まろの公園ライフ

公園から世の中を見る

滝田ゆうさんを覚えてますか?

2015年05月15日 | 日記

昭和の町・青梅でふらりと入った土産物屋。
そこで偶然、発見した古い色紙に写っていたのは・・・
漫画家の「滝田ゆう」さんだった。

くりくりの坊主頭に着流し姿がトレードマーク。
生前はテレビ番組のゲストなどにもよく出演されていて
その人懐こい笑顔を思い出すと「郷愁」のようなものがこみ上げる。
滝田さんの描く絵はまさに「昭和」だった。

出世作となった「寺島町奇譚」は
かつて「玉ノ井」の名で知られた私娼街を舞台にした半自伝的作品である。
家庭の事情で幼い頃に叔父の養子となった滝田少年は
向島区寺島町(現・墨田区東向島)でスタンドバーを営む叔父のもとで育つ。
子供の頃から「赤線地帯」の匂いにドップリと浸かりながら
そこで生きる人たちの人情や悲哀をつぶさに観察して「創作の原点」とする。

ユーモアとペーソスにあふれる独特の画風で
赤線「玉ノ井」の暮らしや風俗が驚くほど細密に描かれている。
残念ながら私自身は赤線を知らないが
そのリアルさに思わず舌を巻き、タイムスリップの感覚さえ覚える。

下駄ばきの着流しオヤジは滝田さんの自画像だろうか。
本来ならセリフを書く吹きだしのスペースに
本人の心情などをイメージした「絵」を描きこむのが滝田風だった。

殺気を感じた時に「出刃包丁」、猫のピンチに「三味線」。
これから飲みに行くこのオヤジの脳裏には
当然のごとく「進軍ラッパ」が高らかに鳴り響いている。(笑)



夏の日盛りにたたずむ女性は
地方から「玉ノ井」に働き口を求めて来た娘だろうか。
どのシーンでもこの「滝田犬」が得も言われぬいい味を出している。
ああ、懐かしい、ただただ懐かしい・・・
こういう世界も、こういう絵を描く人も、いなくなったなあと思う。



家に買ってから
図書館で大量の「滝田本」を借りて来た。
以前は何冊も持っていたのだが引っ越しで散逸してしまった。
うーん、返す返すも残念である。
この本でもうしばらく「昭和」に浸ってみたいと思う。

皆さん、滝田ゆうさんを覚えていますか?

 

 


最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
よく憶えてます (雫石鉄也)
2015-05-15 08:57:10
わたしは月刊ガロの愛読者だったので、滝田ゆうさんはよく憶えてます。
ガロ (まろ)
2015-05-15 11:19:56
雫石鉄也様
そうですか、月間「ガロ」の愛読者でもあったんですね。
滝田さんもガロで一気に人気漫画家の仲間入りをしましたね。

『男はつらいよ』と同じでしょうね (さすらい日乗)
2016-07-09 09:58:21
滝田ゆうの世界も、山田洋次の『男はつらいよ』も、すでになくなった世界への表現だったと思います。
すでにないからフィクションとして成立したのだと思う。

それは、歌舞伎で言えば、河竹黙阿弥の世界がほとんどそうで、彼の狂言のほとんどが実は、江戸ではなく、明治時代になってから書かれたものなのです。
それは、黙阿弥にとっても、江戸情緒への郷愁だったのだと私は思っているのです。
河竹黙阿弥は・・・ (まろ)
2016-07-09 20:15:50
さすらい日乗様
確か「明治の近松」と呼ばれた戯作者ですよね。
同じ時代を生きた浮世絵版画家に河瀨巴水という人がいます。
この人が描く浮世絵がまさに江戸情緒そのものです。
失われ行く風景、もう二度と見ることが出来ない風景への限りないノスタルジーは
滝田漫画や寅さん映画と共通するものがあります。59

コメントを投稿