視覚や体調・・・味覚以外にも要因
多くの人は、「おいしさは、舌で味わうことで感 じる」と思っている。しかし、われわれが日常生 活でおいしくないと感じる場面を思い起こすと、 おいしさには味覚以外にいろいろな要因がかか わっていることがわかる。塩気のないス-プは おいしくない。これは、塩がないのでうま味応答 が増強されないからだ。この現象は、味を感じる 味細胞で起きている。また、塩は、甘味も増強する。風邪をひくとお いしくない。これは、食品のにおいもおいしさになくてはならないもの だからだ。健康な人でも鼻をつまんで食べてみると、においが味に 大きく影響することが実感できる。舌で感じる味とにおいをあわせて、 「風味」という日本語が使われている。ゆですぎてのびたラ-メンは おいしくない。これは、蝕圧覚で感じられる適度な噛み心地が味の 構成要素の一つであることを示している。また、冷めたラ-メンはお いしくないが、冷たいビ-ルはおいしい。このように温冷覚で感じら れる適度な温度もおいしさには欠かせない。雑誌や新聞のグラビア には、見るからにおいしそうな料理の写真もあるが、まずそうな料理 の写真もある。視覚で感じられる彩は、特に日本料理には欠かせな い。ここまでは、五感を構成する感覚器で受容されている。また、満 腹になるとおいしくない。仕事で失敗するとおいしくない。暑いといつ もおいしいものでもあまりおいしく感じないなど、体内の状況や外部 環境によってもおいしさは左右されている。 (柏柳 誠=旭川医大医学部教授)
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