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札幌圏本当に不況?「藻谷 浩介」

2007-10-02 15:00:00 | 社会・経済

夏休み、酷暑の東京を脱出し、ひとときを家族で、札幌と十勝に遊                            んだ。沖縄と気温が逆転した日もあったという今夏の北海道。道産                            子は「昔こんな熱帯みたいな夕立はなかった」とぼやいていたが、                            北海道が熱帯なら東京はサウナ。道外からの亡命一家としては、                             十分涼しさを楽しめた。札幌では、最近当地に転勤した二男の同級                           生のご家族と再会。大通り公園に、サッポロファクトリ-に、札幌ド-                          ムと、皆で当地のファミリ-レジャ-を楽しんだ。不況というが、夏休                           みの北の都はまたずいぶんとにぎやかだった。誓って言うが、「好景                          気」の代表格とされる名古屋に家族旅行していたのでは絶対に味わ                           えない、豊かな時間と、雑踏のワクワク感が札幌にはあった。                              ※名古屋圏は大幅減                                                                      そう思うのは筆者だけではない。経済力の高さを誰よりもが認める                             大丸百貨店も、札幌店を新設投資していながら、名古屋店は持って                            いない。しかも東海地方を地盤とする松坂屋と経営統合するというこ                           とは、名古屋に直営店をもうつくらないということだ。「不況」の札幌に                          出て、「好景気」の名古屋に出ないとは、いかなる判断なのか。199                           8年度と2003年度の商業統計を比較すると、人口五百四十万人の                          名古屋都市圏の小売販売額(すべての店の売り上げの合計)は、実                           は五千億円近くも低下している。ところが周辺都市を含め人口二百四                          十万人の札幌都市圏の小売販売額は、ほとんど減っていない(同期                          間に百億円強の減少)。こういう数字をきちんと分析した大丸は、札幌                          には進出したが、名古屋店はつくらないとの決断をくだしたわけだ。                          「北海道は不況のどん底だ」と主張したいお歴々は、こういう事実自体                          を否定したがる傾向がある。だが、以上のような結果は決して不思議                           ではない。                                                             ※20歳~50歳代カギ                                                     旺盛にモノを買うのは、おおむね20歳~50歳代である、ということを                           否定できる人はいないだろう。ところで、札幌周辺五市(札幌、江別、                          石狩、北広島、恵庭)に住んでいる20歳~50歳代の数は、2000                           年~2005年の五年間に一万四千人増加した。対して愛知県の20                           歳~50歳代の人口は、移住してきた外国人の方を入れても、同時期                           に三万八千人も減少している。これが、札幌と名古屋の小売販売額の                         減少の程度の違いに直結しているのだ。ちなみに首都圏一都三県                           (東京+埼玉+千葉+神奈川)の、同時期の20歳~50歳代人口は、                         二十三万人の減少。1998年~2003年度の一都三県の小売販売                           額は、二兆一千億円の減少となっている。北海道は不景気のどん底                          であると主張したい皆さんには受け入れがたいだろう。だが事実として                        は、札幌周辺は国内に本当に数少ない20歳~50歳代の人口が増え                         ている地域であり、小売商業者にとって最後の聖域だったのだ。北海道                        は不況だというのは、有効求人倍率や失業率をみた判断だ。しかしな                          がら、現に20歳~50歳代の人口が増え、モノの売り上げが下げ止ま                          っている地域を、不況呼ばわりしていればいいというものではない。                           札幌の皆さんはもっと自信を持つべきだ。もちろん、いい話ばかりでは                          ない。この話にはきちんと落とし穴がある。次回に、その落とし穴を指                          摘させていただくので、楽しみにお待ちいただきたい。                                   (もたに・こうすれ=日本政策投資銀行地域振興部参事役)

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