まろの公園ライフ

公園から世の中を見る

悠々として急げ!

2013年03月09日 | 日記

茅ヶ崎の「開高健記念館」に行ってきました。
週末だけの開館なのでなかなかタイミングが合わず
横浜方面に出かける用事があったので初めて足をのばしてみたのです。

茅ヶ崎市東海岸。
海のすぐ近くの松林の中にその建物はあります。
開高さんが亡くなるまでの15年間をすごした自宅兼仕事場です。

玄関横には生前の開高さんが口癖にしていた隻句が・・・
元々はローマ皇帝の警句だったようですが、考えてみれば不思議な言葉です。
ベトナムの戦火の中を走り回り、アマゾンで釣りをし、日夜、大酒を飲んでは言葉に苦吟し
開高さんは常に「生き急ぐように」時代と格闘していましたが
あの独特の大阪弁で些事を笑い飛ばし、いつも「悠々」と生きていた印象があります。
実に奥の深い素敵な言葉ですねえ・・・



決して豪邸ではありませんが
二階建のロッジ風の邸内にはサンテラスからの陽光があふれ
今も作家の魂や息づかいが感じられるようでした。



いいですねえ・・・
開高さんは旅から帰るとこの部屋で原稿用紙に向かいました。
あの名著「オーパ!」も「もっと遠く!」「もっと広く!」などの一連のルポルタージュは
この部屋で大好きなウイスキーとともに生まれました。

私は開高さんの熱心な読者という訳ではありませんが
時にふれ折にふれては古い文庫本を取り出して読むことがあります。
やっぱり行き詰った時が多いでしょうか・・・
あらゆる事象を多元的な視点でバッサリ斬る開高ワールドの小気味よさに
あの滾々と湧きあふれる言葉の豊穣さに圧倒されると
ちょっと元気が出て奮い立ちます。

ドキリとしますねえ!
行き詰るとついつい形容詞を多用する悪い癖。
深く頭をたれて反省しました。

またまたドキリ!
当てはまる項目が多すぎてイヤになります(泣)

いいですねえ!
酒量では負けないとは思うのですが、そんなことで勝ってもなあ・・・(苦笑)

生原稿も展示されていました。
あの骨太で的確でアイロニーに富んだ文体は
こんな柔らかな端正な文字で綴られるのかと、ちょっと意外でした。



初夏のような陽射しがあふれる裏庭のベランダ。
開高さんは木々に囲まれた裏庭の通路を「哲学者の小径」と名付けて
散歩をしながら瞑想に耽っていたようです。

東日本大震災からもうすぐ二年です。
もし開高さんが生きていたら、あの時に何を思い、作家として何を書き
どう行動していたのだろう・・・などと考えました。

滞在は一時間半。
いろいろなことを思い、いろいろなことを考えました。
最後に持って来た古い文庫本を玄関の椅子の上に置いて記念の一枚。
さあ、時間もないので急がないと!
いや、悠々として急げ!