まろの公園ライフ

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妖怪おじさん逝く

2015年12月01日 | 日記
漫画家の水木しげるさんが亡くなった。
齢93歳はまさに「大往生」と言っていいだろう。
羨ましい限りの人生だったと思う。



妖怪と遊び続けた一生だった。
何か一つ「好きなこと」を持って生きる人生が
どれほど楽しく、豊かであるかを体現されたような一生だった。
もちろん漫画を描き続けることは苦しいが
亡くなるついひと月前まで妖怪本の挿絵を描いておられたと言うから
ただただ恐れ入るばかりである。



二年前の夏だったか・・
横須賀美術館の「日本の妖怪展」を観に行った。
北斎、広重、国芳など名だたる浮世絵師たちの妖怪画が居並ぶ中
水木さんの作品はひときわ異彩を放っていた。
私は「ゲゲゲの鬼太郎」ぐらいしか知らないのだが
水木さんの作品がこれほどうまく、深く、想像力に富んでいるとは
正直「眼からウロコ」であった。



とくに「雪女」の
凄絶なまでの美しさは今も忘れられない。
漫画の「原画」を見る機会はめったにないのだが
普段のユーモラスなタッチとは全く違った
その妖気をはらんだ不気味な美しさに身震いするようだった。



水木さんのもう一つの使命が
自らの戦争体験を漫画で描くことであった。
これは今年8月、ビッグコミックオリジナルに掲載された
戦後70年特集の「人間玉」という作品だが
船底から脱出しようとする兵隊たちのパニックをユーモラスに描いている。
ユーモラスだからこそよけいに戦争の過酷さや悲惨さが
ヒシヒシと伝わって来る名作であった。
ご自身、外地で部隊が全滅して爆撃で左手を失うという苛烈な体験をされ
その思いを戦争画に託して描いてこられた。
先頃亡くなった漫画家やなせたかしさんもそうだったが
漫画を描ける「平和」を求めづけた人だった。



最近もお元気な時にはよくテレビにも出演され
どこまで本気かわからないとぼけたお喋りで笑わせて下さった。
本当のユーモアを知っている人だなあと感心した。
ライフワークとされた「妖怪」と「戦争」はまさしく同根だったと思う。

93歳の大往生に合掌。



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