何美雨は冷静に宋典を見詰めた。
口を滑らせたからといって責めるつもりはない。
「教えて欲しいのだけど」
「何を・・・」宋典が憮然とした面持ちで問い返した。
「あれは単純に帝個人が狙われたのかしら。
個人的な恨みという意味よ。
それとも王朝の内部問題。どう思う」
「んー」首を傾げた。
黄小芳が長考する宋典の前に小さな壺を置いた。
酒の匂いが漂って来た。
宋典の鼻がぴくぴく小刻みに動き、目が点になった。
急いで茶を飲み干し、酒を注ぐ。
室内が酒の匂いで満たされた。
満足そうに頷く宋典。
やおら黄小芳に目を遣った。
「子供の部屋に逸品の酒とは解せないのだが、これはどういう」
「侍女用の寝酒ですよ」
「これも市で買い求めたのか」
「そうです。
あそこは劣悪な物もありますけど、この様に、ごくたまに逸品も紛れているんです。
それを探し回るのが楽しみなんですよ」
「これは西域からの物だろうな」言いながら酒を口に流し込み、
「美味い」素直な感想を述べ、二杯続けて飲む。
宋典が何美雨に視線を向けた。
「個人的な恨みかどうか調べてみた。
ところが服毒自殺した連中は、誰一人として恨みを持っていない。
お上とは何一つ揉めていないんだ」
「となると王朝の内部問題になるわね」
「お上が宦官を贔屓しているので、表の文官武官連中は失望している。
それは周知の事実だ。
だからといって、お上を毒殺しようとまでは思わないだろ」
「他に何か、それらしい事はないの」
首を傾げるだけの宋典に何美雨が問い重ねた。
「どうしたの。何か思い浮かばないの。
・・・。
そうだ。
誰が得をするか・・・。
帝が亡くなると誰が得するのかしら」
その言葉に宋典が眉を顰めた。
間を置いて口を開いた。
「一に何皇后。
産んだ皇子が後継に擁立される。
なにしろ董太后が引き取っている皇子は今だ三才。
幼い上に、このまま無事に育つかどうかが分からない。
その点、何皇后の皇子は十才。
比べるまでもないな」
「私は身内だから言うわけではないけど、何皇后が帝の毒殺を図るとは思えないの。
なにしろ帝は皇子の父親。皇子の父親を殺すかしら。
王美人の場合は嫉妬でしょう」
「嫉妬にしても毒殺はやり過ぎだろう。
もしかして持って生まれたお人柄かな。
・・・。
それにお上は皇后に興味を失っておられる。
このままだと第二、第三の王美人が現れ、それらに新たな皇子を産ませる恐れもあり、
時間が経つと共に、皇后が腹を痛めて産んだ皇子が後継に擁立される確率が低くなる」
何美雨は反論を諦め、話しを進めた。
「次に得するのは」
「後見人かな。
皇子が成人するまでは三公九卿と後見人の合議で政治が行われる」
「冠礼まで皇子は朝議に臨席出来ないのね」
「臨席は出来るが、問われない限り意見は述べられない」
「後見人に選ばれるのは」
「高祖、劉邦様の折り目正しい血筋。
大勢いるが、今評判の良いのは劉焉、劉表の二人」
何美雨は何を考えたのか、宋典の手元の酒壺に手を伸ばし、自分の方に引き寄せた。
そして手早く自分の茶碗に酒を注ぎ、口に運ぶ。
「駄目です」黄小芳が叫ぶ。
宋典も止めさせよう手を伸ばした。
一気に飲み干す何美雨。
次の瞬間には咳き込み、少し零した。
それでも、「美味いわね」一丁前の言葉を吐いた。
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「何を・・・」宋典が憮然とした面持ちで問い返した。
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個人的な恨みという意味よ。
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「んー」首を傾げた。
黄小芳が長考する宋典の前に小さな壺を置いた。
酒の匂いが漂って来た。
宋典の鼻がぴくぴく小刻みに動き、目が点になった。
急いで茶を飲み干し、酒を注ぐ。
室内が酒の匂いで満たされた。
満足そうに頷く宋典。
やおら黄小芳に目を遣った。
「子供の部屋に逸品の酒とは解せないのだが、これはどういう」
「侍女用の寝酒ですよ」
「これも市で買い求めたのか」
「そうです。
あそこは劣悪な物もありますけど、この様に、ごくたまに逸品も紛れているんです。
それを探し回るのが楽しみなんですよ」
「これは西域からの物だろうな」言いながら酒を口に流し込み、
「美味い」素直な感想を述べ、二杯続けて飲む。
宋典が何美雨に視線を向けた。
「個人的な恨みかどうか調べてみた。
ところが服毒自殺した連中は、誰一人として恨みを持っていない。
お上とは何一つ揉めていないんだ」
「となると王朝の内部問題になるわね」
「お上が宦官を贔屓しているので、表の文官武官連中は失望している。
それは周知の事実だ。
だからといって、お上を毒殺しようとまでは思わないだろ」
「他に何か、それらしい事はないの」
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「どうしたの。何か思い浮かばないの。
・・・。
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誰が得をするか・・・。
帝が亡くなると誰が得するのかしら」
その言葉に宋典が眉を顰めた。
間を置いて口を開いた。
「一に何皇后。
産んだ皇子が後継に擁立される。
なにしろ董太后が引き取っている皇子は今だ三才。
幼い上に、このまま無事に育つかどうかが分からない。
その点、何皇后の皇子は十才。
比べるまでもないな」
「私は身内だから言うわけではないけど、何皇后が帝の毒殺を図るとは思えないの。
なにしろ帝は皇子の父親。皇子の父親を殺すかしら。
王美人の場合は嫉妬でしょう」
「嫉妬にしても毒殺はやり過ぎだろう。
もしかして持って生まれたお人柄かな。
・・・。
それにお上は皇后に興味を失っておられる。
このままだと第二、第三の王美人が現れ、それらに新たな皇子を産ませる恐れもあり、
時間が経つと共に、皇后が腹を痛めて産んだ皇子が後継に擁立される確率が低くなる」
何美雨は反論を諦め、話しを進めた。
「次に得するのは」
「後見人かな。
皇子が成人するまでは三公九卿と後見人の合議で政治が行われる」
「冠礼まで皇子は朝議に臨席出来ないのね」
「臨席は出来るが、問われない限り意見は述べられない」
「後見人に選ばれるのは」
「高祖、劉邦様の折り目正しい血筋。
大勢いるが、今評判の良いのは劉焉、劉表の二人」
何美雨は何を考えたのか、宋典の手元の酒壺に手を伸ばし、自分の方に引き寄せた。
そして手早く自分の茶碗に酒を注ぎ、口に運ぶ。
「駄目です」黄小芳が叫ぶ。
宋典も止めさせよう手を伸ばした。
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次の瞬間には咳き込み、少し零した。
それでも、「美味いわね」一丁前の言葉を吐いた。
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