信西の志」という心の支えを共に持つ盟友となれたであろう清盛と西光が、どのように決定的な決裂をし、清盛がどんなにヒステリックに西光を潰してしまうのか・・・恐ろしいことになりそうです・・・・

それにしても、西光役の加藤虎之介さん。。。老けっぷりがあまりにも上手なので、びっくりです!髭が、、、いかにも老人のそれみたいに、薄くへろへろになっているからでもありますが、、声の微妙な枯れ具合といい、目を細めたりつむったりする仕草といい、前回までの西光と比べると明らかに違いますーー。これに比べると、松ケン清盛の老け具合はまだまだこれからだという気がします。

もうひとつの気がかりな伏線?は、清盛の息子らの「武芸放棄」?!・・・

保元・平治の乱に出陣し、戦というものを知っている優れた武将である重盛までもが、我が子らには、「恥をかかぬよう」歌舞音曲に励めと言うようになってしまいました。とりわけ、長男の維盛は、姿麗しく舞いの名手で、後白河にも気に入られ、光源氏の再来とすら言われたほどだったそうです。

そして、戦を知らぬ世代の弟ら、知盛と重衡は、侍大将の伊藤忠清から弓の指導を受けながらも、なんだかスポーツでもしているような気楽さです。

忠清が、2人とも上手だが、実際の戦では相手は動いているから、的を射るのとは違う、と注意すると・・・

重衡が、「戦なんぞ、おきるのか?」こんなに安泰な世になったのに、一体いつ、誰が何のために戦なんて起こすっていうんだい??と嘲笑気味に言います。忠清が、平家は武家なのだから、いつでも武芸の鍛錬は怠たるべきでない、と諭そうとすると、、、知盛が、忠清のいう通りではあるが、といったん引いたうえで、こう言うのです。

「だが、武芸一辺倒の暮らしからの脱却を目指して一門がここまで昇ってきたのもまた、まこと。許せ・・武力だけでは平家のおのことして務まらぬのだ」  (忠清先生がっくり・・・そして涙ほろり?!)

彼のこの言葉は、この頃の平家の置かれていた立場をよく物語っていると思いました。同じ超セレブ・エリート一門でも、藤原摂関家などとはまた異なるジレンマがあって、大きなものを背負って生きていかざるを得なかったのですね。

ただ・・・知盛の神妙な表情とこの台詞はさすが彼らしいと思ったのですが、重衡の能天気ぶりは、まるでおバカ末っ子。ざっといろいろ読んでみましたが、重衡という人物は、『平家物語』中では、公卿化した優美で軟弱な平家公達の象徴のように描かれているけれど、史実は違っていて、むしろそういう平家の公家化を心配しており、重盛や知盛にも劣らぬ武勇の人であった、とのことで、藤本脚本がこれから重衡をどう扱うのか。。。『平家物語』の路線を踏襲するにしても、非常に気になるところです。

ドラマはあと10回しかありませんが、この重衡の悲運をどこまで盛り込めるのでしょうか・・・一の谷の合戦で、馬を射られて逃げられなくなってしまったため、義経軍に生け捕りにされ、京中を引き回された挙句、いったん鎌倉に置かれたのち、奈良にて29歳で斬首されますが、鎌倉では、立派な振る舞いと優れた教養を見せたため、頼朝や政子から優遇され、素晴らしい交流を持ったのだそうです。

重衡を主人公にした時代小説「最後の御大将 平重衡(しげひら) 義経が最も恐れた男」という面白い本があるとのことで、読んでみたい!

話はそれました・・・・

なんでも伏線に見えてしょうがない??!!かもしれないですが・・・・細かいところを言えばですね、清盛が後白河らの一行を厳島に招待することになり、彼等を乗せた宋船が、大鳥居に近づいてくるシーンがありましたね。

海上にそそり立つ朱色の大鳥居。そこに、帆をいっぱいに膨らませながら近づく宋船・・・・

まさに絵に描いたような美しさ。そしてこの美しさを創り出したというだけでも、清盛の偉大さを想うのですが・・

ただ、空は曇っていますね。せっかくの厳島ロケ。晴天の日にやればよかったんじゃないですか?もしかしたら、わざと曇りの日を選んで撮影したのかも・・・この時点では、ゆるぎないと思われた一門の権勢と後白河との絆にも、すでに厚い雲がかかり始めていたのである。。という暗示かなと思ってしまう私です。

そうそう、、、、あと、これを一言書かずには今回の記事は終われませんでした!!

後白河が、編纂中の『梁塵秘抄』から、いきなり歌いだす今様の歌詞がこんなに淋しいものでした。。

「・・・・どうしてあんなにも夜も昼もむつみ合ったのだろう。長くは一緒にいられなかったからだ・・・

これこそまさに、彼が滋子を失うことへの伏線でしたね・・・

 

 注1) 「伏線」とは・・・

小説や戯曲などで、のちの展開に備えてそれに関連した事柄を前のほうでほのめかしておくこと。また、その事柄。「主人公の行動に―を敷く」

(Yahoo辞書による) 芸術用語ですか? 「伏線を敷く」とか「張る」などといい、その伏線の内容が後で明らかにされることを「伏線を回収する」と言う。