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金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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金色の涙(江戸の攻防)278

2010-10-24 09:39:14 | Weblog
 孔雀等の攻撃に頑強に抵抗する魔物部隊だったが、腹背からの挟撃に遭い、
次第に隊列の維持が難しくなってゆく。
腹背を攻められているので隊列の入れ替えが出来ないのだ。
斃れた魔物兵の守る箇所に補充兵を送り出すので精一杯。
これでは隊列に穴が開くのは時間の問題だろう。
 神子上典膳が斬り捨てた魔物兵の補充が遅れた。
それを典膳は見逃さない。
僅かの遅れだったが、強引に突っ込んで行く。
左右の魔物兵を血祭りに上げ、現れた補充兵を蹴倒して首を掻き切った。
 好機到来とばかりに狐狸達が典膳の頭上を飛び越えて攻め込む。
こうなると狐の「狐火」、狸の「鎌鼬」に勢いが出る。
あちこちで魔物兵を火達磨とし、凶器の風が具足を切刻む。
王子の狐達も負けてはいない。得意の体術で挑み、手足や首を折る。
 一旦穴が開くと背後からの攻撃もあって修復は難しい。
魔物部隊の判断は早い。
無駄な抵抗はしない。
隊列の維持を放棄し、さっと左右に分かれた。
そしてあらぬ方角に逃走を開始した。
壊滅したかのようなバラバラな走り。
意地になって踏み留まる者は一人もいない。
走力でもって孔雀等の攻撃を躱し、追撃を振り切ろうとした。
 敗走した彼等を追撃したものかどうか孔雀は迷った。
伏兵を置かれはしないか不安になったのだ。
 風魔小太郎が駆け寄って来た。
「もうじき日が暮れる。どうする」
 その言葉で初めて西日に気付いた。
日が城陰に隠れようとしていた。
魔物であれば夜目が利く。
そうなれば魔物兵と狐狸達は別にして、普通の兵であれば不利にしかならない。
一揆勢には夜襲も夜露も防げる江戸城があるが、
城を棄てた徳川勢には身を寄せる場所がない。
 孔雀は小太郎を見返した。
「我等は夜に慣れてるが徳川勢は、・・・どうしたものか」
 傍にいた善鬼も頭を悩ませた。
彼と典膳は剣の修行により夜目が利く。
だからといって彼等や狐狸達だけでは魔物兵とは渡り合えない。
ある程度の兵力を有する徳川勢の存在が必要なのだ。
 不審顔で赤狐哲也が戻って来た。
「どうした。伏兵を恐れたか」
 孔雀は苦渋顔。
「このまま攻め続けて魔物兵や天魔を攻め滅ぼせれば良いが、
中途に終われば夜目の利かぬ徳川勢をどうしたものか、と思ってね」
 哲也も事情を知って天を上を仰いだ。
「・・・、日没までに攻め滅ぼすのは無理だろう。
かといって今の状況で徳川勢の撤退も不可能だ」と言うなり哲也は、
前置きもなく甲高い雄叫びを上げた。
 哲也の雄叫びに応えて前方で次々と雄叫びが上がった。
まるで山彦が木霊するかのようだ。
みんなが血気に逸っているのが分かった。
 目顔で尋ねる孔雀に哲也が答えた。
「豪姫は可愛い顔しているが、あれで胆力がある。
生なかの事では引き下がらないだろう。
だから我等が何としても日が暮れる前に決着をつけるほかない。
みんなに魔物兵は後回しにして先に天魔を討てと指示した」

 天魔に家来を次々と討たれた松平広重は逆上した。
全身に手傷を負って弱っているにも関わらず槍を構えて駆け出した。
体力が弱っていても、ここ一番の槍捌きには自信がある。
胴を突くと見せて喉元を狙った。
 天魔は面食らった。
胴を突く筈の穂先が急に変化したからだ。
辛うじて、半身となって刀身で喉元を守った。
 天魔にとっては得難き相手。手強い者が好きなのだ。
相手が槍を手許に引く動作に合せて自分も歩を進めた。
お返しは勿論、喉元。それ以外は考えられない。剣先をすいっと伸ばした。
 広重は伸びてきた剣先を斜め後方へ退きながら躱した。
並みの者なら喉元を貫かれていただろう。
広重は苦笑い。彼も得難き相手に出遭ってしまった。
しかし残念な事に、これ以上体力は続きそうもない。
グッと踏み留まって天魔の胴を打つべく槍を回転させた。
 天魔は槍を柄の中ほどで一刀両断にし、返す刀で相手の胴を薙ぎ払う。
 広重は手許に残った柄でもって相手の刀を受け流し、素早く腰の刀を抜いた。
上段に構えて相手を睨め付ける。
一撃に賭けるしかない。
 天魔は顔を引き締めて相手を見た。
胴をガラ空きにして上段に構えるとは。
胴は誘いとしか考えられない。良い度胸だ。
中段に構えて相手の出方を探る事にした。

 その様子に前田慶次郎が動いた。
今や気力だけで刀を構えている広重を見殺しには出来ない。
天魔に向かって槍で突き掛かった。
 天魔は新たな敵に気付くと大きく跳び退った。
そして邪魔した相手を睨み付け、悠然と構えた。
よく見ればこれまた手強い奴。相手に不足なし。
 動いたのは慶次郎だけではなかった。
白拍子、於福、九郎の三人も一斉に動いた。
逃さぬように四方を取り囲んだ。
正面に慶次郎。右に白拍子、左に於福。背後に九郎。
万の兵力よりも強固な包囲陣。
 それを見た魔物兵の一部が動いた。
先頭に立つのは木村弘之の頃からの郎党の頭、信平。
彼だけは常に天魔の身辺警護を念頭に置いて行動していた。
なので、たとえ天魔に禁じられていても自分の判断を優先した。
今がまさにその場面。
選び抜いた腕の立つ魔物兵十数人を率いて駆け付けた。
九郎と白拍子を背後より襲う。




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