山登り・里歩きの記

主に関西地方を中心とした山登り、史跡巡りの紹介。要は”おっさんの暇つぶしの記”でんナァ!。

奈良・室生寺の秋と春 1

2016年09月20日 | 寺院・旧跡を訪ねて

昨年秋(2015/11/28、土)、お堂や仏像ではなく紅葉目当てに奈良県宇陀市の室生寺を訪れました。地図を見れば、近鉄・室生口大野駅から室生寺まで「東海自然歩道」が通っている。ウォーキングを兼ね、バスでなく自然歩道を歩いて行きました。結果からいえば、東海自然歩道でなく車道を歩くべきでした。東海自然歩道は杉木立と雑木林で囲まれ景観ゼロ、そしてゴロ石とぬかるみで疲れ果てた。帰りのバスで見ると、室生川に沿った車道には整備された遊歩道が設けられ、各所に紅葉の楽しめる場所が見受けられました。
紅葉も綺麗だったが、参道脇に群生している石楠花(しゃくなげ)が気になった。そこで今度は石楠花目当てに今年の春(2016/4/26、火)に再訪しました。この時は往復ともバスを利用。

★主に秋の写真を使っていますが、春の写真には(春:2016/4/26)と明記しています。

 大野寺と弥勒磨崖仏  


(写真は近鉄大阪線・室生口大野駅前の広場、2015/11/28日)
大阪・近鉄上本町駅7時51発急行に乗り、9時に大野駅に着く。室生口大野駅は急行が停車するので、大阪から乗り換え無しに来れる。改札口を出た脇に、小さな案内所があります。係員が常駐されているようなので、不明なことを訊ねたり、資料・地図などを入手できます。
少し下った駅前広場には室生寺行きのバスが待っててくれています。バスを利用すれば15分程ですが、快晴の秋日和なので東海自然歩道を歩くことに。大野の町を抜け、左奥の山中に入って行く。

バスで行く場合、駅前で乗るよりは、歩いて5分ほどの大野寺と弥勒磨崖仏に寄って、そこのバス停を利用するのが良い。ここの弥勒磨崖仏は必見です。帰りに寄るなら別ですが。
ここのバス停は公園風になっており、トイレや休憩所が整い、室生川とその対岸の弥勒磨崖仏を鑑賞できようになっている。
バス停から室生川越しの対岸を見れば、緑の樹木の間に白っぽい岩壁がはっきり見える。これが弥勒大磨崖仏(みろくだいまがいぶつ)です。このあたりは室生山火山群で火山岩による巨石が数多く、切り立った大岩壁が見られる。大岩壁で知られる名勝・香落渓も近い。
弥勒大磨崖仏は、高さ30mをこす岩壁を削り磨き上げ、そこに13.8mの光背を彫り窪め、内部を平滑になるように磨き、11.5mの弥勒仏の立像を線刻したものです。「大野寺石仏」の名称で国の史跡指定を受けている。
鎌倉時代初期の承元元年(1207年)に彫り始め、承元三年に完成し後鳥羽上皇臨席のもと開眼供養が行われたという。製作者は諸説あるが、「宋から来日した石工・伊行末(いぎょうまつ/いのゆきすえ)の一派と考えられている」(wikipedia)。彫像にあたっては、笠置寺の本尊として笠置山の山中に彫られていた弥勒像の下図を元に模刻したそうです。元になった笠置山の弥勒像は、後鳥羽上皇を追った北条軍によって火にかけられ焼失してしまい、現在目にすることはできない。

「石仏は岩盤からの地下水の滲出等で剥落の危険があったため、1993年から1999年にかけて保存修理工事を実施。岩表面の苔類の除去や地下水の流路を変える工事などが行われた」(Wikipediaより)。この修理のため、以前よりは線刻がはっきり見えるようになったという。そうはいっても白い岩壁への線刻なので、双眼鏡で見るでもしない限り、仏像の姿を明瞭に把握しにくい。西面しているので、西日の当たる夕方がはっきりと線刻が見えるそうでが、私が訪れたのは朝の9時でした・・・。

車道と室生川を挟み、弥勒磨崖仏と対面するように位置しているのが大野寺(おおのじ、おおのでら)。古くから室生寺の末寺で、室生寺への西からの入口に建つので「室生寺の西門」と呼ばれていた。

寺の大野寺縁起によれば「白鳳九年(681年)に役の小角が開き、天長元年(824年)弘法大師室生寺開創のとき、西の大門と定め一宇を建て、本尊弥勒菩薩を安置して慈尊院弥勒寺と称しました。その後地名を名付けて大野
寺と称すと伝えます」。役行者と弘法大師に関係付けるのはよくある話しですが・・・。真言宗室生寺派の寺院で、山号は楊柳山。
大野寺は枝垂桜の名所として知られている。広くはない境内ですが、樹齢300年を超える枝垂れ小糸桜が2本、他にも樹齢100年の紅しだれ桜30本が、春には咲き誇るそうです。本尊の木造弥勒菩薩立像(秘仏)ですが、本当の本尊は対岸の弥勒石仏かも。弥勒大磨崖仏が一番よく見える境内の場所に遥拝所が設けられ、道と川を挟んだ向こう岸の弥勒大磨崖仏を拝むようになっています。

 東海自然歩道  



室生口大野から東海自然歩道で室生寺までは約6km。大野寺を9時20分に出て山中へ向かう。横を流れるのは室生川で、大野寺近くで室生ダムからの流水と合流し宇陀川となる。名張市周辺で名張川と名を変え、梅林で名高い名勝・月ヶ瀬を越え木津川と合流し、さらに南山城の山崎あたりで淀川へ流れ込み大阪湾へ注ぎ込む。

宇陀川の渓流を眺めながら車道脇のよく整備された歩道を歩く。国道165号線の高架橋を潜り進むと、紅い欄干に「むろうじおおはし」と書かれた大きな橋を渡る。下は室生ダムから放流される川です。
「むろうじおおはし」を渡り10分ほどあるくと、また紅い橋「いちのわたりはし」が現れます。その先に「東海自然歩道 室生寺まで約4.4km」の標識が建てられている。ここが室生寺へ通じる東海自然歩道の入口のようです。大野寺から徒歩20分位でしょうか。
帰りのバスの中で気づいたのだが、ゴロ石とぬかるみで歩きにくい東海自然歩道よりはバス道を歩いたほうが良かったんじゃないかと。バス道の脇には幅広く整備された遊歩道が設けられていた。室生川の渓流が寄り添い、所々紅葉の美しい箇所もある。車も少なく、東海自然歩道より距離も短い。紅葉シーズンに限っては東海自然歩道に入らないで、そのままバス道を歩くほうが良いと思う。

東海自然歩道へ入ると杉が林立し薄暗い。この辺りはまだ平坦で、道幅も広くハイキング気分で歩けます。数人のハイカーを見かけた。
一本道で紛らわしい分かれ道はないが、入口から20分くらいの所に分岐する箇所がある。真っ直ぐ行かず、右側の狭いほうの道に入って行く。標識が建てられているので間違うことはないと思うが。「室生寺 4.0km」とあります。



道幅は少し狭くなってくるが、杉木立の間を傍の小川のせせらぎを聴きながら気分よく歩ける。まだ平坦な道が続く。









やがて道幅はさらに狭まり、坂道となってくる。山道らしくなってきました。そして散乱するゴロ石を踏みながら歩かなければならない。コブシから人頭大位までの苔むしたゴロ石が転がっている。足場は最悪です。山中に浸み込んだ雨水が流れ出しているのか、地面はぬかるんでいる。ぬかるみを避けようとゴロ石の上を踏むと、苔でツルッと滑る。何度か転びそうになった。ぬかるみと落ち葉で足を滑らせ、ゴロ石につまずく、水たまりもある・・・、散々な自然歩道でした。かって女人達もこんな道を歩いたのでしょうか。10時20分、「室生寺 3.1km」の標識が。

酷い「東海自然歩道」と思いながら耐えていると、「室生寺 1.8km」の標識が現れた。10時55分です。ここが門森峠のようで、ここからは室生の里まで下り坂です。ようやく悪路から解放されたようです。ここまで見晴らしも効かず、紅葉など一度も見かけなかった。

 室生山上公園「芸術の森」と室生の里  


下りはゴロ石もなく、落ち葉を踏みしめながらスイスイ降れる。杉林に囲まれた東海自然歩道を抜けると、やがて木立の間から建物が、そして広場が見えてきた。こんな山奥なのでゴルフ場かな?、と思った。しかしこれはれっきとした公園なのです。その名は「室生山上公園 芸術の森」。古刹・室生寺近くの山中に”芸術の森”、なんとも違和感を感じます。入口にあったパンフレットには「公共事業とアートの融合を目指し」とある。”公共事業とアート”、これまた???な組み合わせです。
調べてみました。元々、この一帯は棚田などの田畑だったが地すべりの危険があった。直ぐ下は室生寺のある室生の里です。そこで奈良県や宇陀市が協議し、地すべり防止を兼ねた公園とすることになった。そこで設計を任されたのが、周囲の環境や景観と同化した屋外作品で知られるイスラエルの彫刻家・ダニ・カラヴァン(Dani Karavan, 1930年~)です。既に日本でも「札幌芸術の森」「霧島アートの森」などを手がけていました。こうして「公共事業とアートの融合」が始まり、2006年3月に完成した。

ダニ・カラヴァンは、岡本太郎風の抽象的・シュール系の芸術家です。パンフを見れば、ここ室生山上公園には「ピラミッドの島」「天文の塔」「螺旋の水路」「波形の土盛」など、なんとも抽象的なオブジェが広い公園敷地に散らばっているだけです。この山中まで足を伸ばし、観覧料400円支払い抽象的なオブジェの意味を感得しようとする人がどれだけいるでしょうか?。外から眺めただけですが、土曜日の昼前なのに誰一人見かけなかった。

室生山上公園から室生寺のある里へ降りていきます。室生の里へ続く降り道も「東海自然歩道」のようで、道標が立てられている。
民宿があったり、軒先で野菜を売っているおばちゃんがいる。車道の整備された現在、この東海自然歩道は室生寺への道ではなくなっている。誰も人影を見かけません。野菜売りのオバチャンも、私を逃さまいと必死です。「帰りに寄るから」と逃れました。

室生川と、川沿いの飲食店、料理旅館や土産物屋などが建ち並ぶ門前町が見えてきました。11時半、腹ごしらえのためよもぎ餅を頬ばりながら室生寺へ。
バス停は写真の左下方向。室生寺入口まではチョッと歩かなければならない。


詳しくはホームページ


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