柏崎刈羽原発の耐震基準
実態無視のM6.5想定
M7.3(阪神)、6.8(中越)相次ぐ
新潟大理学部の立石教授が指摘
新潟県中越地震は直下型地震の破壊力をまざまざと示しました。新潟大学理学部の立石雅昭教授は、東京電力・柏崎刈羽原発が耐震設計をおこなう上で、想定していなかった問題点を指摘しています。
耐震設計の審査指針では、(1)原発の敷地に影響したと考えられる過去の震度5以上の大地震(2)近くの活断層が引き起こす地震(3)活断層がなくとも、深さ十キロメートルで起こるマグニチュード(M)6・5の直下型地震を想定する―このうち最も影響の大きい地震を想定し、それに耐える原子炉や周辺機器の耐震性を求めています。
柏崎刈羽原発の場合はM6・5の直下型地震を最も影響を与えるものとし、岩盤上で四五〇ガルの揺れに耐えられる設計になっています。
立石教授は、今回の直下型地震がM6・8、鳥取県西部地震(二〇〇〇年)がM7・3、兵庫県南部地震(阪神大震災・一九九五年)がM7・3とあいつぐ直下型地震がいずれもM6・5を大きく上回っており、M6・5の審査指針は小さすぎると指摘します。
瞬間的なゆれの強さを示す地震加速度は、新潟県川口町で二五一五ガル、小千谷で一五〇〇ガルを記録しました。岩盤では弱まるとはいえ、川口町では四五〇ガルの五・六倍にもなっています。
中越地震の特徴は、大きな余震がつづいたことです。十一月四日の余震で同原発7号機のタービン軸受けがずれて緊急停止しました。立石教授は「大きな余震が続発する可能性について耐震設計で検討された形跡はない。しかし、緊急停止したことは、その必要のあることを示している」と強調しています。
立石教授らの研究グループは、原発敷地周辺の柏崎平野で地質構造を研究しており、敷地周辺で検討すべき六つの断層を指摘しています。しかし安全審査では、二本の断層のみを耐震設計上考慮しただけです。立石教授は、「それも過小に評価している」と指摘しています。
たとえば、気比ノ宮活断層の長さは、安全側で考えれば三十二・三キロと見積もるべきところを安全審査では、十七・九キロとしています。
立石教授は「安全審査は地表に現れた断層だけで判断し、断層が地下で連続している高い可能性を無視し、断層の長さを短く見積もった。しかし今回の新潟中越地震は、これまで知られていなかった地下の断層が動いている。地表に現れている変形だけ見ていたのでは予測できないことを示している」と指摘します。
柏崎刈羽原発広報部は「中越地震は、原発敷地内の岩盤では五〇ガルで、耐震基準の範囲内だった。川口町での加速度は地表面の計測で、岩盤ではもっと小さくなるはず。敷地直下に活断層のないことも確かめており、指針に基づき耐震性は確保されている」などとのべているだけです。
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M8発生の可能性も
長さ83キロメートルの巨大活断層
政府の地震調査委員会が十月に発表した長岡平野西縁断層帯は、新潟市の沖合から小千谷市にかけて長さ約八十三キロメートルの活断層と認定され、「マグニチュード(M)8・0の地震が発生する可能性がある」と指摘されました。柏崎刈羽原発の耐震設計当時には、まったく想定されていない新しい知見で、同原発の耐震性に新たな問題を投げかけています。
この断層帯は、今回の中越地震を起こした断層の西側で、同原発にさらに近くなります。地震が起きれば、断層近くの地表面では、六―七メートルの段差が生ずる可能性も指摘されました。この巨大断層が動いた場合の原発に与える影響は重大とみられます。
地震調査委員会は、この活断層が動いた最新の例を歴史資料から十三世紀以降とみています。審査指針にいう「歴史的証拠のある敷地周辺の地震」になります。また、審査指針では「地震の再来期間が一万年未満のもの」としているのに対し、同調査委員会は、地震の間隔を千二百年―三千七百年と指摘。地震発生の長期確率を今後三十年で2%以下としながらも、発生の可能性は「我が国の活断層の中ではやや高いグループに属する」としています。
これらのことは、耐震設計審査時は、想定されていないことであり、審査のやり直しが求められる問題です。
これについて柏崎刈羽原発広報部は「概略検討したが、安全性は確保されている」とのべ、従来どおりの「十分な耐震性」を強調しているだけです。
安全指針見直しの声
四半世紀にわたり変更されず
安全審査指針は、一九七八年に当時の原子力委員会が作成したものが、八一年に一部改訂されて以来、指針の基準の想定外の問題がでてきても、四半世紀にわたって見直されずにきました。
耐震性について安全審査会や電力会社は、(1)活断層を避けて立地している(2)最大の地震動を想定している(3)原発施設は岩盤上で支持されている(4)岩盤上で震度5以上のときには自動停止する(5)世界最大の震動台で実験している―などと答えてきました。
しかし、兵庫県南部地震以降、耐震規定の見直しを求める声が強まっています。兵庫県南部地震では、耐震規定の想定加速度を超える八一八ガルの加速度が震源域の岩盤上で実際に計測されたからです。原発の想定加速度は、大半が三〇〇―五〇〇ガルの範囲にあるため、耐震基準が問題になっています。
原子力安全委員会の耐震指針検討分科会で、地震で原子炉が損傷する確率を数字で示す方法が検討されています。
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余震で停止は重大
吉井英勝衆院議員の話
新潟県中越地震の余震で原発のタービンの軸受けがずれて運転停止になったことを立石教授が重視していますが、大事な指摘です。関西電力海南火力発電所(和歌山)の軸受け部分の二・六トンのカバーが百メートルも跳ね飛び、屋根を突き破った事故や諸外国の原発でもタービンの翼が吹き飛んだ例があり、この余震の事故は重視する必要があります。
地震加速度は、地表では大きく表れるもので岩盤の二―三倍になると、事業者側は弁解してきましたが、今回は、川口町では五倍を超えており、その論理も通用しない。新しい事実に謙虚に応えるべきです。
私は最近、コンクリートがアルカリ骨材反応で膨張や劣化を起こしている危険性を指摘し、政府に全原発の検査を求めました。その結果、全原発に検査するように指示が出されましたが、コンクリートのがんといわれるこの問題は、地震時の安全性の評価の対象にすべき重大な問題です。これを考慮すれば、地震時の炉心損傷確率はさらに高くなるはずです。取り返しがつかない事故を防ぐためにも耐震性の問題をひきつづき追及していきます。
2004年12月19日(日)「しんぶん赤旗」
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