金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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白銀の翼(動乱)446

2015-05-27 21:56:40 | Weblog
 何美雨は冷静に宋典を見詰めた。
口を滑らせたからといって責めるつもりはない。
「教えて欲しいのだけど」
「何を・・・」宋典が憮然とした面持ちで問い返した。
「あれは単純に帝個人が狙われたのかしら。
個人的な恨みという意味よ。
それとも王朝の内部問題。どう思う」
「んー」首を傾げた。
 黄小芳が長考する宋典の前に小さな壺を置いた。
酒の匂いが漂って来た。
宋典の鼻がぴくぴく小刻みに動き、目が点になった。
急いで茶を飲み干し、酒を注ぐ。
室内が酒の匂いで満たされた。
満足そうに頷く宋典。
やおら黄小芳に目を遣った。
「子供の部屋に逸品の酒とは解せないのだが、これはどういう」
「侍女用の寝酒ですよ」
「これも市で買い求めたのか」
「そうです。
あそこは劣悪な物もありますけど、この様に、ごくたまに逸品も紛れているんです。
それを探し回るのが楽しみなんですよ」
「これは西域からの物だろうな」言いながら酒を口に流し込み、
「美味い」素直な感想を述べ、二杯続けて飲む。
 宋典が何美雨に視線を向けた。
「個人的な恨みかどうか調べてみた。
ところが服毒自殺した連中は、誰一人として恨みを持っていない。
お上とは何一つ揉めていないんだ」
「となると王朝の内部問題になるわね」
「お上が宦官を贔屓しているので、表の文官武官連中は失望している。
それは周知の事実だ。
だからといって、お上を毒殺しようとまでは思わないだろ」
「他に何か、それらしい事はないの」
 首を傾げるだけの宋典に何美雨が問い重ねた。
「どうしたの。何か思い浮かばないの。
・・・。
そうだ。
誰が得をするか・・・。
帝が亡くなると誰が得するのかしら」
 その言葉に宋典が眉を顰めた。
間を置いて口を開いた。
「一に何皇后。
産んだ皇子が後継に擁立される。
なにしろ董太后が引き取っている皇子は今だ三才。
幼い上に、このまま無事に育つかどうかが分からない。
その点、何皇后の皇子は十才。
比べるまでもないな」
「私は身内だから言うわけではないけど、何皇后が帝の毒殺を図るとは思えないの。
なにしろ帝は皇子の父親。皇子の父親を殺すかしら。
王美人の場合は嫉妬でしょう」
「嫉妬にしても毒殺はやり過ぎだろう。
もしかして持って生まれたお人柄かな。
・・・。
それにお上は皇后に興味を失っておられる。
このままだと第二、第三の王美人が現れ、それらに新たな皇子を産ませる恐れもあり、
時間が経つと共に、皇后が腹を痛めて産んだ皇子が後継に擁立される確率が低くなる」
 何美雨は反論を諦め、話しを進めた。
「次に得するのは」
「後見人かな。
皇子が成人するまでは三公九卿と後見人の合議で政治が行われる」
「冠礼まで皇子は朝議に臨席出来ないのね」
「臨席は出来るが、問われない限り意見は述べられない」
「後見人に選ばれるのは」
「高祖、劉邦様の折り目正しい血筋。
大勢いるが、今評判の良いのは劉焉、劉表の二人」
 何美雨は何を考えたのか、宋典の手元の酒壺に手を伸ばし、自分の方に引き寄せた。
そして手早く自分の茶碗に酒を注ぎ、口に運ぶ。
「駄目です」黄小芳が叫ぶ。
宋典も止めさせよう手を伸ばした。
 一気に飲み干す何美雨。
次の瞬間には咳き込み、少し零した。
それでも、「美味いわね」一丁前の言葉を吐いた。




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