本国への撤退案は、ぎこちなくも受け入れられた。
唐突だった事もあるが、敗走に見える撤退が武将達の心に重く伸し掛ったのだ。
だからといって他に手立てはなし。
このままでは脱走する者が相次ぐだけ。
仕舞いには部隊ごとの寝返りもなきにしもあらず。
武将達は仕方なく受け入れた。
直ちに撤退準備に取りかかった。
行軍に伴う糧食は一ヶ月分。
最短距離であれば歩兵でも十日で充分間に合う。
それでも将兵の心に余裕を持たせるために一ヶ月分とした。
「残りは燃やしますか」と武将が項羽に問う。
西楚軍十万が一年は立て籠もれるだけの糧食が残されていた。
宝物もかなりあった。
「否、残りは劉邦軍にくれてやれ」
百万の劉邦達には嬉しい置き土産だろう。
本軍を任された李布将軍が撤退の行程を組み上げて報告に来た。
詳細に説明しようとするのを項羽は笑って押し留めた。
「お前は俺の右腕。全て任せた」
「有り難きお言葉。
して覇王様、必ず生きて戻られますよね」と強く視線を絡ませた。
撤退準備に人手を割かれ側周りに居るのは、最も信頼する少数の将兵のみ。
不満顔の虞姫も項羽の傍らに控えていた。
項羽は、みんなを見回した。
「この歌声が聞えるか。紛うことなく楚歌だ。
・・・。
我は武門の出。中華では知られた項家の直系。刀槍では誰にも負けぬ。
しかし歌が相手では勝手が違う。この手の戦の仕様を知らぬ。
・・・。
天は我を見放した。
ここで散れと言うのだろう」
「そんな事はありません」と虞姫。
「楚の国を戦火に巻き込んでまで戦いたくはない。
我がここで散れば戦火は楚にまでは及ばない」
「最後まで戦いましょう。
楚の国の者達は貴方の為に、最後の一人まで戦います」
これに李布将軍も同調した。
「そうです。
楚の地であれば敵百万といえど、我等に地の利ありです」
項羽は冷笑。
「無理を申すな。
これまで幾万の楚の将兵を死なせたと思う。
それなのに天下が治まらぬ。
楚の将兵は勇猛果敢ではあるが、これは全て我が到らぬせい。
これ以上、楚の健児達を巻き込みたくはない。
・・・。
我が項家は楚の国の武門。
昔は楚の王家を守っていた。
今は我が西楚の覇王であるが、役目は楚の民人を守ることと心得ている。
自分の栄華を考えた事は一度もない。
楚の安寧と項家の名声、二つだけを考えていた。
それなのに、ここに至って敵を楚の国に招こうとする事態と相成った。
それだけは耐えられない。
・・・。
李布、虞姫、頼む。何も言わずに楚に戻ってくれ。
我の代わりに将兵達を無事に国に戻してくれ。
戻ったなら全てを将兵に説明し、王宮の宝物を分け与え、
それぞれの故郷に帰して貰いたい。
・・・。
我が死に、西楚軍が四散すれば劉邦も無理に攻め込んではこない。
幸いにも我に背いた叔父の項伯が劉邦の元にいる。
叔父が率いる楚の将兵も大勢いる。
奴等が防波堤になってくれよう。
軍師の張良も、その性格からして楚への侵攻より、中華の早期安定を望むはず。
多少の血は流れるだろうが、楚の平和は守られるだろう」
虞姫が悔しそうに項羽を睨み付け、二歩、三歩と歩み寄った。
「貴方の言いたい事は分かりました。
だけど私の気持は収まりません。
妻が共に死して何の不都合がありましょう」
項羽は虞姫を優しく見詰めた。
「お前には子供と共に生きていて欲しい」
懐妊を内緒にしていた虞姫は顔を歪めた。
「知っていたのですか」
「これでも夫だからな。
これよりは母として生きよ。
我の分まで生きて、子と二人幸せにな。
・・・。
そんな顔するな。
いずれあの世とやらで会える。
我は先に逝くが、また会える」
虞姫の目から大粒の涙が零れ始めた。
それでも彼女は泣かない。
黙って項羽を見詰める。
「・・・」
項羽は虞姫に歩み寄り、その肩に手を置いた。
「自分の子供もだが、みんなも頼む。
王妃にとって将兵は無論、民人みんなが子供だ」
彼女は頷かない。
気持は限界に来ていたが、決壊せぬように天幕を見上げた。
項羽のもう一方の手が虞姫の腹部に置かれた。
防具の上からだが、お腹の子を感じ取ろうと掌で優しく撫で回した。
虞姫は慌てて自分の防具を剥ぎ取った。
「馬鹿ね」
項羽は再び掌で虞姫の腹部を撫で回した。
「昔から馬鹿だったろう」
「そうね」と腹部を撫で回す項羽の手に、自分の手を重ねた。
「それにしては膨れてないな」
「膨れるまでには育ってないわ、これからよ」
「そうか、健やかにな」
虞姫は姿勢を正して両手で項羽を抱きしめた。
表情を改めて愛しい夫を見上げた。
「王妃として国に戻ります。
・・・。
また会えますね。
きっとですよ。
約束ですよ。
・・・。
年老いた私が見分けられると良いですね」
★
季節は春なのに、政治は呆れたままのようです。
参院で二閣僚の問責決議が可決されました。
前田国交相と田中防衛相の二人です。
二人合せて前田中。
これで民主党政権になってからは六人。
泥鰌サンになってからは四人。
民主党は問責に値する議員の宝庫なのでしょうか。
いえいえ、そうではありません。
議員全体のレベルが下がっているのです。
たまたま運悪く大臣になったので、その資質が露呈したのです。
交代させれば済むという問題ではありません。
交代要員もドングリの背比べ。
いずれも劣化した人材ばかりなんですから。
その悪い例が政権の要職に名を連ねる弁護士出身者達です。
彼等は弁は立つようですが、悪目立ちしています。
一体誰の弁護人を任じているのでしょう。
市民の敵の代弁者にしかみえません。
そうそう、面白いデーターがありました。
電力関連です。
経産省の計算によると、
昨年四月から十二月までの間に生産されたエンジン発電機が、
電力換算すると理論上、555万キロワットになるのだそうです。
それを原発に換算すると五基分。
関西でも一基分以上になるとか。
今日はSuperfly、「スーパーフライ」でしょう。
スーパーで売ってるフライではありません。
ちいちゃい女の子です。掌に乗るくらい。
それが上手いだけでなく、格好いいんですよね。
「タマシイ レボリューション」
「Alright!!」
「Beep!!」
ことに、「愛をこめて花束を」は今でも好きです。
★
ランキングです。
クリックするだけ。
(クリック詐欺ではありません。ランキング先に飛ぶだけです)
唐突だった事もあるが、敗走に見える撤退が武将達の心に重く伸し掛ったのだ。
だからといって他に手立てはなし。
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武将達は仕方なく受け入れた。
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西楚軍十万が一年は立て籠もれるだけの糧食が残されていた。
宝物もかなりあった。
「否、残りは劉邦軍にくれてやれ」
百万の劉邦達には嬉しい置き土産だろう。
本軍を任された李布将軍が撤退の行程を組み上げて報告に来た。
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不満顔の虞姫も項羽の傍らに控えていた。
項羽は、みんなを見回した。
「この歌声が聞えるか。紛うことなく楚歌だ。
・・・。
我は武門の出。中華では知られた項家の直系。刀槍では誰にも負けぬ。
しかし歌が相手では勝手が違う。この手の戦の仕様を知らぬ。
・・・。
天は我を見放した。
ここで散れと言うのだろう」
「そんな事はありません」と虞姫。
「楚の国を戦火に巻き込んでまで戦いたくはない。
我がここで散れば戦火は楚にまでは及ばない」
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楚の国の者達は貴方の為に、最後の一人まで戦います」
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楚の地であれば敵百万といえど、我等に地の利ありです」
項羽は冷笑。
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楚の将兵は勇猛果敢ではあるが、これは全て我が到らぬせい。
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昔は楚の王家を守っていた。
今は我が西楚の覇王であるが、役目は楚の民人を守ることと心得ている。
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楚の安寧と項家の名声、二つだけを考えていた。
それなのに、ここに至って敵を楚の国に招こうとする事態と相成った。
それだけは耐えられない。
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李布、虞姫、頼む。何も言わずに楚に戻ってくれ。
我の代わりに将兵達を無事に国に戻してくれ。
戻ったなら全てを将兵に説明し、王宮の宝物を分け与え、
それぞれの故郷に帰して貰いたい。
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我が死に、西楚軍が四散すれば劉邦も無理に攻め込んではこない。
幸いにも我に背いた叔父の項伯が劉邦の元にいる。
叔父が率いる楚の将兵も大勢いる。
奴等が防波堤になってくれよう。
軍師の張良も、その性格からして楚への侵攻より、中華の早期安定を望むはず。
多少の血は流れるだろうが、楚の平和は守られるだろう」
虞姫が悔しそうに項羽を睨み付け、二歩、三歩と歩み寄った。
「貴方の言いたい事は分かりました。
だけど私の気持は収まりません。
妻が共に死して何の不都合がありましょう」
項羽は虞姫を優しく見詰めた。
「お前には子供と共に生きていて欲しい」
懐妊を内緒にしていた虞姫は顔を歪めた。
「知っていたのですか」
「これでも夫だからな。
これよりは母として生きよ。
我の分まで生きて、子と二人幸せにな。
・・・。
そんな顔するな。
いずれあの世とやらで会える。
我は先に逝くが、また会える」
虞姫の目から大粒の涙が零れ始めた。
それでも彼女は泣かない。
黙って項羽を見詰める。
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項羽は虞姫に歩み寄り、その肩に手を置いた。
「自分の子供もだが、みんなも頼む。
王妃にとって将兵は無論、民人みんなが子供だ」
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防具の上からだが、お腹の子を感じ取ろうと掌で優しく撫で回した。
虞姫は慌てて自分の防具を剥ぎ取った。
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項羽は再び掌で虞姫の腹部を撫で回した。
「昔から馬鹿だったろう」
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虞姫は姿勢を正して両手で項羽を抱きしめた。
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約束ですよ。
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年老いた私が見分けられると良いですね」
★
季節は春なのに、政治は呆れたままのようです。
参院で二閣僚の問責決議が可決されました。
前田国交相と田中防衛相の二人です。
二人合せて前田中。
これで民主党政権になってからは六人。
泥鰌サンになってからは四人。
民主党は問責に値する議員の宝庫なのでしょうか。
いえいえ、そうではありません。
議員全体のレベルが下がっているのです。
たまたま運悪く大臣になったので、その資質が露呈したのです。
交代させれば済むという問題ではありません。
交代要員もドングリの背比べ。
いずれも劣化した人材ばかりなんですから。
その悪い例が政権の要職に名を連ねる弁護士出身者達です。
彼等は弁は立つようですが、悪目立ちしています。
一体誰の弁護人を任じているのでしょう。
市民の敵の代弁者にしかみえません。
そうそう、面白いデーターがありました。
電力関連です。
経産省の計算によると、
昨年四月から十二月までの間に生産されたエンジン発電機が、
電力換算すると理論上、555万キロワットになるのだそうです。
それを原発に換算すると五基分。
関西でも一基分以上になるとか。
今日はSuperfly、「スーパーフライ」でしょう。
スーパーで売ってるフライではありません。
ちいちゃい女の子です。掌に乗るくらい。
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