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金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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白銀の翼(動乱)397

2014-12-11 20:38:53 | Weblog
 趙雲の混乱は、憑依しているモノの混乱であった。
モノは趙雲の記憶から時代の流れを知った。
あまりにも長い間、閉じ込められていた。
その為に憎っくき劉邦は遠い遠い過去の人。
強敵、張良も同様に過去の人。
代わりとなる劉邦直系の血筋も絶えていた。
のみならず傍系が継いだ漢帝国も一時的に途絶えた。
王莽に簒奪されたのだ。
その王莽を倒し再建された漢帝国は、傍系のさらに傍系が創建したもの。
本家と区別するために後漢帝国と呼ばれた。
初代皇帝は血筋的には遠縁の遠縁で、赤の他人も同然。
「正統性を主張するために劉家の姓を名乗っている」としか思われなかった。
しかもだ、今の帝となると更に傍系。大樹から枯れ落ちた枝葉のようなもの。
これでは恨みの晴らしようがない。
 憑依したものの、恨みを晴らす相手を失い途方に暮れたモノを慰めたのは、
趙雲を見舞う娘達の熱い眼差し。
色街で働く女達だけでなく、町娘達も大勢が見舞いに押し掛けた。
臥せたままの状態で彼女達の相手をするうち、
「これもいいかな」と思うようになった。
なにしろ人であった頃は、このように女にモテタことがなかった。
人というより獣に近く、金で女を買うしかなかった。
その当時からすると、今の状況は夢のまた夢。
だけではない。
池の水面に映った額を見て、大いに気に入った。
罪人の印が刻まれておらず、奇麗なままだったからだ。
 迷う趙雲を見兼ねたのか、栄静が優しく言う。
「けっして追い出そうとは思っていないのよ。
貴方が私達の仕事を手伝ってくれれば、それはそれで、とても嬉しいわ。
貴方は私の弟であり、みんなの子供でもあるのだから大歓迎よ。
でも、貴方のお父様との約束があるの。
亡くなった人との約束は破れない。分かってね」
 藍天威が取りなすように言う。
「今すぐ出て行け、というわけじゃない。
身体が万全になってからだ。
それにもうすぐ秋が過ぎ、冬になる。
冬は旅には不向きだ。
だから次の春までに決めてくれ。
どこに行くのか、何者に成りたいのか。
お前が決めたら、俺達は全力で協力する」
 居合わせた者達の表情が歪む。
みんなは、「趙雲を手放したくない」という顔色をしていた。
心配そうに趙雲を見遣る。
 予想だにせぬ展開だが、みんなの期待には応えられない。
亡き父との間で、そんな約束が交わされていたとは思わなかった。
栄静、藍天威二人の気持ちが痛いほど分かる。
死んだ人間との約束は破れない。
不承不承ながら、「分かりました」と返事するしかなかった。
 途端に、みんなの表情が落胆に変わった。
でも誰一人、口にはしない。
栄静、藍天威の二人にしても、けっして嬉しそうではない。
その顔色から、「約束を守ろうとしているだけ」と読み取れた。
 暫くして栄静が口を開いた。
「疑問があるの。
貴方のお父様のことよ」
 示し合わせたかのように藍天威が小さな木箱を卓の上に置いた。
一見しただけで、腕の確かな職人が仕上げた物と分かった。
手間暇たっぷり掛けられた鮮やかな彩り。
中身は知らないが、木箱だけで十分な値が付くだろう。
藍天威の手で蓋が開けられた。
見ると、短剣が納められていた。
木箱同様に柄も鞘も鮮やかな彩り。
 栄静が言う。
「これは砂金の袋と一緒に隠されていたの。
呆れるくらいの値打ち物だわ。
たぶん、誰かから贈られたものね。
太刀が贈られるのは手柄の印。
けど、これは短剣。
短剣が贈られるには二つの意味がある。
手柄の他にもう一つ。
それは自害を促す意味合い。分かるわね」
 趙雲は深く頷いた。
 それを見て栄静が続けた。
「砂金も不思議よね。
小さな袋で二つだったけど、旅の行商で稼いだにしては大金過ぎるわ。
私達はその一つで、この町に色街が造れた。
それからすると二つもあれば、旅の行商をする必要がないの。
親子二人なら贅沢な暮らしが出来る。だけど旅から旅の旅暮らし」
 藍天威が代わった。
「お前の親父さんには謎がある。
おそらく旅の行商は仮の姿。
何があったのかは知らないが、定住だけは避けていた。
これらの事も考慮して先々を考えてくれ」




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