波佐見の狆

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Boy altoの魅力(1)― P. シュライヤーの少年時代

2007-05-03 23:14:01 | Other musicians

ウイーン少年合唱団が今年も来日し、2カ月にわたって全国をツアーしています。この合唱団の日本公演は毎年?の恒例行事のようなもので、取り立てて話題になることもないくらいですが、今年はちょっと特筆すべきことがあって、多くのメディアに採り上げられていますね。

この合唱団の500年以上にわたる歴史の中で、初の日本人団員が、「来日」しているからです。シマダ・カイ(佳維)くん。10歳でウイーンに渡りこの合唱団のオーディションに合格して寄宿舎に入り、現在13歳とのこと。記者会見では、美しい声でドイツ語で挨拶をし、彼がいかに厳しい環境の中で大変な努力をしているかということがひしひしと伝わってきました。

ただ・・・・話題性ばかりが先行して、この「初の日本人ウイーン少年合唱団員」ということばかりクローズアップされているようですが、私は、彼が(世界的に通用するレベルの)ボーイアルトだということのほうに、もっと関心があります。肝心の彼の歌声が聞けるCDはあるのでしょうか?

The Boy Choir & Solist Directoryの'Boy altos'のページには、現在62名がリストアップされていますが、シマダくんの名前はありませんね。。。このリストに載るには、ある程度のソロレコーディングを残していなければなりませんし、やはりシマダくんはアルトのパートの一員ということで、ソリストとして抜擢されるにはちょっと・・ということなのでしょうか。今回の公演をご覧になった方、彼のソロがあったかどうか、教えてください。

ちなみに、このシマダ・カイくんの大先輩にあたる、日本人ボーイアルトの草分けとして、村上 賢くんと諄(あつし)くんとおっしゃるご兄弟の名ボーイアルトの存在があったことを記しておきたいと思います。詳細は、ボーイ・ソプラノの館「日本のソリスト」53、61をご覧くださいね。

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ボーイソプラノの華やかさに比べると、地味なので、どうしてもそのサブ的な存在にしか思われないボーイアルトですが、優れたボーイアルトのソロは、ある意味、トレブルよりも衝撃的で、深く胸に響くものです。

トレブルよりも衝撃的・・というのは、私には技術的には説明できないのですが、ともかく、アルトはトレブルのようなclarity(透明さ)や、  brilliance (輝き) 、また装飾音によるきらびやかさのようなもので勝負するものではなくて、あくまでも淡々と知的に聞かせるものなので、絶対に「子供らしい可愛らしさ」ではごまかしが効かなくて、声量の安定した、本当に歌の上手い子でないとできないと思うのです(←語弊があればすみません)。

私が初めてボーイアルトの美しさを知ったのは、ドイツの巨匠ペーター・シュライヤーの少年時代の録音でした。入手したのは、20年近く前だったと記憶しています。当然LP盤です。とっくに廃盤だと思います。ジャケットをデジカメで写してみました。

Peter Schreier

Vom Knabenalt des Dresdner Kreuzchores zum Lyrischen Tenor’

ペーター・シュライヤー 少年時代からリリックテノールまで 

(ドレスデン十字架合唱団のペーター・シュライヤー)

ドイツシャルプラッテンレコード 

発売元: 徳間音楽工業株式会社 ET-5140 2,500

A面が、ボーイアルトのソロで、B面がテノール初期のもの、というユニークな構成で、A面の曲目は次の通り:

1.  Agnus Dei  「アニュス・デイ」   (J. S. バッハ ロ短調ミサ曲BW V232より)

2. Es ist vollbracht 「マリア、全ては終わりぬ」 (J. S. バッハ ヨハネ受難曲BW V245より

3.   Es kostet viel, ein Christ zu sein 「キリスト者たるは値いと高かり」  (J. S. バッハ シュメリス集BW V459より)


4.   Was hast du verwirket   「汝何を失いか」 (H.シュッツ アルトと通奏低音のための宗教曲 SWV 397より)

5. Die Koenige 「3人の王」 (ペーター・コルネリウス 東の国からの3人の王たちより)


6. 
Simeon 「シメオン」 (ペーター・コルネリウス クリスマス歌曲集 op. 8より)

7. De profundis 「深き淵より」(詩篇129) (ルドルフ・マウエルスベルガー ドレスデン・レクイエムより)

1949年から51年にかけて、つまり、シュライヤー14歳~16歳(!)にかけての録音で、彼も当初はソプラノで後にアルトに変わったと書いてあることから考えても、変声期ぎりぎりの最も円熟期のものだと思われます。もう、私の家にはLPを聴けるシステムがないので、10年くらい前まで聴いていた記憶で書いているのですが、とにかく素晴らしいです。完璧な技術と知性に支えられたボーイアルトの最高傑作、人類の宝だといえるでしょう。

私の持っているLPは勿論CD化され(全く同じ構成というわけではありませんが)、アマゾンGermanyのみで入手できるようです。ドイツ語に堪能な友人に助を借りて私も購入しておかなければと思っています。

BCSDのこちらも参考に。

私は特別シュライヤーファンというわけでもなく、最近の活動(指揮者としてなど)のことも詳しくは知りません。Deoさんなどお詳しい方が沢山いらっしゃるので、私がここで採り上げるのも僭越ではあるのですが、、とにかく彼のボーイアルトを紹介したかったのです。

ボーイアルトについては、あと、テルツ少年合唱団について述べなければなりませが、また忙しくなってきたので、今日のところはここまでです。近いうちに「ボーイアルト(その2)」をアップしますので、引き続きお付き合いください。