蓼科の春の満月。 5月といえども蓼科の山々はまだ葉のない木々に覆われ侘しい。夜になるとその侘しさが枯れ木の山々の静けさを一層引き立てる。蓼科の真夜中の空は黒一色。闇の中の黒の世界に煌々と冴える満月の月明かり。
平地は春本番であっても、標高の高い山地では冬が終わり漸く春の初めを迎えた頃。高い山に住む鹿(ときにはカモシカも)たちは長い冬の間の空腹を満たすため、木々や草の新芽を食べにやってくる。しかし、標高の高いところではまだ十分に新芽が出揃っていないため若い木の樹皮が食べられてしまう。樹皮を食べられた木はその後の成長に支障をきたしたり、ときには枯れてしまったりすることもある。