捜査は難航していた。
当初は怨恨とみて、第一の被害者、第二の被害者の身辺を洗わせた。
仕事上の、あるいは私生活の利害関係・・・。
それとも二人に共通する何らかの絡み。
洗うと二人に怨みを持つ者数人が浮上した。
しかし、だからと言って首を刈りそうな者までは見つからなかった。
流れが変わったのは大分に捜査員を派遣してから。
過去に、試し斬りされたと思われる犬二匹の存在が報告されたのだ。
そこで、現地に捜査員を派遣した。
その検証をさせる過程で新たな事が分かった。
近くの寺から物が盗まれ、取り戻そうとした住職が行方不明になっていた。
そして野上家の一件が発生。
小野田老人が第三の被害者になる筈だったと知れ、事件の全容が分かった。
寺から盗まれた『風神の剣』と、
行方不明になった住職に関わった者達だけが命を狙われていた。
篠沢警部は、
「牟礼寺の報復以外にない」と判断し、関係者を調べようとした。
ところが牟礼寺の正体が不明であった。
戦後のドサクサに占領軍の後押しで起ち上げられた宗教法人だそうだが、
地元警察によると、「活動している様子が見受けられない」とか。
当時の法人に名を連ねた者達は全員が故人となっており、
今や、まったく宗教組織としての体を成していない状況。
判明しているのは、真言系「両子山派牟礼寺」と名乗っている事くらい。
なにしろ管理する墓地もなければ、檀家も持たない。
おまけに寺の住職は事件に巻き込まれて行方不明ときた。
なので詳細を知る人間がいなかった。
土地の所有者が北海道の酪農家、毬谷家と判明しているので、
電話で事情を聞くと、「占領軍の依頼を守っているだけ」との返事。
賃貸しではなく、無料で提供しているのだそうだ。
詳しい事情を知りたかったのだが、
「当時を知る人間は全員故人となりました。私は遺言に従っているだけです」
との返事。何も得ることができなかった。
そこにこの二人の来訪。
警察庁からの口利きでは無下に断るわけにもいかず、
「とりあえず会おう」という事にした。
『風神の剣』は原因となった刀だが、
盗まれただけで犯行に使われた訳ではない。
それでも圧力とあれば、すんなりと返却する訳にはいかない。
現場の主体性というものがあるからだ。
今日のところは、「適当にあしらおう」と考えていた。
目論見は田原龍一を見た瞬間に崩れた。
「この男を直ぐに帰してはならない」と判断した。
時間を稼いでその人物を観察せねばならない。
そこで篠沢警部は念の為にと用意させて置いた白鞘の日本刀三振りを、
部下に持って来させた。
意を汲んで動いたのは加藤と池辺のコンビ。
二人は溜まった報告書類があり、書き上げの為に本部に残っていたのだ。
長テーブルの上に白鞘三振りと、ついでに例の木箱も並べると、
何の指示も出さないが、加藤と池辺の二人は篠沢の背後に控えた。
田原に何か感じるところがあったのだろう。
白鞘二振りの柄にラベルが貼られていた。
「ニュースでご存じのように、
事情を知る小野寺さんが口を利けない状況なので、
私共にはどれが『風神の剣』なのかは分かりません。
ですので事件現場に置かれていた日本刀を、この状態で預かっております。
茎の部分に銘がある物は、その名を柄のラベルに記しておきました」と篠沢。
実際は倒れる前の小野寺から、どれが『風神の剣』なのかは聞いていたが、
こういう不本意な状況での返却要求なので聞いていない事にした。
「どうする」と言う視線を田原と森永に向けた。
森永が困ったような表情で田原を見るが、田原は平然としていた。
目に感情がない。
その田原が無表情でテーブルに歩み寄り、ラベルのない白鞘を掴み上げた。
手慣れた動作で白刃を抜き、鞘をテーブルに戻した。
まず刃紋を見定めた。
そして両手で刀を構え、ゆっくり上段から二度、三度と振り下ろした。
続けて左右に振る。
刀身のバランスを見ているのだろう。
彼の剣道歴は知らないが、様になっていた。
篠沢は池辺に目で問う。
「遣い手なのか」と。
池辺は大きく頷いた。
田原は満足したのか、刀を鞘に戻した。
他の二本には触れもせずに断言した。
「これですね」
「間違いないのですか」
「無銘で、刃紋は『備後風の乱れ』と書類に記されています」
「貴男が実際に触った事は」
「一度もありません。存在を知ったのも住職に任命されてからです」
無表情なので嘘か本当か、全く読めない。
それでも篠沢は問う。
「どこの誰が貴男を住職に任命したのですか」
すると意外な事に森永が口を開いた。
「うちの事務所が寺の維持管理の代理人を引き受けています。
ですので、うちの事務所が彼に新住職を依頼しました」
「お寺は宗教法人として体を成していないようですが」
「構いません。営利が目的ではありませんから」
「ですが維持管理には費用が掛かりますよね。
例えば電気、水等の諸費用に住職の給料」
面白い物でも見るような顔付きで森永が篠沢を見た。
「私共の財布を心配していただけるのですか」
言外に、「俺達に関心を持っているのか」と聞えた。
「管理職をやっていると刑事の仕事より金銭の出入りが気になるのですよ。
捜査費用には限りがありますからね」
森永が肩を竦めた。
「まあ、中間管理職には収支の一致が大切ですからね」
「でも、お宅は出る一方。・・・。依頼人は誰なんですか」
「職業上、依頼人の名は喋れないでしょう」
篠沢は森永から受け取った名刺を見直した。
所属しているのは「坂東弁護士事務所」。
あまり聞かない事務所だ。
★
自民公明両党は菅首相への不信任案提出に舵を切りました。
当然でしょう。
国民の多数も菅サンの言動には不信感を持っています。
やること、なすこと、その全てが己の権力維持優先にしか見えません。
ただ、不信任案が成立した場合、解散総選挙が筋です。
良いのでしょうか。この局面で権力の空白・・・。
そこまで覚悟して提出するのでしょうか。
もし、不成立を見越しての提出だとすると、それは単なる政局。
ゲームでしかありません。
国民は、議会に現存するのは無能な政治家ばかりと承知しているので、
「暫くは、菅サン続投でやむを得ない」と諦めています。
まことに残念な事態です。
・・・。
そんな政治家ばかりを選んだのは誰でしょう。
・・・。
私もでした。
ごめんなさい。
責任を取って次の選挙は謹慎します。
・・・。
とにかく、今許されている選挙はAKB48の総選挙だけです。
彼女等に清き一票を。
★
ランキングです。
クリックするだけ。
(クリック詐欺ではありません。ランキング先に飛ぶだけです)

当初は怨恨とみて、第一の被害者、第二の被害者の身辺を洗わせた。
仕事上の、あるいは私生活の利害関係・・・。
それとも二人に共通する何らかの絡み。
洗うと二人に怨みを持つ者数人が浮上した。
しかし、だからと言って首を刈りそうな者までは見つからなかった。
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小野田老人が第三の被害者になる筈だったと知れ、事件の全容が分かった。
寺から盗まれた『風神の剣』と、
行方不明になった住職に関わった者達だけが命を狙われていた。
篠沢警部は、
「牟礼寺の報復以外にない」と判断し、関係者を調べようとした。
ところが牟礼寺の正体が不明であった。
戦後のドサクサに占領軍の後押しで起ち上げられた宗教法人だそうだが、
地元警察によると、「活動している様子が見受けられない」とか。
当時の法人に名を連ねた者達は全員が故人となっており、
今や、まったく宗教組織としての体を成していない状況。
判明しているのは、真言系「両子山派牟礼寺」と名乗っている事くらい。
なにしろ管理する墓地もなければ、檀家も持たない。
おまけに寺の住職は事件に巻き込まれて行方不明ときた。
なので詳細を知る人間がいなかった。
土地の所有者が北海道の酪農家、毬谷家と判明しているので、
電話で事情を聞くと、「占領軍の依頼を守っているだけ」との返事。
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目論見は田原龍一を見た瞬間に崩れた。
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そこで篠沢警部は念の為にと用意させて置いた白鞘の日本刀三振りを、
部下に持って来させた。
意を汲んで動いたのは加藤と池辺のコンビ。
二人は溜まった報告書類があり、書き上げの為に本部に残っていたのだ。
長テーブルの上に白鞘三振りと、ついでに例の木箱も並べると、
何の指示も出さないが、加藤と池辺の二人は篠沢の背後に控えた。
田原に何か感じるところがあったのだろう。
白鞘二振りの柄にラベルが貼られていた。
「ニュースでご存じのように、
事情を知る小野寺さんが口を利けない状況なので、
私共にはどれが『風神の剣』なのかは分かりません。
ですので事件現場に置かれていた日本刀を、この状態で預かっております。
茎の部分に銘がある物は、その名を柄のラベルに記しておきました」と篠沢。
実際は倒れる前の小野寺から、どれが『風神の剣』なのかは聞いていたが、
こういう不本意な状況での返却要求なので聞いていない事にした。
「どうする」と言う視線を田原と森永に向けた。
森永が困ったような表情で田原を見るが、田原は平然としていた。
目に感情がない。
その田原が無表情でテーブルに歩み寄り、ラベルのない白鞘を掴み上げた。
手慣れた動作で白刃を抜き、鞘をテーブルに戻した。
まず刃紋を見定めた。
そして両手で刀を構え、ゆっくり上段から二度、三度と振り下ろした。
続けて左右に振る。
刀身のバランスを見ているのだろう。
彼の剣道歴は知らないが、様になっていた。
篠沢は池辺に目で問う。
「遣い手なのか」と。
池辺は大きく頷いた。
田原は満足したのか、刀を鞘に戻した。
他の二本には触れもせずに断言した。
「これですね」
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「貴男が実際に触った事は」
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無表情なので嘘か本当か、全く読めない。
それでも篠沢は問う。
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ですので、うちの事務所が彼に新住職を依頼しました」
「お寺は宗教法人として体を成していないようですが」
「構いません。営利が目的ではありませんから」
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例えば電気、水等の諸費用に住職の給料」
面白い物でも見るような顔付きで森永が篠沢を見た。
「私共の財布を心配していただけるのですか」
言外に、「俺達に関心を持っているのか」と聞えた。
「管理職をやっていると刑事の仕事より金銭の出入りが気になるのですよ。
捜査費用には限りがありますからね」
森永が肩を竦めた。
「まあ、中間管理職には収支の一致が大切ですからね」
「でも、お宅は出る一方。・・・。依頼人は誰なんですか」
「職業上、依頼人の名は喋れないでしょう」
篠沢は森永から受け取った名刺を見直した。
所属しているのは「坂東弁護士事務所」。
あまり聞かない事務所だ。
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自民公明両党は菅首相への不信任案提出に舵を切りました。
当然でしょう。
国民の多数も菅サンの言動には不信感を持っています。
やること、なすこと、その全てが己の権力維持優先にしか見えません。
ただ、不信任案が成立した場合、解散総選挙が筋です。
良いのでしょうか。この局面で権力の空白・・・。
そこまで覚悟して提出するのでしょうか。
もし、不成立を見越しての提出だとすると、それは単なる政局。
ゲームでしかありません。
国民は、議会に現存するのは無能な政治家ばかりと承知しているので、
「暫くは、菅サン続投でやむを得ない」と諦めています。
まことに残念な事態です。
・・・。
そんな政治家ばかりを選んだのは誰でしょう。
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