放射線医学研が組み込み 転移、増殖の過程観察
放射線医学総合研究所(千葉市)のチ-ムが、メダカのがん細胞に緑色蛍光タンパク質(GFP)を組み込み、生きたメダカの体内でがんが増殖したり転移したりする様子をリアルタイムで観察することに成功した。メダカは魚類だが、がん細胞には人間と共通のメカニズムも多いと考えられている。皮膚が透明で、外から体内の様子を詳細に観察できるメリットを生かし、がんの性質を突き止める基礎研究などに活用が期待されるという。チ-ムメダカのメラノ-マ(皮膚がんの一種)細胞にGFP遺伝子を組み込んで、光るがん細胞を作製。拒絶反応が起きない状態で実験するため、これを「近交系メダカ」と呼ばれる、遺伝的に極めて近いメダカの腹腔内と皮下に移植した。するとがん細胞はメダカ体内に生着。チ-ムは約2ヵ月間、この細胞を観察した。移植直後は直径0・2㍉程度だったがんは、2ヵ月で約10倍の同2㍉前後になった。高倍率の顕微鏡を使うと、体内で増殖するがん細胞1個1個を観察することができ、尾ひれ近くに移植したがん細胞が、数日後には目の周囲に転移するのも確認したという。がん研究では、実験動物のマウスがよく使われ、蛍光を発するがん細胞も開発さけているが、メダカのように透明ではないため、個々の細胞を見るような詳細な観察は不可能だった。同研究所分子イメ-ジング研究センタ-の長谷川純崇研究員(腫瘍生物学)は「重粒子線などの放射線や、抗がん剤によるがん治療の効果を調べるのに、このメダカは有用だ」と話している。
※GFP 自然界に複数ある蛍光タンパク質の一種で、下村脩・米ボストン大名誉教授が1960年代にオワンクラゲから発見。がん研究をはじめ生命科学研究に欠かせないツ-ルで、下村さんは2008年のノ-ベル化学賞を受けた。
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